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4話(7)
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「んむ? なにかな、です」
「身体測定の件で、井熊(いくま)先生がお呼びなんだ。共同棟の2階にある、合同保健室に行ってくれ」
昨日の午後に定番のイベントがあり、一年女子の方で測定し忘れた項目があった――育美によると、胸囲などの計測を忘れていたらしい。そのため後日放課後に呼ばせてもらう、と今朝のHRで言い渡されていたのだ。
「効率を上げるため四か所でやっていて、土水は合同の方に行ってもらいたい。急な話だが数分で終わるみたいだから、向かってくれ」
所要時間は、そこまでない。これは、四空の妨害ではないと見ていいか。
「……しかし、内容が内容……。その間、育美は一人になるな……」
女子同士でも、測定を見たり聞かれたりするのは恥ずかしい――。そんな意見が出たため、ココは以前から個別に測定をするようになっている。そのため、拘束――は流石に無理だが、その際にコッソリ脅迫などはできる。
用心に用心を重ねて、保険をかけておくか。
(育美。いつでも俺に電話できるように、ポケットの中でスマホを握っておいて)
何かあれば、コール。これならどんな状況でも、例え大きく動けない状況に陥っても、異変だけは伝えられる。
(んぇ? 学校の中でスマホの電源を入れるのは、ブブーじゃなかったっけ……?)
(だから見つからないようポケットの中にしてるし、悪意があるかもしれないから特例だよ。怪しいと感じたら、すぐ鳴らすんだぞ?)
(んっ。かしこまりましただよー)
彼女は小さな折り鶴をつけたスマートホンを鞄から出し、俺の番号を出した状態でポケットに入れる。
なおワザワザ色紙製の折り鶴をつけているのは、これがオジサンオバサンとの思い出の品だから。この鶴はオジサン達が初めて育美にプレゼントしたものなので、いつも近くにいられるよう加工してスマホケースにつけているのだ。
(少しでも違和を感じたら、連絡するんだよ)「測定がすぐ終わるのなら、審査に支障はないね。いってらっしゃい」
俺はもう一度念を押し、声のボリュームを戻して送り出す。
不自然があったら、即通報で即踏み込む。これなら罠だとしても、相手は何もできずに終わるな。
「ん、はいだよー。えとえと、合同保健室は……」
「こないだは迷霊科の保健室を使ったから、全ての科が使用する方はまだ分からないか。使いっぱしりついでに、先生が案内してやろう」
「ぁっ、ありがとうだよ、です。優君真式先輩さん夢兎ちゃんさん、ちょっとだけ行ってくるよー」
「ほいほい。じゃあここで――そこだと、昇降口の方が近いな。昇降口で靴を履いて待ってるよ」
俺は軽く手を上げ、俺達は一旦別行動に。育美は先生と階段を昇り、俺と先輩達は廊下を闊歩した。
「身体測定の件で、井熊(いくま)先生がお呼びなんだ。共同棟の2階にある、合同保健室に行ってくれ」
昨日の午後に定番のイベントがあり、一年女子の方で測定し忘れた項目があった――育美によると、胸囲などの計測を忘れていたらしい。そのため後日放課後に呼ばせてもらう、と今朝のHRで言い渡されていたのだ。
「効率を上げるため四か所でやっていて、土水は合同の方に行ってもらいたい。急な話だが数分で終わるみたいだから、向かってくれ」
所要時間は、そこまでない。これは、四空の妨害ではないと見ていいか。
「……しかし、内容が内容……。その間、育美は一人になるな……」
女子同士でも、測定を見たり聞かれたりするのは恥ずかしい――。そんな意見が出たため、ココは以前から個別に測定をするようになっている。そのため、拘束――は流石に無理だが、その際にコッソリ脅迫などはできる。
用心に用心を重ねて、保険をかけておくか。
(育美。いつでも俺に電話できるように、ポケットの中でスマホを握っておいて)
何かあれば、コール。これならどんな状況でも、例え大きく動けない状況に陥っても、異変だけは伝えられる。
(んぇ? 学校の中でスマホの電源を入れるのは、ブブーじゃなかったっけ……?)
(だから見つからないようポケットの中にしてるし、悪意があるかもしれないから特例だよ。怪しいと感じたら、すぐ鳴らすんだぞ?)
(んっ。かしこまりましただよー)
彼女は小さな折り鶴をつけたスマートホンを鞄から出し、俺の番号を出した状態でポケットに入れる。
なおワザワザ色紙製の折り鶴をつけているのは、これがオジサンオバサンとの思い出の品だから。この鶴はオジサン達が初めて育美にプレゼントしたものなので、いつも近くにいられるよう加工してスマホケースにつけているのだ。
(少しでも違和を感じたら、連絡するんだよ)「測定がすぐ終わるのなら、審査に支障はないね。いってらっしゃい」
俺はもう一度念を押し、声のボリュームを戻して送り出す。
不自然があったら、即通報で即踏み込む。これなら罠だとしても、相手は何もできずに終わるな。
「ん、はいだよー。えとえと、合同保健室は……」
「こないだは迷霊科の保健室を使ったから、全ての科が使用する方はまだ分からないか。使いっぱしりついでに、先生が案内してやろう」
「ぁっ、ありがとうだよ、です。優君真式先輩さん夢兎ちゃんさん、ちょっとだけ行ってくるよー」
「ほいほい。じゃあここで――そこだと、昇降口の方が近いな。昇降口で靴を履いて待ってるよ」
俺は軽く手を上げ、俺達は一旦別行動に。育美は先生と階段を昇り、俺と先輩達は廊下を闊歩した。
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