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第17話 今日の外出は~10年越しの約束を~ シャーリィ視点(1)

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「シャリィ。ど真ん中に来てみた気分は、いかがですか?」
「なんだか、世界の中心にいるみたいです。壮観、雄大です」

 気持ちの良い爽やかな風が吹く、正午過ぎ。私達は馬車で西方向に2時間ほど進んだ地点にある、『ディレッサルの湖』――美しい水面(みなも)と水鳥で有名な場所を、訪れていました。
 今日の日付である5月5日と、ここディレッサルの湖。この組み合わせは、お兄様と私にとって特別なものなのです。


『お兄さま、見てくださいっ。あそこ、お舟が浮いてますっ』
『そうだね。シャリィ、乗ってみたい?』
『乗ってみたい、ですっ。真ん中にいってみたいですっ』
『そっか、じゃあこれから乗ろう。船は借りられるみたいだし、話をつけてくる――ぁ、雨雲が出てきたな……』


 まだ『貧乏神』になる前の、10年前の4月5日。マイヤはとある伯爵家のご令息と遊びに出かけていて、お兄様と私の2人でこちらを訪れた時のことでした。私達は船に乗ろうとしたのですが、悪天候によって叶いませんでした。
 そして『1か月後に』と約束をしていたのですが、その2週間後に私は貧乏神と呼ばれるようになってしまって……。それどころではなくなってしまい、その時が訪れることはありませんでした。
 ですのでお兄様は先月、約束していた来月――5月5日に来ようと仰ってくださっていて、こうしてついに実現したのです。

「広い広い湖の真ん中。そこでは、こんな特別な気分を味わえるのですね」
「畔と中心は、全然違うよな。……時間はかかったけど、連れてくることができてよかった」
「あの頃も、今も、ありがとうございます。…………細かな日付まで覚えてくださっているなんて、思っていなくって。私は幸せ者です」
「はぁ? 俺が約束を忘れるはずがないだろ? お兄様を甘くみるなっての」

 つん、と。軽く私のオデコを突っつきながら片目を瞑り、?? そのあとはポンポンと、胡坐をかいているご自身の足を指さされました。
 そちらが……どうか、されたのでしょうか……?

「たぶん、寝っ転がるともう一つ良い体験ができると思う。そのまま転がると下は固いから、ここに頭を載せるといい」
「いえっ、そんなっ。お兄様の足を使うだなんて――」
「俺が提案してるんだから、気にしなくていいんだよ。ほら、載った載った」
「は、はい。そ、それでは…………失礼、致します」

 せっかく仰っていただいているのですから、お断りするのは失礼に当たりますよね。ですので私はお言葉に甘え、仰向けになって膝枕をしていただくと――
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