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第9話 もう一つの急転 イブライム視点

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 ※このお話は、ケヴィックが追放された翌日のものとなります。




「……イブライム。どうだ?」
「……なんて書かれてあるの……?」
「………………父さん母さん、やった! 大成功だ! フェリルーザ家の支援を受けられるようになった!!」

 我が屋敷のエントランス。俺は真白の封筒と便箋を――アンから届いた手紙を、満面の笑みと共に高々と掲げた。
 詳細を伏せた交渉は、無事に成功。無金利無条件で、1000万ルピアスを借りられることが決まった!

「これだけ金があれば立て直せるぞ! 破産もないっ! やったな父さん母さん!」
「ああ! 最悪の事態は免れた!! よくやったぞイブライム!」
「流石よイブライム! わたくし達のためにありがとうイブライム!」

 この日のために俺は、下手に出続けた。色んな場所に一緒に出掛けたりプレゼントを渡したり、男爵令嬢ふぜいのご機嫌を取り続けた。
 伯爵令息の、この俺がだ。
 あれはとにかく忌々しい、思い出したくもない時間だった。……だがまあ、最高の結果が出たんだ。特別に・・・我慢してやろう。

「それにアンのヤツをこのまま騙し続けていれば、もっと甘い汁を吸っていけるんだ。あの溜飲は、今後も搾り取っていくことで下げていこう――ん? 便箋がもう一枚入っていたのか……?」

 一枚目――支援に夢中で、二枚目の存在に気が付かなかった。アイツからの手紙はまだ終わってなかったのか。

「イブライム、早く確かめてみてくれ。支援はできないという内容かもしれんからな」
「もうあなた、あり得ないわよ。だってあの子は、支援できますと書いてきているんですもの」
「そうだよ父さん、考えすぎだ。もしそうなら、先に伝えるに決まっている――ほらね、違った。二枚目の内容は、食事の招待だよ」

 お父様が――卿が俺と当主夫妻と会食をしたがっている。明日の夜フェリルーザ邸に来て欲しい。支援の1000万ルピアスはその時卿から渡す。
 そんな内容が記されていた。

「男爵如きが伯爵家をお呼びする・・・・なんてふざけた話だが、こっちも今回は我慢してやろう。父さん母さん、明日は楽しい夜になりそうだ」
「うむ!」「ええ!」

 そうして俺達は嬉々としながら夜を越え、翌の昼前に出発する。そうして引き続き全員が上機嫌で揺られながら道程を進み、やがて目的地であるフェリレーザ邸に到着して――? そこで俺達家族は、おかしな状況に直面することになるのだった。

「? アンと……きみは、エリオッツ君、だったか。なぜ二人だけなんだい? 卿はどこにいるのかな……?」



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