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第4話 待っていた驚き シャーリィ視点(3)
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「あの時の君は息子を想い、多くのリスクを背負って打ち明けてくれた。なのにわたしときたら、どうだ? 徐々に君から距離を取り始めてしまった。どういう待遇を受けているのか容易に想像できたのもかかわらず、見て見ぬふりをしたのだよ……」
「マルタンおじ様、そちらは当然の判断です。おかしな選択ではありません」
仮に私がおじ様で『貧乏神なの』と言われたら、恐らくこれまで通りの関係は維持できません。きっといずれは、完全に距離を取ってしまいます。
自分自身も行う可能性が高い行動なのですから、責めることなどできるはずがありません。
「それにそうしていただくことは、私の願いでした。その証拠に私はこれまで一度たりとも、おじ様に暗い感情を抱いたことはありません。ですのでどうか、お顔をお上げください」
「…………………………」
「父さん、シャリィは本気で言ってくれてるんだ。そうしないのは、失礼にあたると思うよ?」
「…………………………そう、だな。痛み入る、シャーリィくん」
ノランお兄様が軽くお背中を叩き、ようやくおじ様は頭を上げてくださりました。
「そういった御言葉は不要でして、なのにこうしていただけた。マルタンおじ様、私は幸せです」
「…………重ね重ね、ありがとう。ありがとう、シャーリィくん……」
その、ホッとしたお姿。そちらを見ただけで、ずっと罪悪感を抱いてくださっていたのだと分かります。
おじ様。マルタンおじ様。こちらこそ、ありがとうございます。
「だがこれで、帳消しにする気はないのだよ。無理だと決めつけてノランに手を貸さなかった件も含め、お詫びをさせてもらうつもりでね。ノランに無理を言って、とある計画を手伝わせてもらっているのだよ」
「とある計画、ですか……? そちらは一体……?」
「シャリィ、諸事情で今はまだ明かせない。でもいずれ、明かせる時が来ると思うから――必ず嬉しいニュースを届けるから、その時を待っていて欲しい」
そちらの計画を企画したノランお兄様によると、私に詳細を伏せていた方が都合がいいみたいです。ですのでおじ様とお兄様は、『希望がある』ということを伝えてくださりました。
「はい。お兄様、おじ様。楽しみに待たせていただきます」
「絶対に実現させるから、楽しみにしておいてくれ。……じゃあこの話はお仕舞で、次の話をしようか」
『父さんが戻ってきたら、大事な話があるんだ。橋で言ってた資産が増えた理由もその際に話すから、ちょっと待っていてくれ』
お兄様は先ほど、そう仰られました。
10年もの間に、たったおひとりで36倍以上に増やした理由。そちらは本来あり得ないことで、ずっと気になっていました。お会いできていなかった間に、何があったのでしょうか……?
「マルタンおじ様、そちらは当然の判断です。おかしな選択ではありません」
仮に私がおじ様で『貧乏神なの』と言われたら、恐らくこれまで通りの関係は維持できません。きっといずれは、完全に距離を取ってしまいます。
自分自身も行う可能性が高い行動なのですから、責めることなどできるはずがありません。
「それにそうしていただくことは、私の願いでした。その証拠に私はこれまで一度たりとも、おじ様に暗い感情を抱いたことはありません。ですのでどうか、お顔をお上げください」
「…………………………」
「父さん、シャリィは本気で言ってくれてるんだ。そうしないのは、失礼にあたると思うよ?」
「…………………………そう、だな。痛み入る、シャーリィくん」
ノランお兄様が軽くお背中を叩き、ようやくおじ様は頭を上げてくださりました。
「そういった御言葉は不要でして、なのにこうしていただけた。マルタンおじ様、私は幸せです」
「…………重ね重ね、ありがとう。ありがとう、シャーリィくん……」
その、ホッとしたお姿。そちらを見ただけで、ずっと罪悪感を抱いてくださっていたのだと分かります。
おじ様。マルタンおじ様。こちらこそ、ありがとうございます。
「だがこれで、帳消しにする気はないのだよ。無理だと決めつけてノランに手を貸さなかった件も含め、お詫びをさせてもらうつもりでね。ノランに無理を言って、とある計画を手伝わせてもらっているのだよ」
「とある計画、ですか……? そちらは一体……?」
「シャリィ、諸事情で今はまだ明かせない。でもいずれ、明かせる時が来ると思うから――必ず嬉しいニュースを届けるから、その時を待っていて欲しい」
そちらの計画を企画したノランお兄様によると、私に詳細を伏せていた方が都合がいいみたいです。ですのでおじ様とお兄様は、『希望がある』ということを伝えてくださりました。
「はい。お兄様、おじ様。楽しみに待たせていただきます」
「絶対に実現させるから、楽しみにしておいてくれ。……じゃあこの話はお仕舞で、次の話をしようか」
『父さんが戻ってきたら、大事な話があるんだ。橋で言ってた資産が増えた理由もその際に話すから、ちょっと待っていてくれ』
お兄様は先ほど、そう仰られました。
10年もの間に、たったおひとりで36倍以上に増やした理由。そちらは本来あり得ないことで、ずっと気になっていました。お会いできていなかった間に、何があったのでしょうか……?
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