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第34話 実感~呪いが解けた日~ シャーリィ視点(1)

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「噂が広まり始めてから、大体一週間。そろそろ呪いが解ける頃だな」

 10月15日の、午前11時半過ぎ。お兄様がパーティー会場で『貧乏神』を否定してくださってから、8日後。ガーデンテーブルにてイレブンジスを行っていると、ノランお兄様は懐中時計を一瞥されました。

「参加者の皆様は翌日より広めてくださっていて、どなたも影響力のある方ばかり。俺の読みだと、もうじきその時が訪れるはずだ」
「……お兄様の10年間が……。私をまた一つ、救ってくださるんですね」

 自殺を止めてくださって、居場所を与えてくださった。生きていてもいいと、居てもいいと、言ってくださった。
 それだけでも言葉にしきれない程に、幸せなのに。お兄様は呪縛からも、解き放ってくださります。

「……お兄様が行ってくださっていたこと。そちらは本来、実現が不可能なことでした」

 財もコネクションも平均的な子爵家、そんな状況下での大飛翔。それは到底できないこと、できないのは必然ともいえるものでした。
 ですがお兄様は走り続けてくださり、不可能を可能にされた。私のために、常識を覆してくださった。
 そちらを知って随分と時間が経って、その間に何度も何度も感謝をお伝えしていますが――。まだまだ、足りません。一生かかってもお伝えしきれないほどのものを、いただいています。

「……お兄様。改めて…………ありがとうございます。私は幸せ者です」

 ですので今一度この胸に溢れている気持ちをお伝えして、そうしたらいつものように、優しい目を向けてくださって。大きくて温かい手で、そっと私の頭を撫でてくださいました。

「どういたしまして、シャリィ。……あと少しで、もっと幸せになれる時間が来る。二人でのんびり、それを待とうか」
「はい……っ。そう致しましょうっ」

 ノランお兄様の見立てがはずれることは、ありません。そのため私はポットを――

「シャリィ。それは、俺の仕事だぞ?」

 ――手にしようとしたら微苦笑と共に紅茶を注いでくださり、私達は2杯目のアールグレイと会話を楽しみます。
 今日はお空に面白い形の雲が浮かんでいるので、そちらについてお話ししたり。もうじきある秋の収穫祭についてのお話をしたり。いつものようにお兄様との時間を楽しんでいると――ついに、いつもとは違う時間がやってきました。

 ぶわっと。

 不意に私の身体から、どす黒い煙がのぼって――

「お兄様。こちらは……っ」
「そう、前に言っていた解呪の証。……おめでとう、シャリィっ!」

 ――私は10年間蝕まれていた呪いから、解放されたのでした……っ!



 そして、そんな私は――





















※ご報告になります。
 演出の都合上いったん完結の表記となりますが、明日以降も同じ時間に続きのお話を投稿をさせていただきます。
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