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第2話 3人が今ここにいる理由~10年の間にあったこと~ 俯瞰視点(3)

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「………………」
「………………」
「………………」

 パーティーでルナ・・からレーナへの暴力未遂事件があった日の、翌日のこと。張本人であるルナことイヴェット、父レジス、母ゾエは、お屋敷の中で天を仰いでいました。

『はっきり申し上げましょう。僕は貴女を許すつもりはありません。相応の罰を受けてもらいますよ』
『イヴェット様だけでなく…………ルナ様まで、そんな人だっただなんて……』
『醜い。こんなにもこの言葉が合う人間は、いませんわね……』

 愛妻家であるキックス――格上、伯爵家当主の激しい怒りを買ってしまったこと。
 あらゆる人々から白眼視をされるようになったこと。
 それらによって、イヴェットは絶望していました。

『イヴェットに続きルナまでっ、どうなっているのだ兄上! 一体どんな教育をしてきたのだ!?』
『……他貴族の方々だけじゃない、こんなこと領民たちにも顔向けできないわ。兄さん、これ以上貴方にこの家を任せられないわ』
『それだけじゃない。ラクラス伯爵家の溜飲を下げるためにも、しっかりと責任を取っていただきますよ』

 兄弟を含めた全親族や領民から、激しい怒りを買ってしまったこと。
 当主の座、および現在所有する全ての権利の剥奪が決まってしまったこと。
 更には何かしらの形で、厳しい罰を与えらえると決まってしまったこと、
 それによって、レジスとゾエは絶望していたのです。

「…………キックス様の目は、本気でしたわ……。きっと、法以外のやり方でも、裁かれてしまう……。このままでは、命が、危ない……」
「…………ラクラス伯爵家の怒りを鎮めるために…………何をされるか、分からない……。死ぬ、かもしれない……」
「いっ、いやぁあああああ!! いやよっ! 死にたくない!! 死ぬのはいやぁあああああああああああああああ!!」

 無関係なルナテレーズを平然と切り捨てたのに、自分達はそうなりたくない。相変わらず身勝手な思考回路を持つ者たちは、そんな未来を回避するべく必死になってあらゆく可能性を模索します。
 その、結果――

「もう挽回は無理だ…………し、死んだことにしよう……。急いで謝罪に向かう途中で、崖から落ちて全員死亡……。こ、こうしよう……」

 ――かつてテレーズにしたようなことを自分達で行うしかなくなり、すぐさま実行。キックスや兄弟たちから逃れるべく、崖の下に馬車を落としたあと死に物狂いで隣国へと逃げて――

「「「お願いします! ここで働かせてください!!」」」

 ――今の三人にはお金も住居もないため、福利厚生が充実していると評判の『スロティアー農園』を訪れていたのでした。




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