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第6話 17年 ~選択と再会~ クリストフ視点(1)

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「今日までお世話になりました。皆様、ありがとうございました」

 あれから17年後の、9月3日。ようやく刑期満了となり、俺は久し振りに大地を踏みしめた。

「自白するようなヤツには、必要はないとは思うが――。ある種の伝統だから、言っておくぞ」
「クリストフ、折角また外に出られたんだ。もうここに戻ってくるなよ? 二度と、悪事を働くんじゃないぞ?」
「はい、今後も静かに生きて参ります。では、失礼致します」

 見送り担当の所員2人に深々と頭を下げ、俺は刑務所に背を向けて歩き出す。
 目をぎらつかせ、口角を吊り上げながら。

((静かに生きる? そんなはずないだろうが……!!))

 俺はあんなワケの分からないことになって、35まで自由を奪われたんだぞ。貴重な20代と30代の大半を棒に振り、貴族籍などあらゆるものを失ってしまったんだぞ!!
 じっとして居られるはずがないだろうが!!

((この恨みを晴らすまでは、大人しくなんてしない。フルールに『罰』を与えるまではなあ……!!))

 できるなら俺にあんな真似をしやがった『原因』を滅茶苦茶にしてやりたいが、ああなった理由は皆目見当がつかない。犯人が分からないし、そもそも、人がやったことなのかさえも分からない。

 だから、分かっているヤツで鬱憤を晴らす。

((フルール。アイツに急に興味がなくならなかったら、俺はあの場であんなことをしなかった。あの場で意味不明な白状暴露をすることはなかったはず))

 だから、だから――。その原因を作ったアイツを、同等の目に遭わせる!!
 ヤツを捕えて、17年間監禁する!!

((……そのためには、まずは軍資金を集めないとな))

 俺は現在平民で、無一文。とはいえ捜査協力や日頃の態度などによって、働き口を紹介されている。
 ソコで暫く働いて金を貯め、その道のプロを雇い、仕留める。
 これが、俺の勝利へのスケジュールだ。

((じゃあ始めるか、復讐劇をな。……父上、貴方の仇も取ってやるからな))

 父上は余罪があまりにも多く、もう生涯出てこれはしない。極刑にならなかっただけマシ、そんな状況となっている。
 そこで父上が居る場所に向かって拳を突き出し、俺は紹介された住所を目指し――

クリストフ・・・・・、アナタに話がありますの」

 ――目指し始めて、十数分が経過した頃だった。俺は唐突に声をかけられ、1人の女と3人の男に囲まれてしまったのだった。

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