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プロローグ 幼馴染からの忠告 フロリアーヌ・オフェティリア視点(2)

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「……子爵令嬢や男爵令嬢を選んでいるから大丈夫、だなんて。呆れたわ……」

 それからもう一つ伝えようとしていたら、またため息がやってきた。

「貴女は以前から色々と問題があったけれど、しばらく会わない間に悪い方向に磨きがかかってしまった。貴女は婚約してから、ますます酷くなっていますわよ」
「いいえ、アニーが堅物なだけよ。自分より弱い者を使って満足感を得る、それは強者の特権。貴族界でも市井でも、多くの人間がやっていることよ?」
「確かに、そうですわね。けれどだからと言って、自分もやっていいとはなりませんわ。フロリアーヌ、いいこと? 今すぐ止め、該当者に謝罪を行いなさい」

 この子はいっつも、こんな調子。鬱陶しいくらいに真面目でことあるごとに説教をしてくるから、最近は距離を取ってたのよね。
 面倒な性格の持ち主だと、分かっていたのに――。久し振りに会った影響で、説教モードに突入するラインを見誤っちゃったわ。

「それは相手を傷付ける愚行で、そんな真似をしていればいずれ自分も不幸になりかねない。思わぬ形で仕返しをされるかもしれないし、婚約者様の耳に入れば婚約を解消されてしまい兼ねませんわよ」
「ふふ、それは杞憂よアニー。侯爵家と大きな商会がバックにあるからますます手出しなんてできないし、何よりこの行動はジャック様公認なんだもの」

『フロリアーヌ、ドンドン俺の名前を出していいぞ。下級貴族たちに「差」を思い知らせてやれ』
『そうした際は相手のリアクションをしっかりと記憶し、ひとつ残らず伝えるようにな』

 ジャック様ご自身も、悦に入ったり相手にそういう思いをさせたりするのが大好き。そのためむしろ推奨されていて、羨ましそうだったり悔しそうだったりする様(さま)を報告すると満足げにされているのよね。

「だから心配事はひとつもないし、やめるつもりもない。これはわたしの――わたし達のことなんだから、放っておいて。余計なお世話」
「……フロリアーヌ。わたくしは来週この国を去り、完全に隣国伯爵家の人間となりますの。あちらにご迷惑をかけられないから、もし何かあっても介入をできなくなりますの。ですから――」
「しこついわよアニー、放っておいてと言っているでしょ? 文句があるなら、そうねぇ。ジャック様に言ってみて。そうだわ、これからお会いできるようにしてあげましょうか? そうしましょうよ」
「…………今まで以上に何を言っても届かない、その上わたくしが悪いという認識なら……。どうにかしたかったのだけれど……。もう、無理ですわね…………」
「? アニー? 今、なんて言ったの?」

 声が小さくて聞き取れなかった。ボソボソ何を呟いていたのかしら?

「なんでもありませんわ。……分かりました、もう何も言いませんわ。こうしてここでお喋りする機会はなくなるでしょうし、フロリアーヌ。最後に、思い出話に花を咲かせましょうか」

 やっと、退く・・気になったみたい。なのでそのあとわたし達は過去の話を始めて、2時間くらい経ったらお開き。明日夜会に参加しないといけないからサヨウナラをして、馬車に乗り込みロコライン邸を去ったのでした。


「今日はそこそこ楽しめたけど、悔しがる顔を見れなかったからつまらなさもあるわね。……決めた。このモヤモヤは、明日の夜会で発散しましょ」

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