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第21話 今度こそ アンナ視点(2)

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「…………ダヴィッド様。貴方はこんなにも大きな思いに、耐えてくださっていたのですね……っ」

 この方と過ごした、幸せな日々。そちらを全て思い出した私は、目の前にあるお胸に飛び込ませていただきました。

「『目の前に大切な人がいる!』『大好きな人にまた会えた!』。すでに前世の関係を知っていても、私は今、喜びを抑えきれなくなっています。なのにダヴィッド様はそれを抑え込んで、他人として私を見守ってくださっていました。そちらがどれほどのことなのか、ようやく理解致しました」

 自分が愛していた人に、この喜びを伝えることができない。以前のような距離で近づくことができない。大切な人が、違う人と仲良くしている。
 それは、『悲しい』や『つらい』では表しきれない程で……。にもかわわらずダヴィッド様は、今の私の幸せのために、行ってくださった。
 その行動の重さ大きさを知り、そうせずにはいられませんでした。

「ダヴィッド様っ、ありがとうございます……っ。ありがとうございます……っ!」
「アンナ様、こちらこそありがとうございます。……スタートが遅れてしまった僕にできる唯一のこと、情けない『守る』方法。そちらをそんな風に思っていただけて、ありがたく思います」

 私の背中にそっと腕が回され、優しく強く、抱き締められます。そうして私は全身でダヴィッド様を感じ、そうしていると――。「ですがそれで実現できたのは、『守る』だけ。貴方に幸せを招くことは、出来ませんでした」、そんなお声が聞こえてきました。

「ですので。今度は、『守る』『幸せにする』。その両方をこの手で実現したいと、考えております」

 そして続いてこう仰られて、まだ終わりません。デヴィッド様は一歩下がって片膝をつき、わたしのもとへと右手が伸びました。

「今度こそ僕は、全てを有言実行とします。最後まで貴方を愛し続け、生涯護り続けると誓います。ですので――。アンナ様。再び貴方の隣を歩むことを、お許しください」

 その体勢。それは、前世でいただいたものとおんなじでした。
 ですが台詞は一部が違っていて、瞳もそう。意志が満ち満ちてたあの頃よりも、更に強いものが――運命さえも捻じ曲げ変えてしまえると感じられるほどの意志が、宿っています。

「……ダヴィッド、さま……っ」

 目の前にいらっしゃるのは、最愛の人。そんな人から、こんなものをいただいたのですから。お返事は、これ以外にありません。

「はい……っ。私の隣を、歩いてください……っ。お隣を、歩かせてください……っ。愛してくださいっ、愛させてください……っ。ずっと、一緒にいてください……っ」

 私は喜びで声と体を震わせながら、その真っすぐな手を取らせていただいたのでした――。


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