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「新郎新婦の入場です。皆様、大きな拍手でお迎えください」
正午。白いタキシード姿のヴィクトル様、そして純白のウェディングドレスを纏った私は、城内にある今まで使用されていなかった一室――かつてヴィクトル様の私室だった場所に、揃って足を踏み入れました。
ここは私達が初めてデートをした場所であり、私達がハルトさんと最も長く過ごした場所。私達にとっても、私達とハルトさんにとっても、思い出の場所です。
「サーヤ、ライナス君、おめでとう~っ。カッコよくて綺麗よ~っ」
「「「「「ご先祖様の式に、立ち会えるなんて……っ。光栄でございます……!」」」」」
「「「ミリヤ様っ、ヴィクトル様っ。おめでとうございます……っ!」」」
お母様とお父様を始めとした両家の家族と、王太子殿下などの王族の方々、リブロン会の皆さん。そして2つのロザリオが置かれたイス――ハルトさんに見守られ、私達はお部屋の最奥へと移動。特製ヴァージンロードの先で待っていた国王陛下に、揃って一礼をしました。
私達は公爵家と伯爵家の子供であり、王族関係者でもあります。そのため今回の式は、貴族と王族の式を半分ずつ合わせたもの。
そのため進行役の方が居て、王族のトップが神父様の代わりをしてくださいます。
「先祖様の式を、仕切る日が来るとは。実に不思議な感覚でございます」
祭壇にいらっしゃる陛下は微苦笑を浮かべ、こほんと咳払いを一つ。そうして私達の、結婚の儀が始まりました。
「新郎、ライナスでありヴィクトル。新婦、サーヤでありミリヤ。お歴々へ、御報告を」
「「はい。……皆様。我々は本日、夫婦となります」」
揃って、斜め右へと向けて――王の間にある歴代国王夫婦の肖像画に向けて、深く一礼。その中には勿論、ヴィクトル様のお父様とお母様もいらっしゃって。ヴィクトル様は父親と母親に、私は義父と義母になるはずだった方にご挨拶をして、現陛下へと向き直ります。
「では。そんな二人に対し、改めて確認を行う。……新郎、ヴィクトル」
「はい」
「貴男はいかなる時も、彼女を――ミリヤを。愛し、敬い、慈しむ事を、誓えますか?」
「はい。僕は生涯、誓います」
「……新婦、ミリヤ。貴女は、彼――ヴィクトルを。愛し、敬い、慈しむ事を、誓えますか?」
「はい。私は生涯、誓います」
私達ははっきりと答え、そうしたあとは陛下に促されて静かに向かい合う。
この結婚の儀は全3工程で、次が最後。誓いのキスとなりました。
「ミリー。失礼します」
「はい。お願いします」
ヴィクトル様によって優しくベールアップが行われ、両肩の少し下の辺りにそっと、手が添えられます。
でも、口づけはまだ。その前に、私達は微笑み合います。
「……ミリー。やっと、できるね」
「……そうですね。ヴィクトル様。やっと、です」
誓いのキスを交わした瞬間、私達は夫婦となります。
それは、あの頃からの夢で……。お互いの瞳には、自然と涙が生まれていました。
「僕はもう二度と、約束を違えない。今度こそ、ずっと君を守り、幸せにするよ」
「……貴方はすでに私を救ってくださり、実現してくださっています。…………こんなにも信用できる言葉は、ありません」
「…………そっか。……ミリー。これからも、よろしくお願いします」
「ヴィクトル様、こちらこそよろしくお願い致します。再び二人で一緒に、たくさん思い出を作っていきましょう……っ」
そうして私達はゆっくりと、幸せを噛み締めながら、キスを交わす。
口づけは、これまで――前世から何度も経験したもののはずなのに、別物のよう。お互いの柔らかさ、温もり、香りが、何よりも愛おしくて……。
初めてじゃないのに、初めてのよう。
「これが、誓いのキス……。君と共に経験できて、幸せだよ」
「私もです……っ。幸せです……っ」
私達は大きな拍手の中で前世では感じられなかったものを感じ合い、改めて微笑み合い、抱き締め合う。こうして世にも珍しい形式で執り行われた式は幕を閉じ、そうして――。
あの時から、153年。私とヴィクトル様は長い時を経て、夫婦となったのでした。
