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第2話 知った、から 俯瞰視点(1)
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「カロルお継母もクラリスも、わたしの幸せを徹底的に排除しようとしている。ソレでトドメを刺すつもりだったみたい」
「お互いに愛し合っているのに結婚直前で白紙になって、おまけに貴族籍を失い路頭に迷うことになる。これ以上ない最高の結末だな」
オーバンがアレットのために用意していた、二人だけのお茶会の会場。あのあと二人は2階にあるバルコニーに移動し、テーブルを挟んで言葉を交わしていました。
「カロルはフルールに嫉妬していて、クラリスはアレットに嫉妬している。それは知っていたけど、そこまでするなんてな。フランクさん達には感謝だな」
ベファリース家に長年使える家令フランクや使用人たち。邸内にいる全ての人間がカロルを新たな主の一人とし、ドナルド、カロル、クラリスの言葉にのみ従っていました。
ですがそれは、3人を油断させるための演技だったのです。
――わたくし共の奥様はフルール様のみ――。
――わたくし共が今お慕いするのは、アレット様のみ――。
生前に受けたフルールへの恩や、幼少期のアレットが見せる何気ない優しさ。それらによって全員の心はフルールでありアレットと共にあり、ずっと敵ではなく味方。立場上自分達の意見はどうやっても通らないため3人を欺き、いつも陰でアレットを支えていたのです。
そのため『駒』だと思い込んでいるカロルは『敵』であるフランク達に捏造の協力を命じてしまい、即日悪巧みを悟られてしまっていたのでした。
「捏造に関する協力を指示しているのなら、そこを利用して3人の悪意を白日のもとに晒せる。とは、ならないんだよな?」
「ええ、肝心な部分は自分達で行うらしくて……。フランク達が証拠を手にすることは、できないみたいなの」
カロル達はフランク達を信用していましたが、味方による万が一のうっかりミスを懸念。予期せぬ漏えいを防ぐべく、重要なところは自分達で行うと決めていたのです。
「難しい顔をしてたから、そうだと思った。…………はあ、だったら、少しだけ面倒なことになるな」
「そうなの……。企みは分かっているのに、迂闊に動けなくて――え? すこし、だけ……?」
明らかに厄介な問題なのに、『少しだけ』。おかしな点に気付き、アレットはポカンとした顔を正面に向けました。
「え……。え……? 少し、なの……?」
「そう、少し、なんだよ。なぜなら――」
自分を真っすぐ見ている、品のあるツリ目と雪肌が目を引く、雪ウサギのような顔。オーバンは大切な人へと向け、口の端を吊り上げながらこう続けたのでした。
「――そのふざけた企みを阻止して、アイツらを痛い目に遭わせられる作戦があるんだからな」
「お互いに愛し合っているのに結婚直前で白紙になって、おまけに貴族籍を失い路頭に迷うことになる。これ以上ない最高の結末だな」
オーバンがアレットのために用意していた、二人だけのお茶会の会場。あのあと二人は2階にあるバルコニーに移動し、テーブルを挟んで言葉を交わしていました。
「カロルはフルールに嫉妬していて、クラリスはアレットに嫉妬している。それは知っていたけど、そこまでするなんてな。フランクさん達には感謝だな」
ベファリース家に長年使える家令フランクや使用人たち。邸内にいる全ての人間がカロルを新たな主の一人とし、ドナルド、カロル、クラリスの言葉にのみ従っていました。
ですがそれは、3人を油断させるための演技だったのです。
――わたくし共の奥様はフルール様のみ――。
――わたくし共が今お慕いするのは、アレット様のみ――。
生前に受けたフルールへの恩や、幼少期のアレットが見せる何気ない優しさ。それらによって全員の心はフルールでありアレットと共にあり、ずっと敵ではなく味方。立場上自分達の意見はどうやっても通らないため3人を欺き、いつも陰でアレットを支えていたのです。
そのため『駒』だと思い込んでいるカロルは『敵』であるフランク達に捏造の協力を命じてしまい、即日悪巧みを悟られてしまっていたのでした。
「捏造に関する協力を指示しているのなら、そこを利用して3人の悪意を白日のもとに晒せる。とは、ならないんだよな?」
「ええ、肝心な部分は自分達で行うらしくて……。フランク達が証拠を手にすることは、できないみたいなの」
カロル達はフランク達を信用していましたが、味方による万が一のうっかりミスを懸念。予期せぬ漏えいを防ぐべく、重要なところは自分達で行うと決めていたのです。
「難しい顔をしてたから、そうだと思った。…………はあ、だったら、少しだけ面倒なことになるな」
「そうなの……。企みは分かっているのに、迂闊に動けなくて――え? すこし、だけ……?」
明らかに厄介な問題なのに、『少しだけ』。おかしな点に気付き、アレットはポカンとした顔を正面に向けました。
「え……。え……? 少し、なの……?」
「そう、少し、なんだよ。なぜなら――」
自分を真っすぐ見ている、品のあるツリ目と雪肌が目を引く、雪ウサギのような顔。オーバンは大切な人へと向け、口の端を吊り上げながらこう続けたのでした。
「――そのふざけた企みを阻止して、アイツらを痛い目に遭わせられる作戦があるんだからな」
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