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第9話 苦しみに耐えた先にあるもの 俯瞰視点(1)

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「…………ぐ……。ぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」
「…………ぐ……。あぁああぁあぁぁ……!」

 急遽シメオンが開いた集まりが終わった、その日の夜。アルーザー邸とサレティス邸内部にあるシメオンとヨランドの部屋では、ふたりがベッドの上で唸っていました。

『ヨランドは負けず嫌いが少々過ぎる。せめてもう少し力を抜いてくれないと、俺達以外を混ぜてパーティーゲームをする時に困る』
『ヨランドは気分が顔に出やすい。自分達といる時はともかくとして、外に出ている時はもう少し感情を隠した方がいい』

『はい、分かりました。確かにそうですね。ヨランド姉さんは、本当に困った問題児です』
『気付かれなくて、本当によかったですね。いいですかヨランド姉さん、二度とそんな真似はしないでくださいよ?』

 などなど。罪悪感を激しく生む言葉を口にしたり、怒りが激しく湧く言葉を聞いたりした。
 二人は長時間かつ必死に我慢し続けたため、膨大なストレスによって胃痛に襲われていたのです。

「パトリス……! あの野郎……! ふざけやがって……!!」
「パトリス……! よくも……! バカにしてくれたわね……!!」

「ヴァネッサ……! お前はなにをやってたんだ……! この、役立たずが……!!」
「ヴァネッサ……! 寄ってたかって言われてるんだから、フォローしなさいよ……! ずっとニコニコして……!! なんなのよあの顔は……!!」

 やんわりと暴言を吐き続けた弟と、終始にこやかに傍観していた幼馴染。二人は二人に対して怒りをぶちまけ、白湯を――胃痛を和らげる飲み物を飲みながら、その後たっぷり一時間パトリスとヴァネッサに呪詛を吐きました

「……はぁ、はぁ、はぁ……! ま、まあいいだろう。この辺にしておいてやろう。コイツらの行動は、役に立ってもいるんだからな」

 そうしてある程度冷静さを取り戻したシメオンは、斜め下を――父ユーグの執務室を一瞥しました。
 パトリスの発言に同調を続けたことで、より信憑性が出たはず。嫌な手応えを感じていた彼は大きく息を吐き出し、ゆっくりとベッドから起き上がり――

 トントントン

 ――この次の計画に必要な行動を取るべく、デスクに向かっている時でした。室内にノック音が響き渡ったのでした。


「わたしだ。シメオン、部屋に入ってもいいか?」
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