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第11話 だから 俯瞰視点(2)

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「「…………………………………………」」

 ジャックが崩れ落ち、頭を抱えてから2日後。そんなジャックと父リュカは邸内にある応接室にて、顔面蒼白で固まっていました。
 二人が先日以上に絶望している理由、それは――

『兄上、ジャック。貴方たちを商会およびネズザルク家から追放する』

 突如リュカの実弟ケヴィンと実妹カロルが現れ、そんな宣告をされてしまったからです。

「…………ど、どうして……」「…………どうして、なのだ……」
「決まっているでしょう。商会とネズザルク家を守るためですよ」

 今現在ジャックとリュカの評判は地の底で、そんな者がトップにいれば様々な悪影響が発生してしまいます。ですのでケヴィンとカロルは親族や商会幹部と相談し、『排除』を決めていたのです。

「先祖が努力と苦労を重ねて、積み上げてきたもの。それらを今代で崩壊させるわけにはいきません。故に、悲劇をもたらす芽を摘むのですよ」
「ふっ、ふざけるな!! 叔父上伯母上! そんなことが認められるか――」
「ジャック、貴男の意思は関係ないの。その権利をわたくし達は所有しているのだから」

 ――お前達。もしもリュカが選択ミスをしてしまった場合は、頼んだぞ――。

 先代当主、今は亡き3人の父ガバンは、強制的に介入できる資格を遺していました。
 家であり商会のトップが変わると、様々な弊害が発生してしまう――。それを回避するべくカロル達は再三咎め『修正』を試みていましたが、そんな余裕はなくなってしまいました。ですので二人は今日、行使に踏み切ったのです。

「…………まっ、まってくれ――」「…………まっ、まつのだ――」
「待てませんよ。貴方たちは、我々の忠告を再三無視してきた。同情の余地はありません」
「貴男たちはもう当主でも次期当主でも、商会頭でも次期商会頭でも、ネズザルク侯爵家の人間でもありません。……手切れ金は用意してあげますわ。それを持ち荷物を纏め、今日中にここを去っていただきます」

 今手にしている『地位』と『財』を失うどころか、何よりも大事な貴族籍まで失ってしまう。それに納得できるはずがなく、ジャックとリュカはたまらず両膝をつきます。

 反省している! 後悔している!
 だから考え直してくれ――ください! チャンスをください!!

 二人は必死の形相で懇願を行いますが、それが受け入れられるはずがありません。

「同情の余地はない、そう言ったはずですよ。貴方たちは、やり直せないところまで暴走してしまったのですよ」
「貴男たちのせいで『家』も商会も大きなダメージを受けていて、これからどうにかして立て直さないといけないの。……これ以上、無駄な話はしていられませんわ。自ら動かないというのであれば、強制的に動かしますわ」

 返って来た答えは、当然NO。そうしてジャックとリュカは臣下に――かつて臣下だった者達に腕を掴まれ連れ出され、

「ぁぁぁぁぁ……。そんな…………」
「そんな……。こんなことが……。こんなことがぁぁぁ…………」

 手切れ金と数枚の衣類が詰め込まれたバッグを持たされ、敷地の外へと放り出されてしまったのでした。

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