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第19話 楽しいことと、そうじゃないこと(2)
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「そういえば。美月ちゃんは、卯月こよみの配信を見てくれたのよね?」
「はいっ。ゲーム配信とか雑談配信とか同時視聴の配信とか、見させてもらって、勉強させてもらいましたっ!」
「だったら、驚いたでしょう? 突然叫び出すから」
「えっと。は、はい。ビックリしちゃいました」
「ふふ、そうよね。実はわたしも、あの時とても驚いたの」
「?? ますずさんも、おどろい、た……?」
「あの時まで私自身も、あんな反応をするとは思わなかったの。今までゲームを一切したことがなかった――アクションゲームもホラーゲームを遊んだことがなかったし、あんな風に激しく一喜一憂する機会はなかった。自分でも『私はこんな時はこんな風になるんだな』と初めて知ったの」
「そう、なんですね。ほぇ~……!」
「配信って、知らない自分を教えてくれる時間でもあるのよね。配信は色々な面を持っていて、奥が深い。活動3年目に入ってもまだまだ知り尽くせていないほどに、魅力が詰まった宝箱」
「宝箱……! はいっ、わたしもそう思いますっ」
卯月こよみさん&真鈴さんに関係するお話しをしたり、
「私もね、ミアちゃんの配信で印象に残っていることが沢山あるわ。特に印象的だったのは、野球のお話。ミアちゃん自身もコメント欄も、みんな楽しそうだった」
「えへへ。視聴者さんの中に野球好きな人がいっぱいいてくれたし、知らない人も興味を持ってくれて、盛り上がりました」
「私も、新たに興味を持ったひとり。雑談を聞いてから気になって、日本の野球を調べてみたの」
「わぁっ。嬉しいです……!」
「私が住んでいる県にもパリーグの球団があるけど、家族全員が野球に興味がなかったからちゃんと試合を観たことも球場に行ったこともなかったの。でも先週の日曜日に初めてちゃんと観てみて、面白かった。攻撃の時は地元チームのバッターを応援して、守備の時はピッチャーを応援して、ハラハラドキドキだったわ」
「ですよねっ、ハラハラドキドキしますよね……! 野球って一球で試合が変わっちゃうから落ち着く暇がなくって、ず~っと夢中になっていられますよねっ」
葉月ミア&わたしに関するお話しをしたり、
「あの。真鈴さんは、どうしてVtuberになろうと思ったんですか?」
「高校に入学して中学生の頃よりも選択肢が広がって、この機会に新しい何かを始めたいな、と思ったことが切っ掛けかな。それでその内容を考えていた時に、とあるVTuberさんの配信が偶然動画サイトのオススメに出てきてね。なんとなく観てみたら面白くて、自分もやってみたいな、と思ったの」
「へぇ~……!」
「その時傍にはちょうど翔ちゃんがいて、『だったら僕がキャラクターをデザインしますよ』って言ってくれてね、『卯月こよみ』が生まれた。だからあの時偶然オススメに出てこなかったら、多分私はVtuberになっていなかったの」
「と、いうことは。『葉月ミア』も生まれてなくって、わたしもVtuberになってなかったんですね。偶然、すごいです……!!」
「そうね、偶然って不思議。活動は楽しいし、美月ちゃんみたいな可愛くて素敵な子とも出会えるし。あの出来事には――Vtuberさんには感謝しているわ」
「わたしも、感謝してますっ。そのVtuberさんって、なんてお名前なんですか~?」
「『笹野原ササミ』さん。私より1年先にデビューしている、企業所属のVtuberさんよ」
「ささのはら、ささみさん……。どこかで聞いたことあるような………………あっ。もしかして予定にあったオフコラボの!」
「ぱちぱちぱち、大正解。デビュー後にそのことをお伝えしたら喜んでくださって、そこから親しくさせてもらっているの。ずっとメッセージのやり取りはしていたけどコラボは初めてで、決まった時から楽しみにしてるの」
「切っ掛けVtuberさんとのコラボ、ワクワクしますよね……! わたしの切っ掛けは卯月こよみさんだから、こよみさんとも――真鈴さんとも、いつかコラボしてみたいですっ」
「うふふ、私も同じです。オンでもオフでも、コラボしましょうね」
卯月こよみさん誕生の秘話をお聞きしたり。
どのお話も興味津々だし楽しくって、気が付いたら1時間が経っていました。
「もうこんな時間……!? あっという間でしたね……!」
「本当に、あっという間だったね。優子さんは気を遣って時間を潰してくださっていることでしょうし、連絡してみましょうか?」
「ですねっ。お電話して――ごめんなさいっ。その前にお手洗いに行かせてもらいます」
お話しに夢中になってて、全然気づきませんでした。サササササッと早歩きで移動して用事を済ませて、またサササッと早歩きで戻る。
((そうだ。先にお母さんに電話しとこう))
歩きスマホはバッテンなのでちゃんと止まって、周りの人の邪魔にならないように端っこに寄って――
「あっ!」
――寄っていた時でした。二つ結びにした幼稚園か保育園くらいの女の子が、わたしを見て大きな声を出しました。
「? どうしたのかな?」
お知り合いでは、ない。初めて見る子だけど、たぶんこの子はわたしを知ってるから『あっ!』って言ったんだよね。
今のわたしは、大丈夫、になったから。
声を出して確認をしてみて、そうしたら女の子は――
「あの時の、変な声のお姉ちゃん!」
――…………。
そんなことを、言ったのでした。
「はいっ。ゲーム配信とか雑談配信とか同時視聴の配信とか、見させてもらって、勉強させてもらいましたっ!」
「だったら、驚いたでしょう? 突然叫び出すから」
「えっと。は、はい。ビックリしちゃいました」
「ふふ、そうよね。実はわたしも、あの時とても驚いたの」
「?? ますずさんも、おどろい、た……?」
「あの時まで私自身も、あんな反応をするとは思わなかったの。今までゲームを一切したことがなかった――アクションゲームもホラーゲームを遊んだことがなかったし、あんな風に激しく一喜一憂する機会はなかった。自分でも『私はこんな時はこんな風になるんだな』と初めて知ったの」
「そう、なんですね。ほぇ~……!」
「配信って、知らない自分を教えてくれる時間でもあるのよね。配信は色々な面を持っていて、奥が深い。活動3年目に入ってもまだまだ知り尽くせていないほどに、魅力が詰まった宝箱」
「宝箱……! はいっ、わたしもそう思いますっ」
卯月こよみさん&真鈴さんに関係するお話しをしたり、
「私もね、ミアちゃんの配信で印象に残っていることが沢山あるわ。特に印象的だったのは、野球のお話。ミアちゃん自身もコメント欄も、みんな楽しそうだった」
「えへへ。視聴者さんの中に野球好きな人がいっぱいいてくれたし、知らない人も興味を持ってくれて、盛り上がりました」
「私も、新たに興味を持ったひとり。雑談を聞いてから気になって、日本の野球を調べてみたの」
「わぁっ。嬉しいです……!」
「私が住んでいる県にもパリーグの球団があるけど、家族全員が野球に興味がなかったからちゃんと試合を観たことも球場に行ったこともなかったの。でも先週の日曜日に初めてちゃんと観てみて、面白かった。攻撃の時は地元チームのバッターを応援して、守備の時はピッチャーを応援して、ハラハラドキドキだったわ」
「ですよねっ、ハラハラドキドキしますよね……! 野球って一球で試合が変わっちゃうから落ち着く暇がなくって、ず~っと夢中になっていられますよねっ」
葉月ミア&わたしに関するお話しをしたり、
「あの。真鈴さんは、どうしてVtuberになろうと思ったんですか?」
「高校に入学して中学生の頃よりも選択肢が広がって、この機会に新しい何かを始めたいな、と思ったことが切っ掛けかな。それでその内容を考えていた時に、とあるVTuberさんの配信が偶然動画サイトのオススメに出てきてね。なんとなく観てみたら面白くて、自分もやってみたいな、と思ったの」
「へぇ~……!」
「その時傍にはちょうど翔ちゃんがいて、『だったら僕がキャラクターをデザインしますよ』って言ってくれてね、『卯月こよみ』が生まれた。だからあの時偶然オススメに出てこなかったら、多分私はVtuberになっていなかったの」
「と、いうことは。『葉月ミア』も生まれてなくって、わたしもVtuberになってなかったんですね。偶然、すごいです……!!」
「そうね、偶然って不思議。活動は楽しいし、美月ちゃんみたいな可愛くて素敵な子とも出会えるし。あの出来事には――Vtuberさんには感謝しているわ」
「わたしも、感謝してますっ。そのVtuberさんって、なんてお名前なんですか~?」
「『笹野原ササミ』さん。私より1年先にデビューしている、企業所属のVtuberさんよ」
「ささのはら、ささみさん……。どこかで聞いたことあるような………………あっ。もしかして予定にあったオフコラボの!」
「ぱちぱちぱち、大正解。デビュー後にそのことをお伝えしたら喜んでくださって、そこから親しくさせてもらっているの。ずっとメッセージのやり取りはしていたけどコラボは初めてで、決まった時から楽しみにしてるの」
「切っ掛けVtuberさんとのコラボ、ワクワクしますよね……! わたしの切っ掛けは卯月こよみさんだから、こよみさんとも――真鈴さんとも、いつかコラボしてみたいですっ」
「うふふ、私も同じです。オンでもオフでも、コラボしましょうね」
卯月こよみさん誕生の秘話をお聞きしたり。
どのお話も興味津々だし楽しくって、気が付いたら1時間が経っていました。
「もうこんな時間……!? あっという間でしたね……!」
「本当に、あっという間だったね。優子さんは気を遣って時間を潰してくださっていることでしょうし、連絡してみましょうか?」
「ですねっ。お電話して――ごめんなさいっ。その前にお手洗いに行かせてもらいます」
お話しに夢中になってて、全然気づきませんでした。サササササッと早歩きで移動して用事を済ませて、またサササッと早歩きで戻る。
((そうだ。先にお母さんに電話しとこう))
歩きスマホはバッテンなのでちゃんと止まって、周りの人の邪魔にならないように端っこに寄って――
「あっ!」
――寄っていた時でした。二つ結びにした幼稚園か保育園くらいの女の子が、わたしを見て大きな声を出しました。
「? どうしたのかな?」
お知り合いでは、ない。初めて見る子だけど、たぶんこの子はわたしを知ってるから『あっ!』って言ったんだよね。
今のわたしは、大丈夫、になったから。
声を出して確認をしてみて、そうしたら女の子は――
「あの時の、変な声のお姉ちゃん!」
――…………。
そんなことを、言ったのでした。
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