43 / 90
第21話 全てを知る時 エミー&ノラン視点(3)
しおりを挟む「こちらの方々は、『プロジェクトR(あーる)』の――。俺と治安局による合同プロジェクトの、担当者の皆さんだ」
お兄様の言葉は、わたくしを――わたくし達を、更に困惑させた。
お兄様と治安局による……。合同の、プロジェクト……!?
「治安局は第三者機関で、特定の貴族とは関係を持たないはずなのに……。どう、なっていますの……!?」
「俺は過去に発案と骨組みの提示、現在はアドバイスのみ行っていて、プロジェクトの管理維持決行など全ての権利主導権は治安局にある。俺には一切の決定権がない状態だから、協力体制を持てているんだ」
発案と、骨組み……? なんですの……それ、は……?
「エミー。お前はさっき、『諦めます』『シャーリィ様にも何もしません』そう言ったよな?」
「は、はいっ。そう口に致しましたわ!!」
いつか元凶に復讐するつもりだけれど、正直者になると大変なことになってしまいますもの。無害だとアピールした。
「……そんな風に、嘯くヤツが沢山いる。そしてそういうヤツは大抵極刑にならないから、出所後にまた面倒な事件を起こすんだよ」
………………。お兄様は、見抜いていて…………。
呆れの息を、たっぷり吐いたあと…………。こう、口にされた……。
「それを防ぐために俺は、治安局に『再誕』計画を持ち掛けたんだ」
〇〇
たとえば――。もしもシャリィを逆恨みするヤツが現れて、未然に防いだあと。十年二十年後に、復讐をしようと動き出したらどうする?
その時は、しっかり護って悪意が近づけないようにすればいい。
じゃあ――。もしもシャリィを逆恨みするヤツが出所したあと、何かしらの呪いを見つけてしまったらどうする?
その時は、どうにもできない。
だって呪いを知る切っ掛けは様々で、仮に監視をつけていたとしても、見逃してしまう可能性がある。たとえそのあと解呪できたとしても、多くの時間を要する――多くの苦しみを、味わってしまうことになってしまう。
((なら、呪いを記したものを全部消せばいい。でもそれは、机上の空論。不可能だ))
どんな形でどこにどれほどの数が眠っているのか、見当がつかないんだ。できるはずがない。
けれどそこの対策をしないと、せっかく呪いから解放されても、シャリィがまた苦しんでしまう羽目になってしまう。
((復讐心を抱きそうな人間を消したり、監禁したりしてしまう。そうすれば、簡単に防げるが……))
そうしてしまえば、もうあの手を――澄んだ手を取ることはできない。だから俺は、考えた。
どうすれば殺さずに危険の芽を摘める?
呪いの存在を知った俺は、計画を進めながらソレを考えて考えて考えて――。ついに、その方法を見つけたのだった。
その計画、『プロジェクトR』とは――
2
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
【完結】王子から愛でられる平民の少女に転生しました〜ざまあされそうで超ピンチです!〜
チュンぽよ
恋愛
美しい金髪碧眼の王子ヘンリー・レイノルズが婚約者のマーガレット・クローバーに婚約破棄を一方的に言い出した。原因はヘンリーのお気に入りのマロンのせい。でもマロンはそんなことは全く望んでいなくて…!?
これは、ざあまされないように奮闘するマロンの物語です。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
【第一部・完結】七龍国物語〜冷涼な青龍さまも嫁御寮には甘く情熱的〜
四片霞彩
恋愛
七体の龍が守護する国・七龍国(しちりゅうこく)。
その内の一体である青龍の伴侶に選ばれた和華(わか)の身代わりとして、青龍の元に嫁ぐことになった海音(みおん)だったが、輿入れの道中に嫁入り道具を持ち逃げされた挙句、青龍が住まう山中に置き去りにされてしまう。
日が暮れても輿入れ先に到着しない海音は、とうとう山に住まう獣たちの餌食になることを覚悟する。しかしそんな海音を心配して迎えに来てくれたのは、和華を伴侶に望んだ青龍にして、巷では「人嫌いな冷涼者」として有名な蛍流(ほたる)であった。
冷酷無慈悲の噂まである蛍流だったが、怪我を負っていた海音を心配すると、自ら背負って輿入れ先まで運んでくれる。
身代わりがバレないまま話は進んでいき、身代わりの花嫁として役目を達成するという時、喉元に突き付けられたのは海音と和華の入れ替わりを見破った蛍流の刃であった。
「和華ではないな。お前、何者だ?」
疑いの眼差しを向ける蛍流。そんな蛍流に海音は正直に身の内を打ち明けるのだった。
「信じてもらえないかもしれませんが、私は今から三日前、こことは違う世界――『日本』からやって来ました……」
現代日本から転移したという海音を信じる蛍流の誘いでしばらく身を寄せることになるが、生活を共にする中で知るのは、蛍流と先代青龍との師弟関係、蛍流と兄弟同然に育った兄の存在。
そして、蛍流自身の誰にも打ち明けられない秘められた過去と噂の真相。
その過去を知った海音は決意する。
たとえ伴侶になれなくても、蛍流の心を救いたいと。
その結果、この身がどうなったとしても――。
転移先で身代わりの花嫁となった少女ד青龍”に選ばれて国を守護する人嫌い青年。
これは、遠い過去に願い事を分かち合った2人の「再会」から始まる「約束」された恋の物語。
「人嫌い」と噂の国の守護龍に嫁いだ身代わり娘に、冷涼な青龍さまは甘雨よりも甘く熱い愛を注ぐ。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁┈┈┈┈┈┈┈┈
第一部完結しました。最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
第二部開始まで今しばらくお待ちください。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁┈┈┈┈┈┈┈┈
というわけで、結婚してください!
菱沼あゆ
恋愛
政略結婚で、挙式の最中、支倉鈴(はせくら すず)は、新郎、征(せい)そっくりの男に略奪される。
その男、清白尊(すずしろ みこと)は、征に復讐するために、鈴を連れ去ったというが――。
「可哀想だから、帰してやろうかと思ったのに。
じゃあ、最後まで付き合えよ」
妊婦を助けて死んだはず? の私が転生した先はお姫様! 愛されモテモテセカンドライフが始まる!?
猫兎彩愛(ねこうさあやめ)
恋愛
「危ない!」
妊婦さんが落ちそうになったのを助けた……!までは良かったんだけど……どうやら階段から転げ落ちてしまったらしい……
「サクラ……大丈夫か……サクラ……」
遠くで誰かが呼んでいる。声が聞こえた気がした……そう思いながら目を閉じた……
主人公の山川咲良(やまかわさくら)はある日、妊婦を助けた反動で、駅の階段から転げ落ちてしまった。彼氏居ない歴=年齢と恋愛に関しては寂しい人生だった。幼馴染みの樹(たつき)にも思いを伝えられないまま……
その後、サクラは転生する。転生先は異世界の姫で、姫の名前はライティア。可愛らしい姫は皆から溺愛されて育つ。兄様達は乙女ゲーの推しに似ている等、ウハウハな日々を送っていた……その時!?
*
この話は『小説家になろう』でも掲載しています
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
公爵令嬢は皇太子の婚約者の地位から逃げ出して、酒場の娘からやり直すことにしました
もぐすけ
恋愛
公爵家の令嬢ルイーゼ・アードレーは皇太子の婚約者だったが、「逃がし屋」を名乗る組織に拉致され、王宮から連れ去られてしまう。「逃がし屋」から皇太子の女癖の悪さを聞かされたルイーゼは、皇太子に愛想を尽かし、そのまま逃亡生活を始める。
「逃がし屋」は単にルイーゼを逃すだけではなく、社会復帰も支援するフルサービスぶり。ルイーゼはまずは酒場の娘から始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる