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第9話 そんな……  ドニ&俯瞰視点(4)

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「大バカには、言語が通じるようで通じないからな。これから、あの時とおんなじ――あの日以上のやり方で、話をつける」

 ぐあっ!? 言下背後から押し倒され、大男に組み伏せられてしまった。

「な、なにをするっ!? あの日って! 俺をどうするつもりなのですか!?」
「お前を放っておいたら、何をするか分からない。だから何もできないようにするのさ、力ずくでな」

 ……。ちから、ずく……。

「あの時とは違って、今度は選択肢なんてない。……『諦めないと宣言し、絶望によって屈服させられる』未来。かつて兄さんに提示されたものを、覚えているよな?」
「お……。おぼえて、おり、ます……」
「今回はそこから前半を取り除き、後半を強化する。要するにお前はこれから、この場で消されるんだよ」

 っっ。おもわずゾッとする笑みが浮かび上がり、ひぃぃぃぃぃ!?
 斜め前方にいた大男がぁ!! ナイフを抜いた!!

「こっ、ここここれで刺す!? 切る!? おえを⁉ おっ、おえっ、俺に! つ、つかっ、つか使うつもりなのですか!?」
「このタイミングで出したんだ。そうするに決まっているだろ?」
「こっ、ここここは門前っ、外です!! 敷地内でもお屋敷の中でもないんですよっ⁉ こっ、こんな真似をしたら多くの人間に気付かれますよあちこちで大問題になりますよ!?」
「そのために、すでに人払いをしてある。ここは確かに外だが、実質外じゃない。心配は無用なんだよなぁ」

 ニヤリ――。嗜虐的に口元が緩んで、ぁぁぁぁあ!!
 近づいてくる!! ナイフを持った男が近づいてくる!!

「やっ、やめてくさっ、やめてください!! てっ、手を引くっ! 諦めますからっ!! もうリゼットには――リゼット様には近づきませんから!! お許しを!! お許しおぉぉぉお‼」
「ダメだ。お前はチャンスを逃した。一度逃げたものは、二度と戻ってこないんだよ」

 うあああああああああああああ!! ぎゃあああああああああああああああああああああ‼
 もうしないと言ってるのに止まらない!! ナイフが近づいてきて、だから――する! 必死になって手足をバタつかせる!! 逃げるために抵抗する!!

((このままだとタダでは済まない! それは嫌だ!!))

 大丈夫っ、大丈夫! 俺は土壇場で力を発揮する男なんだっ!!
 そうっ、だから!! 死に物狂いになればこんな拘束なんて――

「こら!! 大人しくしやがれ――しま!?」

 ――こんな拘束なんて、脱出できる!!
 できた!!

「やっ、やった!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「「「「「まっ、待て!! 止まれ!! 止まりやがれ!!」」」」」」

 大男達が慌てて追ってくるが、止まるはずがないっ! 立ち上がった俺は全力疾走で馬車に乗り込み、やったっっ!!
 ヤツらに追いつかれる前に俺を乗せた馬車は走り出し、かろうじて難を逃れることができたのだった!!


 〇〇


「……リアム様。行ってしまいましたね」
「ああ、そうだね。…………ありがとう、お前達。名演技だったよ」

 猛スピードで走り去る馬車を眺めていた、リアム。隣に頷きを返した彼は臣下を労い、その後前方に――ドニに向けて、こう口を動かしのでした。


「殺害なんてものを、愛する人に見せるはずがないだろ? あれは全部嘘で、けれどお前は信じ込んでいる。だとしたら――」






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