16 / 33
第12話 疑問と覚醒と、思い出 ダヴィッド視点(1)
しおりを挟む
僕は幼い頃から、自分は普通の人間ではないと思っていた。
母国語の勉強や貴族としての勉強。それらに既視感があって、驚くべき速度でそれらの知識を身につけてしまったからだ。
((飲み込みが異常に早いと言われた兄さんの倍以上、一般的な人の4倍以上。これは、神童というレベルを超えている……))
そのため常に自分自身を訝しみ、原因の追究を行い続けてきた。けれどその答えの手がかりすら掴めず、仕方なく諦め過ごしていた。
そんな毎日に変化をもたらしたのは、生徒会長就任という出来事だった。
選ばれたことによって僕は生徒会の業務に携わるようになり、必然的に書記であるアンナ・リロレット様と過ごす時間が大幅に増えた。
それが、始まりだった。
((ん……? この感覚は、なんでしょう……?))
生徒会活動が始まって、1か月が過ぎた頃だった。突然アンナ様に妙な懐かしさと愛情を覚え始め、それは時間に比例して大きくなっていった。
((……僕達は入学式で初めてお互いの顔を見て、ちゃんと話すようになったのだって生徒会に入ってから。入ってからも、思い当たるものはなにもないのに……。なのにどうして、こんなにも懐かしさと愛情を抱いているのでしょう……?))
その頃にはすっかりそんな疑問で頭が一杯となり、でもこちらも既視感同様に、答えはでない。
そのため同じく解明を諦め過ごしていた――のだけれど、ひょんなことからその理由を把握することとなった。
「ふぅ、これで終わりですね。アンナ様、お疲れ様でした」
「やっと、終わりましたね。お仕事お疲れ様です、ダヴィッド様」
今思えばそれは、状況と台詞が当時と一致したからなんだと思う。そんな偶然によって僕はかつて自分が経験した全ての出来事を、前世の記憶を思い出したのだった。
((……僕が言語などに既視感があったのは、1度覚えていたから。アンナ様に懐かしさと愛情を覚えるのは、かつて結婚していただったんだ))
マリルス子爵家のアドリアン、レッドル子爵家のサンドラ。僕達は幼馴染として育ち、やがて恋をして結婚をして、85年の幸せな人生を過ごしたのだ。
母国語の勉強や貴族としての勉強。それらに既視感があって、驚くべき速度でそれらの知識を身につけてしまったからだ。
((飲み込みが異常に早いと言われた兄さんの倍以上、一般的な人の4倍以上。これは、神童というレベルを超えている……))
そのため常に自分自身を訝しみ、原因の追究を行い続けてきた。けれどその答えの手がかりすら掴めず、仕方なく諦め過ごしていた。
そんな毎日に変化をもたらしたのは、生徒会長就任という出来事だった。
選ばれたことによって僕は生徒会の業務に携わるようになり、必然的に書記であるアンナ・リロレット様と過ごす時間が大幅に増えた。
それが、始まりだった。
((ん……? この感覚は、なんでしょう……?))
生徒会活動が始まって、1か月が過ぎた頃だった。突然アンナ様に妙な懐かしさと愛情を覚え始め、それは時間に比例して大きくなっていった。
((……僕達は入学式で初めてお互いの顔を見て、ちゃんと話すようになったのだって生徒会に入ってから。入ってからも、思い当たるものはなにもないのに……。なのにどうして、こんなにも懐かしさと愛情を抱いているのでしょう……?))
その頃にはすっかりそんな疑問で頭が一杯となり、でもこちらも既視感同様に、答えはでない。
そのため同じく解明を諦め過ごしていた――のだけれど、ひょんなことからその理由を把握することとなった。
「ふぅ、これで終わりですね。アンナ様、お疲れ様でした」
「やっと、終わりましたね。お仕事お疲れ様です、ダヴィッド様」
今思えばそれは、状況と台詞が当時と一致したからなんだと思う。そんな偶然によって僕はかつて自分が経験した全ての出来事を、前世の記憶を思い出したのだった。
((……僕が言語などに既視感があったのは、1度覚えていたから。アンナ様に懐かしさと愛情を覚えるのは、かつて結婚していただったんだ))
マリルス子爵家のアドリアン、レッドル子爵家のサンドラ。僕達は幼馴染として育ち、やがて恋をして結婚をして、85年の幸せな人生を過ごしたのだ。
28
お気に入りに追加
2,558
あなたにおすすめの小説
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
初恋の君と再婚したい?お好きになさって下さいな
藍田ひびき
恋愛
「マルレーネ。離縁して欲しい」
結婚三年目にして突然、夫であるテオバルト・クランベック伯爵からそう告げられたマルレーネ。
テオバルトにはずっと想い続けている初恋の君がいた。ようやく初恋の女性と再会できた夫は、彼女と再婚したいと述べる。
身勝手な言い分に呆れつつも、マルレーネは離縁を受け入れるが……?
☆コミカライズ版がブシロードワークス様より2025年2月7日発売の「愛さないと言われた令嬢ですが、勝手に幸せになりますのでお構いなく! アンソロジーコミック」に収録されています。
※ なろうにも投稿しています。
婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます
天宮有
恋愛
婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。
家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。
あなたと妹がキモ……恐いので、婚約破棄でOKです。あ、あと慰謝料ください。
百谷シカ
恋愛
「妹が帰って来たので、今日はこれにて。また連絡するよ、ルイゾン」
「えっ? あ……」
婚約中のティボー伯爵令息マルク・バゼーヌが、結婚準備も兼ねた食事会を中座した。
理由は、出戻りした妹フェリシエンヌの涙の乱入。
それからというもの、まったく音沙汰ナシよ。
結婚予定日が迫り連絡してみたら、もう、最悪。
「君には良き姉としてフェリシエンヌを支えてほしい。婿探しを手伝ってくれ」
「お兄様のように素敵な方なんて、この世にいるわけがないわ」
「えっ? あ……ええっ!?」
私はシドニー伯爵令嬢ルイゾン・ジュアン。
婚約者とその妹の仲が良すぎて、若干の悪寒に震えている。
そして。
「あなたなんかにお兄様は渡さないわ!」
「無責任だな。妹の婿候補を連れて来られないなら、君との婚約は破棄させてもらう」
「あー……それで、結構です」
まったく、馬鹿にされたものだわ!
私はフェリシエンヌにあらぬ噂を流され、有責者として婚約を破棄された。
「お兄様を誘惑し、私を侮辱した罪は、すっごく重いんだからね!」
なんと、まさかの慰謝料請求される側。
困った私は、幼馴染のラモー伯爵令息リシャール・サヴァチエに助けを求めた。
彼は宮廷で執政官補佐を務めているから、法律に詳しいはず……
熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。
しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。
「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」
身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。
堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。
数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。
妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。
【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~
暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」
高らかに宣言された婚約破棄の言葉。
ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。
でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか?
2021/7/18
HOTランキング1位 ありがとうございます。
2021/7/20
総合ランキング1位 ありがとうございます
婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。
私と婚約破棄して妹と婚約!? ……そうですか。やって御覧なさい。後悔しても遅いわよ?
百谷シカ
恋愛
地味顔の私じゃなくて、可愛い顔の妹を選んだ伯爵。
だけど私は知っている。妹と結婚したって、不幸になるしかないって事を……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる