4 / 27
第1話 突然の来訪者 ジゼル視点(3)
しおりを挟む
「リヴェド様……?」
「魅了は、結構厄介な呪術でね。外部から干渉するだけじゃ、解けないんだよ」
次のステップ。そちらの意味が分からず首を傾げていると、私にも理解できるように説明をしてくださりました。
魅了というものの存在を、認識する。
かけられた人間が、現状に違和感を覚え始める。
その2点がないと、何をやっても無意味だそうです。
「そこでああやって喋っていて、無事その条件を満たした。だから、次のステップに進めると言ったんだよ」
「……………………」
「今の君の状態なら、この説明を受けても納得できない。それどころか、俺と自分に対して怒りを覚えてきているよね?」
「……………………はい。仰る通りです」
まだコルベット様を疑うの――。失礼な人――。私も私です――。どうして最愛の方を信用できないの――。そんな感情が、湧き上がってきています。
「それも魅了によるもので、魅了が消えたら一緒に全てが消えてくれる。……これからそれを、目に見える形で証明してあげるよ」
部屋の中央にいらっしゃったリヴェド様は、ゆっくりと前進。引き続きニコニコとした表情を携えられたまま近づかれ、私の目の前で――30センチほどの距離で、立ち止まりました。
「俺は呪術の除去、つまり魅了の除去が可能なんだ。そこで今から解呪を行うんだけど、作業中に動かれたら最悪二度と消せなくなってしまう。俺が『OK』と言うまで、絶対に動かないでね」
「…………承知いたしました」
この方を信用する気持ちと信用しない気持ちがあって、後者の感情の方が多くありました。ですがそのバランスは続けて仰られた『効果がなかったらすぐに去ると約束するよ』によって変動し、私は静かに頷きを返しました。
「うん、じゃあ始めるね。――――。――――。――――――」
私の額に右の手のひらを当てた状態で、不可思議な言語が紡がれてゆきます。
「――――。――――。――――――。――――――――。『解』」
そんな時が1分ほど続いたあと、初めて私にも理解できる言葉が出てきました。そして――その瞬間、でした。
ごぽり、と。
身体から何かが抜け出るような感覚があり、直後に「OK」というお声がやってきました。
「解呪作業は、以上で終わりだよ。……さて、改めて振り返ってみよう。あの夜の判断は、おかしい? それとも、おかしくない?」
「……………………おか、しい。おかしいですっ!」
ほぼ初対面の方に対し、あのようなお返事をするなんてありえません。
それに、それに……!
『ジゼル、お前を気に入った。俺のものになれ』
『どうだ、この景色は! こんな絶景、俺が連れてきてやらなかったら絶対に目にはできなかったんだぞ。感謝しろよ』
『はぁ、なんなんだこの誕生日プレゼントは。手編みのマフラーなんて要らないんだよ。今度からはもっとマシなものにしろ、いいな?』
このようなことを仰る方を好きになって、大喜びしていた。それも、あり得ないこと。
「これまでずっと、気が付きませんでしたが……。私は1年間、異様なことを繰り返していましたっ!」
「魅了は、結構厄介な呪術でね。外部から干渉するだけじゃ、解けないんだよ」
次のステップ。そちらの意味が分からず首を傾げていると、私にも理解できるように説明をしてくださりました。
魅了というものの存在を、認識する。
かけられた人間が、現状に違和感を覚え始める。
その2点がないと、何をやっても無意味だそうです。
「そこでああやって喋っていて、無事その条件を満たした。だから、次のステップに進めると言ったんだよ」
「……………………」
「今の君の状態なら、この説明を受けても納得できない。それどころか、俺と自分に対して怒りを覚えてきているよね?」
「……………………はい。仰る通りです」
まだコルベット様を疑うの――。失礼な人――。私も私です――。どうして最愛の方を信用できないの――。そんな感情が、湧き上がってきています。
「それも魅了によるもので、魅了が消えたら一緒に全てが消えてくれる。……これからそれを、目に見える形で証明してあげるよ」
部屋の中央にいらっしゃったリヴェド様は、ゆっくりと前進。引き続きニコニコとした表情を携えられたまま近づかれ、私の目の前で――30センチほどの距離で、立ち止まりました。
「俺は呪術の除去、つまり魅了の除去が可能なんだ。そこで今から解呪を行うんだけど、作業中に動かれたら最悪二度と消せなくなってしまう。俺が『OK』と言うまで、絶対に動かないでね」
「…………承知いたしました」
この方を信用する気持ちと信用しない気持ちがあって、後者の感情の方が多くありました。ですがそのバランスは続けて仰られた『効果がなかったらすぐに去ると約束するよ』によって変動し、私は静かに頷きを返しました。
「うん、じゃあ始めるね。――――。――――。――――――」
私の額に右の手のひらを当てた状態で、不可思議な言語が紡がれてゆきます。
「――――。――――。――――――。――――――――。『解』」
そんな時が1分ほど続いたあと、初めて私にも理解できる言葉が出てきました。そして――その瞬間、でした。
ごぽり、と。
身体から何かが抜け出るような感覚があり、直後に「OK」というお声がやってきました。
「解呪作業は、以上で終わりだよ。……さて、改めて振り返ってみよう。あの夜の判断は、おかしい? それとも、おかしくない?」
「……………………おか、しい。おかしいですっ!」
ほぼ初対面の方に対し、あのようなお返事をするなんてありえません。
それに、それに……!
『ジゼル、お前を気に入った。俺のものになれ』
『どうだ、この景色は! こんな絶景、俺が連れてきてやらなかったら絶対に目にはできなかったんだぞ。感謝しろよ』
『はぁ、なんなんだこの誕生日プレゼントは。手編みのマフラーなんて要らないんだよ。今度からはもっとマシなものにしろ、いいな?』
このようなことを仰る方を好きになって、大喜びしていた。それも、あり得ないこと。
「これまでずっと、気が付きませんでしたが……。私は1年間、異様なことを繰り返していましたっ!」
0
お気に入りに追加
327
あなたにおすすめの小説
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
王女ですが、冤罪で婚約破棄を迫られています
杉本凪咲
恋愛
婚約破棄させてもらう。
パーティー会場でそう告げたのは、私の愛する彼。
どうやら、私が彼の浮気相手をいじめていたらしい。
しかし、本当にそんなことを言っていいのかしら。
私はこの国の王女だというのに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる