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第9話 苦しみに耐えた先にあるもの 俯瞰視点(2)
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「父上っ!? は、はいっ、どうぞ! もちろん構いませんよ!!」
もしかして、婚約に関する話!?――。そう感じたシメオンはすぐさま返事をして、大急ぎで部屋のドアを開けました。
「お待たせしました。どうされたんですか?」
「…………シメオン。今日は楽しかったか?」
「え? あ、はい。楽しかったです! おかげで最高のひと時となりました!」
最愛の人ヴァネッサと一緒に過ごせて楽しかった。
ヴァネッサと色々振り返れて楽しかった。
この機会に注意をすることができてよかった。
などなど。あたかもそれらが真実であるかのように、ユーグの認識を変えるべく『追撃』を行いました。
「…………そうか。あの時間が楽しかったのか」
「幸せに満ちた集いとなりましたよ。……ますます、明後日が楽しみになりました」
デスクの上に置いてある、カレンダー。7月7日に花丸をつけてあるカレンダーを持ってきて、頬を緩めました。
「ついに、大好きな人と正式な婚約者になれる。こんなにも嬉しいことはありません。父上、ありがとうございます。この上ない幸せをいただけて、俺は幸せ者です」
「………………そうか。……………………」
「? 父上? ど、どうかしましたか?」
何かマズイことを口にしたか!? いいや何もマズイことはなかった! 今の追撃も完璧だったはずだ! この沈黙はなんなんだ!?
シメオンは内心大慌てで、人知れず心の中で戸惑っていると――
「シメオンよ。その件について、ヴァネッサ君とお前の婚約に関してなんだがな」
「は、はいっ。なっ、なんでしょうっ?」
「白紙にすることに決めた」
――父ユーグは、今シメオンが一番欲しがっていた言葉を口にしました。
「明日の夕方ヴァネッサの父やヨランドの父達を呼び、撤回の件を伝えるつもりだ。お前の婚約相手は改めて決め直すことになる」
「そ、そんな……! なっ、なぜですか!? どうしてヴァネッサと婚約できないんですか!?」
心の中では小躍りをしているシメオンですが、本心を出したら撤回を撤回されてしまいます。計画が台無しにならないように、泣きそうになりながら父に詰め寄ります。
「6月30日に父上が決定したと仰ってからっ、ずっと楽しみにしていたのに……! それが、なくなるだなんて……!! 父上っ! なにがあったのですか!?」
「……それに答えるつもりはない。とにかく、ヴァネッサ君との婚約は白紙にする。この判断は変わることはない」
「……な、なんてことだ……! ぁ、ぁぁ……。ぁぁぁぁぁ……」
「お前がなにを言おうと、新たにどんな主張をしようとも、もう未来は変わらん。絶対にな」
ぜったいに。ユーグはやけにその部分を強調し、崩れ落ちたシメオンを改めて見下ろしました。
「…………それともう一つ。明日――ルノー達が集まった際に、お前に伝えなければならないことがある。午後6時には、必ず屋敷にいるようにな」
そう言い終わるとユーグは淡々と部屋を去り、静かに扉が閉まると――
((よしっ! よしっっ!!))
泣き崩れていたシメオンは勢いよく立ち上がり、右の拳を高々と突き上げました。
((やったぞ!! 第一段階クリアだ!! ここから改めて、ヨランドを嫌いだと思わせる行動を取っていけば……! 天国にたどり着ける……!!))
すっかり上機嫌になったシメオンは満面の笑みを浮かべ、次のステップに移行するべく、足取り軽くデスクへと向かいます。
『…………それともう一つ。明日――ルノー達が集まった際に、お前に伝えなければならないことがある。午後6時には、必ず屋敷にいるようにな』
この台詞を、すっかり忘れて――。
もしかして、婚約に関する話!?――。そう感じたシメオンはすぐさま返事をして、大急ぎで部屋のドアを開けました。
「お待たせしました。どうされたんですか?」
「…………シメオン。今日は楽しかったか?」
「え? あ、はい。楽しかったです! おかげで最高のひと時となりました!」
最愛の人ヴァネッサと一緒に過ごせて楽しかった。
ヴァネッサと色々振り返れて楽しかった。
この機会に注意をすることができてよかった。
などなど。あたかもそれらが真実であるかのように、ユーグの認識を変えるべく『追撃』を行いました。
「…………そうか。あの時間が楽しかったのか」
「幸せに満ちた集いとなりましたよ。……ますます、明後日が楽しみになりました」
デスクの上に置いてある、カレンダー。7月7日に花丸をつけてあるカレンダーを持ってきて、頬を緩めました。
「ついに、大好きな人と正式な婚約者になれる。こんなにも嬉しいことはありません。父上、ありがとうございます。この上ない幸せをいただけて、俺は幸せ者です」
「………………そうか。……………………」
「? 父上? ど、どうかしましたか?」
何かマズイことを口にしたか!? いいや何もマズイことはなかった! 今の追撃も完璧だったはずだ! この沈黙はなんなんだ!?
シメオンは内心大慌てで、人知れず心の中で戸惑っていると――
「シメオンよ。その件について、ヴァネッサ君とお前の婚約に関してなんだがな」
「は、はいっ。なっ、なんでしょうっ?」
「白紙にすることに決めた」
――父ユーグは、今シメオンが一番欲しがっていた言葉を口にしました。
「明日の夕方ヴァネッサの父やヨランドの父達を呼び、撤回の件を伝えるつもりだ。お前の婚約相手は改めて決め直すことになる」
「そ、そんな……! なっ、なぜですか!? どうしてヴァネッサと婚約できないんですか!?」
心の中では小躍りをしているシメオンですが、本心を出したら撤回を撤回されてしまいます。計画が台無しにならないように、泣きそうになりながら父に詰め寄ります。
「6月30日に父上が決定したと仰ってからっ、ずっと楽しみにしていたのに……! それが、なくなるだなんて……!! 父上っ! なにがあったのですか!?」
「……それに答えるつもりはない。とにかく、ヴァネッサ君との婚約は白紙にする。この判断は変わることはない」
「……な、なんてことだ……! ぁ、ぁぁ……。ぁぁぁぁぁ……」
「お前がなにを言おうと、新たにどんな主張をしようとも、もう未来は変わらん。絶対にな」
ぜったいに。ユーグはやけにその部分を強調し、崩れ落ちたシメオンを改めて見下ろしました。
「…………それともう一つ。明日――ルノー達が集まった際に、お前に伝えなければならないことがある。午後6時には、必ず屋敷にいるようにな」
そう言い終わるとユーグは淡々と部屋を去り、静かに扉が閉まると――
((よしっ! よしっっ!!))
泣き崩れていたシメオンは勢いよく立ち上がり、右の拳を高々と突き上げました。
((やったぞ!! 第一段階クリアだ!! ここから改めて、ヨランドを嫌いだと思わせる行動を取っていけば……! 天国にたどり着ける……!!))
すっかり上機嫌になったシメオンは満面の笑みを浮かべ、次のステップに移行するべく、足取り軽くデスクへと向かいます。
『…………それともう一つ。明日――ルノー達が集まった際に、お前に伝えなければならないことがある。午後6時には、必ず屋敷にいるようにな』
この台詞を、すっかり忘れて――。
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