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第7話 大好きな方の幼馴染からの、楽しい? お誘い ザラ視点(3)

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「あのね、オーガスティンはわたしの運命の人なの。だからオーガスティンにとっても、わたしが運命の人なの」

 音楽室のカギを閉めたマリー様は、ギロリと睨みつけたあとスタスタと近づいてきて……。わたくしの真ん前で――10センチもない距離まで近づいてきて、今度は無表情でそんなことを仰った……。

「ぇ? え……? うん、めい……? なにをいって――」
「運命よ、運命。もしかして運命という言葉を知らないの? 運命とは『人の意思などを超えて人に幸福や幸せや喜びなどを与える、超越的な力』という意味を持つ言葉、運命の人とはそういうものを持った相手という意味よ」

 それは、わたくしも知っている……。
 わたくしが言いたいのは、そういうことではなくて……。

「お、お待ちくだ――」
「理解できたでしょう? じゃあ続けるわね? わたし達は運命の相手なのだと言っているの。オーガスティンはまだ気が付いていないだけなの。彼はわたしと結ばれる運命にあるのよ」

 わたくしの声は淡々かつ猛スピードで遮られて、それに合わせてマリー様の瞳からは『光』が消えていって……。おもわず、「ヒッ」と悲鳴が出てしまった。

「あら急に大声を出すなんて、誰かに助けを求めるつもり? でもそれは無駄よ。ここは防音対策が施された音楽室。その程度の声は誰の耳にも届かないわよ」
「っっ! だからココを選んで――」
「はい説明お仕舞。何をやっても無駄だから静かに聞いて頂戴ね」

 また感情のない声に遮られて、光のない瞳がわたくしを見据えてくる……。

「だからねメス。邪魔をしないでくれるかしら? オーガスティンの隣の席に座るのは貴方ではなくわたしなの。ずっとオーガスティンに『運命』を気付いてもらえるように、一生懸命動いていたの。だから邪魔をしないで」
「こ、これはっ、オーガスティン様の御意思で――」
「どうせその無駄に大きな乳や低俗な『甘え』で、オーガスティンを誘惑したんでしょう? 彼はそういうのに弱いから、騙されやすくって以前から心配だったのよ」
「そっ、それは――」
「そんなところも好きなのだけれどね、ふふっ。まあそれはともかくとして――。オーガスティンは惑わされたことによって、正常な判断ができていないだけなのよ。それは一時の気の迷い。貴方のような品のない女に彼は相応しくなく、そもそも、わたし以外に相応しい女はいないの。だってわたし達は唯一無二の幼馴染、運命の人なんですもの」

 ふひひひひ――。おかしな理屈を並べたあと、口を異様に吊り上げながら不気味に笑うから……。わたくしは更に恐怖を覚えて、たまらず後ずさって……。
 そうしたら同じだけマリー様も移動してきて、そうして次は――。もっともっと恐ろしくなってしまうことが、飛び出してきたのだった…………。

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