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第7話 3年後~準備完了~ クリストフ視点(2)

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「? クライアント殿、どうされましたか?」
「…………マスター。今の妙な音は、なんなんだ……?」

 握手を終えた俺は、店内を見回しながら首を傾げる。
 言葉では上手く表現できない……。『パンッ』と『ボンッ』と『ビンッ』を足して3で割ったような、これまで耳にしたことがない音が……。響いてきたのだ。

「あんな不思議な音は、初めて聞いた。人間の声や、物音の類でもないな。珍しい動物でも飼っているのか?」
「…………音、でございますか? なにもしておりませんが……?」
「なんだって!? いや、しただろう? さっき『パンッ』と『ボンッ』と『ビンッ』を足して3で割ったような音が、したじゃないかっ」

 傍にいると勘違いしてしまうくらい、はっきりとしたものが聞こえた。コイツは何を言ってるんだ……?

「マスター、どうしてしまったんだ――ああっ、そうかっ、そうだったのか! これは聞いてはいけない質問だったんだなっ!」

 この場所の情報を入手したのは、20年近く前。その間にルールが追加されていて、今のはスルーしておかなければならないものだったらしい。

「……? いえ、そんなものはございませんよ。わたくしは実際に聞いていないため、こう返事をしております」

 …………なんだって? 聞こえて、いない?

「お、おいおい、冗談はよしてくれ。あんな音が聞こえていないはずが――…………。本当に、聞こえていないんだな……」

 よくよく観察してみると、この男は本心で戸惑っていた。
 あんなにもハッキリとしていて、俺達はカウンターを挟んでいるだけ――ほぼ同じ位置にいるのに、そっちには届いていないだなんて……。どう、なってるんだ……?

「な、なんなんだ……? なんだったんだ、あれは……!? まっ、マスターっ! 店内を――後ろを調べさせてもらうぞっ!」

 初めて聞く音は、俺だけにしか聞こえていない音だった。ソレを無視できるはずはなく、ハイスツールから降りて慌ててチェックを行う。

((聞こえてきた方向は、分からなかったが……。恐らくは、この辺なはずだ))

 さっきの記憶を頼りに、該当しそうな場所を探し………………………………その結果、なにも見つからない。念のため他の場所も調べてみたが、アレの発生源となりそうなものはなかった。

「………………すまなかったな、マスター。どうやら、俺の聞き間違えだったらしい」

 関係してそうなものや、不自然、異常もどこにもないのだから、そうなってしまう。
 きっとアレは、大きな興奮がもたらしたものなのだろう。3年の努力が叶い、計20年の恨みを晴らせるようになったのだから、それが何かしらの影響を――

「ぎゃあああああああああああああああ!?」

 ――違う! 違うっ! 違うっっ!
 そうじゃない!! そうじゃなかった!!
 異常は、あった。ある!!


「おっ、おれのぉっ!! 俺の身体がっ、透けはじめたあああああぁぁあ!?」

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