正午。白いタキシード姿のヴィクトル様、そして純白のウェディングドレスを纏った私は、城内にある今まで使用されていなかった一室――かつてヴィクトル様の私室だった場所に、揃って足を踏み入れました。
ここは私達が初めてデートをした場所であり、私達がハルトさんと最も長く過ごした場所。私達にとっても、私達とハルトさんにとっても、思い出の場所です。
「サーヤ、ライナス君、おめでとう~っ。カッコよくて綺麗よ~っ」
「「「「「ご先祖様の式に、立ち会えるなんて……っ。光栄でございます……!」」」」」
「「「ミリヤ様っ、ヴィクトル様っ。おめでとうございます……っ!」」」
お母様とお父様を始めとした両家の家族と、王太子殿下などの王族の方々、リブロン会の皆さん。そして2つのロザリオが置かれたイス――ハルトさんに見守られ、私達はお部屋の最奥へと移動。特製ヴァージンロードの先で待っていた国王陛下に、揃って一礼をしました。
私達は公爵家と伯爵家の子供であり、王族関係者でもあります。そのため今回の式は、貴族と王族の式を半分ずつ合わせたもの。
そのため進行役の方が居て、王族のトップが神父様の代わりをしてくださいます。
「先祖様の式を、仕切る日が来るとは。実に不思議な感覚でございます」
祭壇にいらっしゃる陛下は微苦笑を浮かべ、こほんと咳払いを一つ。そうして私達の、結婚の儀が始まりました。
「新郎、ライナスでありヴィクトル。新婦、サーヤでありミリヤ。お歴々へ、御報告を」
「「はい。……皆様。我々は本日、夫婦となります」」
揃って、斜め右へと向けて――王の間にある歴代国王夫婦の肖像画に向けて、深く一礼。その中には勿論、ヴィクトル様のお父様とお母様もいらっしゃって。ヴィクトル様は父親と母親に、私は義父と義母になるはずだった方にご挨拶をして、現陛下へと向き直ります。
「では。そんな二人に対し、改めて確認を行う。……新郎、ヴィクトル」
「はい」
「貴男はいかなる時も、彼女を――ミリヤを。愛し、敬い、慈しむ事を、誓えますか?」
「はい。僕は生涯、誓います」
「……新婦、ミリヤ。貴女は、彼――ヴィクトルを。愛し、敬い、慈しむ事を、誓えますか?」
「はい。私は生涯、誓います」
私達ははっきりと答え、そうしたあとは陛下に促されて静かに向かい合う。
この結婚の儀は全3工程で、次が最後。誓いのキスとなりました。
「ミリー。失礼します」
「はい。お願いします」
ヴィクトル様によって優しくベールアップが行われ、両肩の少し下の辺りにそっと、手が添えられます。
でも、口づけはまだ。その前に、私達は微笑み合います。
「……ミリー。やっと、できるね」
「……そうですね。ヴィクトル様。やっと、です」
誓いのキスを交わした瞬間、私達は夫婦となります。
それは、あの頃からの夢で……。お互いの瞳には、自然と涙が生まれていました。
「僕はもう二度と、約束を違えない。今度こそ、ずっと君を守り、幸せにするよ」
「……貴方はすでに私を救ってくださり、実現してくださっています。…………こんなにも信用できる言葉は、ありません」
「…………そっか。……ミリー。これからも、よろしくお願いします」
「ヴィクトル様、こちらこそよろしくお願い致します。再び二人で一緒に、たくさん思い出を作っていきましょう……っ」
そうして私達はゆっくりと、幸せを噛み締めながら、キスを交わす。
口づけは、これまで――前世から何度も経験したもののはずなのに、別物のよう。お互いの柔らかさ、温もり、香りが、何よりも愛おしくて……。
初めてじゃないのに、初めてのよう。
「これが、誓いのキス……。君と共に経験できて、幸せだよ」
「私もです……っ。幸せです……っ」
私達は大きな拍手の中で前世では感じられなかったものを感じ合い、改めて微笑み合い、抱き締め合う。こうして世にも珍しい形式で執り行われた式は幕を閉じ、そうして――。
あの時から、153年。私とヴィクトル様は長い時を経て、夫婦となったのでした。
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