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第11話 無駄な努力と、吉報? 俯瞰視点(1)
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「シリル。喉はもう平気?」
「はちみつと薬のおかげで、どうにか大丈夫だよ。声はこのように擦れたままだけど、喋る分には問題ない」
「そう、よかったわ。3人揃わないと、効果が減少してしまうものね」
3つ目の作戦が失敗となった次の日の、午後5時過ぎ。ようやくシリルは復活し、今日も今日とてアンナの自室で顔を突き合わせていました。
彼女達3人がこうして集合しているのは、作戦その4を実行するため。第4弾は全員で行うものなので、こっそりと集まっていたのです。
「ソフィ―、お義母さん、安心してください。俺もちゃんと、予定通りに出来ますよ。ケンカのフリを、ね」
作戦その4は、シリルの作戦の延長。ちょっとしたことが原因で、3人が大ゲンカ。その様子をセリアの侍女に報告させ、『自分のせいで皆悩んでいて、きっとそのストレスが爆発してしまったんだ』と思わせる。そうして他人想いなセリアの心を揺さぶり、部屋から出そうとしていたのです。
「シリル、ママ。ケンカの原因は、ちゃんと覚えてるよね?」
「ええ、当然よ。わたしとシリルさんが、ソフィ―を無視してしまった」
「それはセリアのことを考えていたからで、俺たちはつい『うるさいな』と言ってしまう。そして――」
「同じくらいお姉ちゃんが心配で心配で、ストレスが溜まっていたソレにあたしはカッとなって叫ぶ。しかもそれだけじゃ収まらなくって、取っ組み合いのけんかを始めちゃう」
「そうやって大声や大きな物音を出し続けて、2階にいるあの女が気にするようにする。そしてどうしたのかを聞きたくなって、侍女に尋ねて教える。そうすれば、」
「「「大成功」」」
ソフィ―、アンナ、シリル、もう一度ソフィ―、アンナの順に口を動かし、最後は3人でユニゾン。ニヤリとした腹黒い笑みが3つ作られて、最終確認は終わりました。
「うんうんバッチリ。それじゃ~、はじめよっ」
「そうね。……ソフィ―、シリルさん、もうあとはないわ。今日はお互い我慢をして、本気で行いましょう」
「はい、そうですね。とても悲しいことですが、全力でやりましょう」
大声や物音に少しでも違和感があれば、演技と思われ失敗する可能性があります。そこで彼らは、本当にケンカを行うことにしました。
本気で掴み合ったり突き飛ばしたりして、暴れることになっているのです。
「ソフィ―、お義母さん。努力の先には、幸せがある。力を合わせてつかみ取りましょう!」
「努力は報われる、だもんねっ。がんばろ~っ」
「これが済めば、全員の邪魔者は消える。行きましょう……!」
3人は大きく頷き合い、階段のすぐそば――セリアに音が聞こえやすいエリアに移動し、いよいよ始まります。
実際には何の効果ももたらさない、無駄に体を張るお芝居が――。
「はちみつと薬のおかげで、どうにか大丈夫だよ。声はこのように擦れたままだけど、喋る分には問題ない」
「そう、よかったわ。3人揃わないと、効果が減少してしまうものね」
3つ目の作戦が失敗となった次の日の、午後5時過ぎ。ようやくシリルは復活し、今日も今日とてアンナの自室で顔を突き合わせていました。
彼女達3人がこうして集合しているのは、作戦その4を実行するため。第4弾は全員で行うものなので、こっそりと集まっていたのです。
「ソフィ―、お義母さん、安心してください。俺もちゃんと、予定通りに出来ますよ。ケンカのフリを、ね」
作戦その4は、シリルの作戦の延長。ちょっとしたことが原因で、3人が大ゲンカ。その様子をセリアの侍女に報告させ、『自分のせいで皆悩んでいて、きっとそのストレスが爆発してしまったんだ』と思わせる。そうして他人想いなセリアの心を揺さぶり、部屋から出そうとしていたのです。
「シリル、ママ。ケンカの原因は、ちゃんと覚えてるよね?」
「ええ、当然よ。わたしとシリルさんが、ソフィ―を無視してしまった」
「それはセリアのことを考えていたからで、俺たちはつい『うるさいな』と言ってしまう。そして――」
「同じくらいお姉ちゃんが心配で心配で、ストレスが溜まっていたソレにあたしはカッとなって叫ぶ。しかもそれだけじゃ収まらなくって、取っ組み合いのけんかを始めちゃう」
「そうやって大声や大きな物音を出し続けて、2階にいるあの女が気にするようにする。そしてどうしたのかを聞きたくなって、侍女に尋ねて教える。そうすれば、」
「「「大成功」」」
ソフィ―、アンナ、シリル、もう一度ソフィ―、アンナの順に口を動かし、最後は3人でユニゾン。ニヤリとした腹黒い笑みが3つ作られて、最終確認は終わりました。
「うんうんバッチリ。それじゃ~、はじめよっ」
「そうね。……ソフィ―、シリルさん、もうあとはないわ。今日はお互い我慢をして、本気で行いましょう」
「はい、そうですね。とても悲しいことですが、全力でやりましょう」
大声や物音に少しでも違和感があれば、演技と思われ失敗する可能性があります。そこで彼らは、本当にケンカを行うことにしました。
本気で掴み合ったり突き飛ばしたりして、暴れることになっているのです。
「ソフィ―、お義母さん。努力の先には、幸せがある。力を合わせてつかみ取りましょう!」
「努力は報われる、だもんねっ。がんばろ~っ」
「これが済めば、全員の邪魔者は消える。行きましょう……!」
3人は大きく頷き合い、階段のすぐそば――セリアに音が聞こえやすいエリアに移動し、いよいよ始まります。
実際には何の効果ももたらさない、無駄に体を張るお芝居が――。
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