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第7話 アンナが寝込んだ日の、夜の話~2度目の来訪~ セリア視点(2)
しおりを挟む(――以上が、俺の中にある手段だ。セリアから見て、この策はどうだ?)
(どこにも、隙がありません。素晴らしい策だと思います……!)
パチンと指が鳴ってから、5~6分後。詳しい説明を聞いた私は、間髪いれず首を縦に振った。
どこにも、失敗する余地がない。成功率100%と、言い切れてしまうほどの内容だった。
(たった今、事情をお伝えしたばかりなのに……。すごい……)
(侯爵家の悲しい宿命、というものだな。表向きは低姿勢、裏では破滅や失脚を企んでいる、周りはそういう人間だらけ。『家』と自分の身を守れるよう、幼少期からその手の対策を叩き込まれているだけさ)
周囲の笑顔は仮面で、いつも嘘。友人はおろか、親族さえも信用できない。
この国の上位貴族は予想以上に腹が黒く、ファルラン様はそういった教育を長年受けてきたそう。
(それに。実は一番楽な相手というのは、嵌めようとしてきている輩なんだよ)
(そう、なのですか……? なぜなのでしょう……?)
(悪意を証明するために必要なモノを、敵自らが用意してくれるからだ。そういった証拠は、通常なかなか手に入らない。だが何かを仕掛けるのであれば、その際は必ず尻尾が出ている。こちらは、そこを掴めばいいだけなのさ)
確かに、仰る通りだ。
相手が、相手を倒すのに必要なものを用意してくれる。実際に動いてくる敵は厄介だけど、やりやすくもある。
(そして――。今回は逆行によって敵側の本心魂胆を把握できていて、被害を受ける心配もない。勝利を確信し暴露したおかげで、奴らはもはや操り人形だ)
ファルラン様は嘲笑を浮かべ、今度は室内にある掛け時計を一瞥。「あと少しか」と呟き、視線を私へと戻された。
(その準備は、あと4日――今日を含めて3日もあれば、整えられる。今のセリアなら、それまでやり過ごすことは)
(はい、可能です。むしろ私としては、そちらの日程は好都合でございます)
明日はきっと、シリル仕掛けてくる日。あの人にも逆行前はお世話になっているから、返り討ちにしておきたい。
(ああ、確かにそれは好都合だ。では決行は、3日後。明日は準備で夜は潰れるため、そうだな……。次は、明後日。決行前日のこの時間に、最終確認を行いに来るとしよう)
(アルフォンス様、よろしくお願いいたします。でしたら私は2日後の夜に、3人に持ちかけておけばよろしいのですね?)
そうやって私達は作戦の細部を確認し合い、抜かりがないようにキッチリと行ったため、十数分ほど費やしてお仕舞い。そうしていると前夜のように窓の外から、従者さんの合図が――パンという音が、聞こえてきた。
なので、お帰りになられる――? お帰りになられると思っていたら、まだ立ち上がらない。どうされたんだろう……?
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