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第14話 幼馴染2人のその後~ラウルの場合・その4~ ラウル視点(1)

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「へぇ~、リュクレースがねぇ~。いつの間にかあのマリィ・セラトルフの前座に抜擢されていて、大成功を収めたのか~。しかもあちこちで大絶賛されていて、『ウチでも演奏して欲しい』って声がかかり始めているのか~。それはめでたいな! おめでとう、リュクレース!!」

 5月3日の夜、午後11時54分。父上から届いた手紙の片割れを読んだ俺は、自室のベッドに腰をかけながら大きな拍手を送った。

「最初は嗜みとしてはじめただけだけど、すぐにピアノが好きになっていたもんなぁ。師匠のようなピアニストに憧れてもいたもんなぁ。目標に少しでも近づけてよかったなぁ。本当におめでとう、リュクレース!!」

 もう一度大きな大きな拍手を送り、今後の発展を心から願う。

 ――手紙で散々暴言を吐いていた父上やセブランとは180度異なる反応をする――。

 どうして俺が、こんな風に反応しているのか? 本来なら父や弟と同じ状態になるはずなのに、どうしてこんな風に反応しているのか?

「ふふふふふふふふふ」

 それはもちろん、とっっっっっ良いことがあったから。
 この間閃き水面下で進めていた計画が、ついに今夜実行できるようになったからなのだっ!

「ああそうだとも、その通りだ。あの目標がなくなってしまった俺は、どうやってもあの頃のような輝きを取り戻せない」

 同じ――それ以上に勉強をしても、集中力や気合などの差によって当時のような成果は得られなくなった。
 そう、認めようじゃないか。

「……どう足掻いてもあの輝きは取り戻せないし、1日が24時間である限りこれ以上は勉強の時間を増やせない。だから成績の回復はおろか、下落を止めることさえできない」

 と――なる。の、だが!!
 そうじゃないんだよなぁ。

「一切手を差し伸べない、無慈悲な神よ。見ているがいい。これが俺が自ら見出した活路だ!」

 どこかに居る神を鼻で笑い、懐にとあるものを2つ忍ばせた状態で、静かに部屋を出る。そうして俺は足音を殺しながら廊下と階段を進み、そのまま部屋だけではなく寮の外へと出て、さらに進む。

((………………よし。誰にも見られていないな))

 この姿を目撃されて不審に思われ、後をつけられてしまったら大変なことになってしまう。学院を即退学させられてしまい、帰国したあとは外を歩けなくなるレベルのことが起きてしまう。
 それを防ぐべく寮の出入り口で入念に周囲を確認した俺は、真っすぐ進んで学院の裏庭、その最奥を目指し――

「ラウルくんっ!? ここに君がいるということは…………あの手紙の送り主は君なのかい!?」
「ええそうですよ、ロック先生。さあ、取り引きを始めましょう」

 そこで待っていたラドラロンド学院の教師に向け、ニヤリと口の端を吊り上げたのだった。


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