上 下
19 / 74

第9話(2)

しおりを挟む
「………………………………………………………」

 あれから、一分が経過。アルフレッドは眉を寄せて、考え込んでいます。
 うん、そうだね。そうなっちゃうよね。

 あたしは、料理が苦手。

 殆ど作った経験が、ないもんね。そもそもどんなメニューを作れるのか知らないから、推測すら難しいよね。

「ヒント1。この中にあるものは、焼き菓子です」
「焼き菓子か……。クッキー、マドレーヌ、クラフティ、スコーン、パウンドケーキ……。この辺りか……?」
「ヒント2。この中にあるものは、アオプ湖に関係があります。さあてなんでしょう?」
「は~、やっと分かった。答えは、カップケーキ。クリームチーズのカップケーキだ」
「大正解っ。バスケットの中身は、カップケーキでしたっ」

 6月の伝説のもととなった人物、初代国王様と王妃様。お二人がここでデートをした際に食べたお菓子が、クリームチーズのカップケーキなのだ。

「手作りって言ってるから、焼き菓子って出るまで頭になかった。カップケーキなんて、いつの間に覚えたんだ?」
「料理本を何時間もじっくり読み込んで、つきっ切りで教えてもらったの。そのおかげで、あたしでも出来たんだよ」

 今日のランチは記念すべきランチだから、自分も何かしたかった。
 改めて、気合の力ってすごいと思ったよ。やる気になったらできちゃうもんだね。……まあ、何度も失敗しましたけども……。

「リル、ありがとな。滅茶苦茶幸せだよ」
「あたしも、そう言ってもらえて幸せ。それじゃ、食べよ」

 アルフレッドの手に置いて、2人揃ってパクっと食べる。そうしたら、

「美味い! ふんわりで、しっとり。クリームチーズの風味が活きてて、ホントに美味しい!」

 彼は破顔を作ってくれて、ビシッと親指が立った。
 自分では改心の出来だったけど、アルフレッドはどう感じるか心配だった。だからずっと内心ドキドキで、ようやく安心できました。

「焼き加減も完璧だぞっ。もう一つもらってもいいか?」
「とうぜんっ。ドンドン、遠慮なく食べて食べてっ」

 そっか――。喜んでもらえるのって、こんな気持ちなんだ――。
 あたしも、もっと色んなものを作れるようになりたいな――。
 アルフレッドと一緒に、お料理をしたいな――。

 そんなことを考えたり、はにかんだりして、デザートの部門も終了。

「リル、美味しかった。俺のために、ありがとうな」
「どういたしまして。こちらこそ、あたしのためにありがとう」

 まずは向かい合ってお辞儀をして、それからは時間が許す限りお喋りをすることになった。
 の、だけど――。
 お喋りを開始して、およそ20分後。あたし達は揃って、信じられないものを目撃してしまうのでした――。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。

Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。 そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。 二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。 自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約者様にお子様ができてから、私は……

希猫 ゆうみ
恋愛
アスガルド王国の姫君のダンス教師である私には婚約者がいる。 王室騎士団に所属する伯爵令息ヴィクターだ。しかしある日、突然、ヴィクターは子持ちになった。 神官と女奴隷の間に生まれた〝罪の子〟である私が姫君の教師に抜擢されたのは奇跡であり、貴族に求婚されたのはあり得ない程の幸運だった。 だから、我儘は言えない…… 結婚し、養母となることを受け入れるべき…… 自分にそう言い聞かせた時、代わりに怒ってくれる人がいた。 姫君の語学教師である伯爵令嬢スカーレイだった。 「勝手です。この子の、女としての幸せはどうなるのです?」 〝罪の子〟の象徴である深紅の瞳。 〝罪の子〟を片時も忘れさせない〝ルビー〟という名前。 冷遇される私をスカーレイは〝スノウ〟と呼び、いつも庇護してくれた。 私は子持ちの婚約者と結婚し、ダンス教師スノウの人生を生きる。 スカーレイの傍で生きていく人生ならば〝スノウ〟は幸せだった。 併し、これが恐ろしい復讐劇の始まりだった。 そしてアスガルド王国を勝利へと導いた国軍から若き中尉ジェイドが送り込まれる。 ジェイドが〝スノウ〟と出会ったその時、全ての歯車が狂い始め───…… (※R15の残酷描写を含む回には話数の後に「※」を付けます。タグにも適用しました。苦手な方は自衛の程よろしくお願いいたします) (※『王女様、それは酷すぎませんか?』関連作ですが、時系列と国が異なる為それぞれ単品としてお読み頂けます)

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

初夜で白い結婚を宣言する男は夫ではなく敵です

編端みどり
恋愛
政略結婚をしたミモザは、初夜のベッドで夫から宣言された。 「君とは白い結婚になる。私は愛している人が居るからな」 腹が立ち過ぎたミモザは夫家族を破滅させる計画を立てる。白い結婚ってとっても便利なシステムなんですよ? 3年どうにか耐えると決意したミモザだが、あまりに都合の良いように扱われ過ぎて、耐えられなくなってしまう。 そんなミモザを常に見守る影が居て…。

処理中です...