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第5話 2度目の来訪と、不思議なこと アンナ視点(2)

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「……ダヴィッド様は、ローズティーがお好きだった……? ……そんな事実は、ありませんよね」

 首を傾げていた私は、出していた仮説をすぐに否定します。
 私達は生徒会を1期務めていて、生徒会メンバーの好みや趣味を把握しています。ダヴィッド様はアールグレイを好まれていて、そちらを準備する予定でした。

「このローズティーは、どこから来たのでしょうか……? 私は今、何をしていたのでしょうか……?」

 考えてみますが、その原因に思い当たる節はありません。ですので、仕方がありませんね。
 思案を止めてアールグレイの準備を行い、お父様とお母様は所用で外出をしなければなりませんので、ダヴィッド様と2人でティータイムが始まりました。

「お待たせいたしました。どうぞ、お召し上がりください」
「はい、いただきますね。…………美味しい。ビスキュイジョコンドとガナッシュ、それにコーヒーバタークリームのバランスが非常によく……。パティシエのようなクオリティーです」

 私は生徒会の会議などに、しばしばお菓子やケーキをお持ちしていました。ですがオペラは性質上長時間の保管が難しく、お出しするのは初めて。そのため不安がありましたが、気に入っていただけたようです。

「本当に、美味しい。いくらでも食べられますね」
「そう仰っていただけて、光栄です。たっぷりとご用意しておりますので、よかったらもっとお召し上がりください」
「……では、遠慮なく。もう1カットいただきますね」

 ダヴィッド様は照れ笑いを浮かべられて、そんなお顔をいただいたので、私も笑顔になって。楽しい時間はあっという間に過ぎてゆき、気が付くと1時間が経過。お帰りになられる時間となりました。

「アンナ様。懐かしいひと時をくださり、ありがとうございました」
「私もあの頃を、思い出しました。こちらこそ、ありがとうございました」

 あれはまだ、学院で生徒会活動をしていた頃のこと。ダヴッド様と私で書類の整理を行っていて、そちらが片付いたあとのことでした。
 こうして2人きりでお菓子やお茶をお供にお喋りをして、楽しかった思い出がよみがえってきました。

「生徒会で過ごした1年。大変なことが沢山ありましたが、楽しいことも沢山ありました」
「…………そうですね。ええ、そうでした」
「? ダヴィッド様? どうかれましたか?」

 お返事までに、十数秒もの空白がありました。何か、あったのでしょうか?

「すみません、なんでもありませんよ。……それでは、失礼致します。明日は間違いなく、お伝えした通りのことが起きますので――お伝えした以外のことは、絶対に起こりませんので。ご安心ください」
「はい。貴方様のご助力により、不安は一切ございません。ダヴィッド様、本日はありがとうございました」

 私は改めて謝罪を行わせていただき、こうして不思議な出来事が発せした時間は終わりを告げました。
 そしてそれから、およそ20時間後。今度は兄のロマニ様がいらっしゃられて――。
 ダヴィッド様考案の作戦が、始まりを告げたのでした。

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