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第9話 三十八回ぶりの再会 リアナ視点(3)
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「僕達はループによって、60年以上の時を経験しました。だけど今でも、あの日のことを忘れてはいません」
片膝を付かれた、ルロア様。一度俯いたあと上がったそのお顔には、懐かしさの色がありました。
「僕に向けてくれた微笑みや優しさ。一緒に過ごした時間。そのどれもが掛け替えのないもので、宝物です」
「…………はい……」
「だから、とにかく幸せで。そんな時間がずっと続いて欲しい、と思っていました。……でも僕は、臆病だったから。逃げたんです」
「…………はい……」
そちらも、知っています。何度も何度も、嘆かれていましたよね。
「あの時僕が逃げずに向かって、自分を高めていたら……。リアナ様は振り向いてくださっていて、未来は変わっていたかもしれない。ずっとそう、後悔していました。悔やんで悔やんで、泣いていました」
「…………はい……」
「けれど様々な問題に直面して、ようやく分かったんですよ。泣いていても、何も変わらないことに。動かないと、なにも変えられないことに。力がないと、何も変えられないことに。……大切な人を、守れないことに」
静かに首を左右に振って、ご自身の体を見下ろして、右手を強く握りしめて。再びその視線は、私へと注がれるようになりました。
「……もしも次に似たようなことがあった時、こんな風に上手くいくとは限りません。たとえチャンスを得られたとしても、苦労した末に失敗してしまうかもしれません」
「…………はい。そう、かもしれません」
「ですので僕は、一生涯の愛を誓うと同時に約束します。強くなると」
もしもヴァンサンのような男が現れても、誰の力も借りずにはね返せるようになります――。
ルロア様はそう、無条件で確信してしまる目付きとお声で、明言された。
「これからの僕は、見守り願うだけの存在ではありません。貴方を護り引っ張ってゆく存在となります。だから、リアナ・ベルテギア様。これからは上と下ではなく横同士で、一緒に人生を歩ませてください。……よろしく、お願い致します」
そうして真っすぐな瞳と一緒に、右手が伸びてきて――。そうしてくださっているのは大好きな人ですので、お返事は一つしかありません。
「はい、喜んで」
私は嬉し涙を沢山零しながら、その手に触れたのでした。
片膝を付かれた、ルロア様。一度俯いたあと上がったそのお顔には、懐かしさの色がありました。
「僕に向けてくれた微笑みや優しさ。一緒に過ごした時間。そのどれもが掛け替えのないもので、宝物です」
「…………はい……」
「だから、とにかく幸せで。そんな時間がずっと続いて欲しい、と思っていました。……でも僕は、臆病だったから。逃げたんです」
「…………はい……」
そちらも、知っています。何度も何度も、嘆かれていましたよね。
「あの時僕が逃げずに向かって、自分を高めていたら……。リアナ様は振り向いてくださっていて、未来は変わっていたかもしれない。ずっとそう、後悔していました。悔やんで悔やんで、泣いていました」
「…………はい……」
「けれど様々な問題に直面して、ようやく分かったんですよ。泣いていても、何も変わらないことに。動かないと、なにも変えられないことに。力がないと、何も変えられないことに。……大切な人を、守れないことに」
静かに首を左右に振って、ご自身の体を見下ろして、右手を強く握りしめて。再びその視線は、私へと注がれるようになりました。
「……もしも次に似たようなことがあった時、こんな風に上手くいくとは限りません。たとえチャンスを得られたとしても、苦労した末に失敗してしまうかもしれません」
「…………はい。そう、かもしれません」
「ですので僕は、一生涯の愛を誓うと同時に約束します。強くなると」
もしもヴァンサンのような男が現れても、誰の力も借りずにはね返せるようになります――。
ルロア様はそう、無条件で確信してしまる目付きとお声で、明言された。
「これからの僕は、見守り願うだけの存在ではありません。貴方を護り引っ張ってゆく存在となります。だから、リアナ・ベルテギア様。これからは上と下ではなく横同士で、一緒に人生を歩ませてください。……よろしく、お願い致します」
そうして真っすぐな瞳と一緒に、右手が伸びてきて――。そうしてくださっているのは大好きな人ですので、お返事は一つしかありません。
「はい、喜んで」
私は嬉し涙を沢山零しながら、その手に触れたのでした。
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