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第9話 同時刻、ミレーヌは~お茶会の時に起きていたことと、悲劇の始まり~ 俯瞰視点(1)

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「っっ! わたくしの肌が……。こんなになってしまうなんて……!」

 マリエットがミレーヌを無視するようになってから変わってから3日後、そのマリエットが4人でお茶会を楽しんでいる頃。ミレーヌは自室にあるドレッサーを覗き込み、わなわなと肩を震わせていました。

 ――剥きたてのゆで卵のような美肌――。

 美容に一際お金をかけて高水準のハリやツヤを維持していた、自慢の肌。それが今や、カサカサのガサガサに。
 かつての面影は、どこにもなくなってしまっていたのです。

「これまで磨き上げてきたものが、たった3日で消えてしまうなんて……っ。姉マリエットあの女のせいだわ……!」

 この激変の理由は、大きなストレス。
 マリエットをイジメることができなくなり、怯えた顔や落ち込む姿を見られなくなった。欲を満たせなくなって、一番の愉しみを失ってしまった。そのせいで大量のイライラが溜まり、僅かな期間でここまで悪化してしまっていたのです。

「ずっと小動物のように震えていたくせに、堂々とするなんて……っ。マリエットのくせに……っ。ムカつく……っ。ムカつくムカつくムカつく……!!」

 ギリギリと音がするほどに強く奥歯を噛み締め、右手を横へと強く振って、ドレッサーの上にあったもの全てを薙ぎ払います。
 ですがそれでも怒りは収まらず、今度はブラシを乱暴に掴んで――

「あのおんな……!! 生意気なのよぉぉぉぉぉ……!!」

 ――床へと思い切り叩きつけます。そうすると高価なブラシは鈍い音を立ててカーペットにぶつかり、

「ぁぐ!?」

 そのカーペットは最高級品で適度な反発力があったため、跳ね返ってきて顎を直撃。激痛に襲われたミレーヌは顎先を腫らしながら、顔を歪めて蹲ります。

「ぁぁぁ……っ。こ、この……っ! どいつもこいつも、わたくしをバカにして……っ。ぃあぎぁあぁれぁあぁあああああああああああああああ!!」

 まるで天罰のような目に遭ったミレーヌは更に激昂し、声にならない声をあげて大暴れ。床に散乱していたものを手当たり次第に踏みつけ、そうしたことによって――。悲劇が発生してしまいます。

「はぁ、はぁ、はぁ……っ。はあ……っ。……今日は、このくらいで許しておいてあげましょうか。侍女ミルスを呼んで、散らかったものを片付け――………………」

 片付けをさせるべく手を鳴らそうとしていたミレーヌの動きが止まり、血走っていた目は大きく見開かれました。

 ――なぜ急に、沈黙してしまったのか――。

 その理由は、足元でブレスレットが割れていたから。

 いつも見えるところに置いてある程に大切にしている、11歳の頃からの宝物が壊れてしまったからです。

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