32 / 33
第21話 今度こそ アンナ視点(2)
しおりを挟む
「…………ダヴィッド様。貴方はこんなにも大きな思いに、耐えてくださっていたのですね……っ」
この方と過ごした、幸せな日々。そちらを全て思い出した私は、目の前にあるお胸に飛び込ませていただきました。
「『目の前に大切な人がいる!』『大好きな人にまた会えた!』。すでに前世の関係を知っていても、私は今、喜びを抑えきれなくなっています。なのにダヴィッド様はそれを抑え込んで、他人として私を見守ってくださっていました。そちらがどれほどのことなのか、ようやく理解致しました」
自分が愛していた人に、この喜びを伝えることができない。以前のような距離で近づくことができない。大切な人が、違う人と仲良くしている。
それは、『悲しい』や『つらい』では表しきれない程で……。にもかわわらずダヴィッド様は、今の私の幸せのために、行ってくださった。
その行動の重さ大きさを知り、そうせずにはいられませんでした。
「ダヴィッド様っ、ありがとうございます……っ。ありがとうございます……っ!」
「アンナ様、こちらこそありがとうございます。……スタートが遅れてしまった僕にできる唯一のこと、情けない『守る』方法。そちらをそんな風に思っていただけて、ありがたく思います」
私の背中にそっと腕が回され、優しく強く、抱き締められます。そうして私は全身でダヴィッド様を感じ、そうしていると――。「ですがそれで実現できたのは、『守る』だけ。貴方に幸せを招くことは、出来ませんでした」、そんなお声が聞こえてきました。
「ですので。今度は、『守る』『幸せにする』。その両方をこの手で実現したいと、考えております」
そして続いてこう仰られて、まだ終わりません。デヴィッド様は一歩下がって片膝をつき、わたしのもとへと右手が伸びました。
「今度こそ僕は、全てを有言実行とします。最後まで貴方を愛し続け、生涯護り続けると誓います。ですので――。アンナ様。再び貴方の隣を歩むことを、お許しください」
その体勢。それは、前世でいただいたものとおんなじでした。
ですが台詞は一部が違っていて、瞳もそう。意志が満ち満ちてたあの頃よりも、更に強いものが――運命さえも捻じ曲げ変えてしまえると感じられるほどの意志が、宿っています。
「……ダヴィッド、さま……っ」
目の前にいらっしゃるのは、最愛の人。そんな人から、こんなものをいただいたのですから。お返事は、これ以外にありません。
「はい……っ。私の隣を、歩いてください……っ。お隣を、歩かせてください……っ。愛してくださいっ、愛させてください……っ。ずっと、一緒にいてください……っ」
私は喜びで声と体を震わせながら、その真っすぐな手を取らせていただいたのでした――。
この方と過ごした、幸せな日々。そちらを全て思い出した私は、目の前にあるお胸に飛び込ませていただきました。
「『目の前に大切な人がいる!』『大好きな人にまた会えた!』。すでに前世の関係を知っていても、私は今、喜びを抑えきれなくなっています。なのにダヴィッド様はそれを抑え込んで、他人として私を見守ってくださっていました。そちらがどれほどのことなのか、ようやく理解致しました」
自分が愛していた人に、この喜びを伝えることができない。以前のような距離で近づくことができない。大切な人が、違う人と仲良くしている。
それは、『悲しい』や『つらい』では表しきれない程で……。にもかわわらずダヴィッド様は、今の私の幸せのために、行ってくださった。
その行動の重さ大きさを知り、そうせずにはいられませんでした。
「ダヴィッド様っ、ありがとうございます……っ。ありがとうございます……っ!」
「アンナ様、こちらこそありがとうございます。……スタートが遅れてしまった僕にできる唯一のこと、情けない『守る』方法。そちらをそんな風に思っていただけて、ありがたく思います」
私の背中にそっと腕が回され、優しく強く、抱き締められます。そうして私は全身でダヴィッド様を感じ、そうしていると――。「ですがそれで実現できたのは、『守る』だけ。貴方に幸せを招くことは、出来ませんでした」、そんなお声が聞こえてきました。
「ですので。今度は、『守る』『幸せにする』。その両方をこの手で実現したいと、考えております」
そして続いてこう仰られて、まだ終わりません。デヴィッド様は一歩下がって片膝をつき、わたしのもとへと右手が伸びました。
