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第10話 幼馴染2人のその後~リュクレースの場合・その3~ リュクレース視点(1)

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「すっかり、僕らの定番になりましたね」
「そうですね。わたし達の定番になりました」

 4月16日の、午後4時過ぎ。今ではすっかり週一回で行われるようになった連弾合わせを終えたフィリベール様とわたしは、のんびりと敷地内を歩いていました。

『そうそう。前座が決まったからといって、特別なことをする必要はないよ。むしろソイツは禁止令もので、今まで通り伸び伸びと自由に弾くのが一番いい』
『『そう、なのですか……?』』
『いつも言っているように、人に個性があるように「ベスト」はそれぞれ違う。アンタ達は自然体が一番輝くのさね。ワタシが保証するよ』

 と先生に仰られたため、毎回演奏は満足感で満ちたら――いつも、1時間半~2時間ほどでお仕舞。そのあとはあの日のようにお散歩をしながら、演奏を振り返ったり他愛もないお喋りをしたりするようになっているんです。
 ただ、今日は『いつも』とは少々違うことも起きていて――

「あ。リュクレース様のお屋敷にも、小さな菜園があるんですね」
「そうなんです。以前先生に強く勧められて、作ってみたんです」

 ――今日はウチのお屋敷の演奏室でピアノを弾いて、ウチのお屋敷の周りをお散歩しているんです。
 なぜこのようなことになっているのかというと、このあと――午後6時から、フィリベール様をお招きしての食事会があるからです。

 ――前座とはいえ、正式にパートナーとして公の舞台に立つことになった――。

 この国では初めての出演が決まった際は高音担当プリモ低音担当セコンドをお屋敷に招待して、『前祝い』を行う仕来りがあるんです。ですので全員の都合が合う今日となり、いらっしゃるのだから、という理由で今日はウチで一緒に弾いたのです。
 ちなみにこの仕来りには『後祝い』というものがあり、わたし達の場合は前座の終了後に、今度はわたしがレイオズン伯爵邸に招かれて食事会を行うようになっています。

「『も』、ということは……」
「実は僕も、以前勧められて小さな菜園を作っているんですよ。今度お見せしますね」
「はい、楽しみにしています」

 わたし達のお散歩は、『発見の宝庫』。いつもお互い知らなかったことを知れる楽しい時間。
 今日も早速ひとつめの発見があり、すぐに2つ目、3つ目と続いていきます。
 そうして僅か30分ほどで、5つ目の発見があり――

「お喉が渇きませんか? よかったら、あちらでお茶を――え……!?」

 ――それがとても楽しくて、笑顔でご案内をしようとしていた時でした。
 不意に……。信じられない姿と声を、見て聞くことになるのでした……。


「サロモン! リュクレースに合わせろ!!」
「サロモンおじさん! リュクレース姉さんに合わせてください!! 早く!!」


 門の向こう側で大声を出している、ふたり……。
 あれは、ラウルの父親ロマンおじ様ラウルの弟セブランくん……!?


 
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