「今度こそ僕は、全てを有言実行とします。最後まで貴方を愛し続け、生涯護り続けると誓います。ですので――。アンナ様。再び貴方の隣を歩むことを、お許しください」
その体勢。それは、前世でいただいたものとおんなじでした。
ですが台詞は一部が違っていて、瞳もそう。意志が満ち満ちてたあの頃よりも、更に強いものが――運命さえも捻じ曲げ変えてしまえると感じられるほどの意志が、宿っています。
「……ダヴィッド、さま……っ」
目の前にいらっしゃるのは、最愛の人。そんな人から、こんなものをいただいたのですから。お返事は、これ以外にありません。
「はい……っ。私の隣を、歩いてください……っ。お隣を、歩かせてください……っ。愛してくださいっ、愛させてください……っ。ずっと、一緒にいてください……っ」
私は喜びで声と体を震わせながら、その真っすぐな手を取らせていただいたのでした――。
5
お気に入りに追加
2,550
あなたにおすすめの小説
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
婚約者は幼馴染みを選ぶようです。
香取鞠里
恋愛
婚約者のハクトには過去に怪我を負わせたことで体が不自由になってしまった幼馴染がいる。
結婚式が近づいたある日、ハクトはエリーに土下座して婚約破棄を申し出た。
ショックではあったが、ハクトの事情を聞いて婚約破棄を受け入れるエリー。
空元気で過ごす中、エリーはハクトの弟のジャックと出会う。
ジャックは遊び人として有名だったが、ハクトのことで親身に話を聞いて慰めてくれる。
ジャックと良い雰囲気になってきたところで、幼馴染みに騙されていたとハクトにエリーは復縁を迫られるが……。
【完結】私ではなく義妹を選んだ婚約者様
水月 潮
恋愛
セリーヌ・ヴォクレール伯爵令嬢はイアン・クレマン子爵令息と婚約している。
セリーヌは留学から帰国した翌日、イアンからセリーヌと婚約解消して、セリーヌの義妹のミリィと新たに婚約すると告げられる。
セリーヌが外国に短期留学で留守にしている間、彼らは接触し、二人の間には子までいるそうだ。
セリーヌの父もミリィの母もミリィとイアンが婚約することに大賛成で、二人でヴォクレール伯爵家を盛り立てて欲しいとのこと。
お父様、あなたお忘れなの? ヴォクレール伯爵家は亡くなった私のお母様の実家であり、お父様、ひいてはミリィには伯爵家に関する権利なんて何一つないことを。
※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います
※最終話まで執筆済み
完結保証です
*HOTランキング10位↑到達(2021.6.30)
感謝です*.*
HOTランキング2位(2021.7.1)
妹と再婚約?殿下ありがとうございます!
八つ刻
恋愛
第一王子と侯爵令嬢は婚約を白紙撤回することにした。
第一王子が侯爵令嬢の妹と真実の愛を見つけてしまったからだ。
「彼女のことは私に任せろ」
殿下!言質は取りましたからね!妹を宜しくお願いします!
令嬢は妹を王子に丸投げし、自分は家族と平穏な幸せを手に入れる。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるラナーシャは、妹同伴で挨拶をしに来た婚約者に驚くことになった。
事前に知らされていなかったことであるため、面食らうことになったのである。
しかもその妹は、態度が悪かった。明らかにラナーシャに対して、敵意を抱いていたのだ。
だがそれでも、ラナーシャは彼女を受け入れた。父親がもたらしてくれた婚約を破談してはならないと、彼女は思っていたのだ。
しかしそんな彼女の思いは二人に裏切られることになる。婚約者は、妹が嫌がっているからという理由で、婚約破棄を言い渡してきたのだ。
呆気に取られていたラナーシャだったが、二人の意思は固かった。
婚約は敢え無く破談となってしまったのだ。
その事実に、ラナーシャの両親は憤っていた。
故に相手の伯爵家に抗議した所、既に処分がなされているという返答が返ってきた。
ラナーシャの元婚約者と妹は、伯爵家を追い出されていたのである。
程なくして、ラナーシャの元に件の二人がやって来た。
典型的な貴族であった二人は、家を追い出されてどうしていいかわからず、あろうことかラナーシャのことを頼ってきたのだ。
ラナーシャにそんな二人を助ける義理はなかった。
彼女は二人を追い返して、事なきを得たのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる