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第6話 移動した、その先で ~不思議なこと~ アルマ視点(1)
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「ようやく終わったね。お疲れ様、アルマ」
「こちらこそ、お疲れ様。手伝ってくれてありがとう」
殿下達のもとを去ってから、およそ14時間後。わたしはソル神殿の一室――今日から聖女の部屋となる一室で、マイユールと労をねぎらい合っていた。
移動を行って神殿に着いて、神殿長様達にご挨拶と急な転属のお詫びをして、その後荷物の設置など引っ越し作業を行った。
その際にマイユールは率先してくれて動いてくれて、とても助かったのです。
「アルマ、こちらこそのこちらこそ。手伝わせてくれて、ありがとう。……僕にできることは限られているからね。大切な人の力になれて嬉しいよ」
「マイユール……。わたしも、嬉しい。とっても幸せ」
大切な人にそんな風に言ってもらえて、そう感じないはずがない。自然と頬が大きく緩んで、私達は笑い合った。
「今まではなかなかできなかったけど、今はもう何もない。これからまた色々関わらせてもらうから、よろしくお願いします」
「はい、また色々関わってください。よろしくお願いします」
殿下と婚約関係にある以上、幼馴染とはいえ異性が頻繁に傍にいたら何かと問題が出てくる。対国外目線でも、あまりよろしくはない。
なので遠慮をしてくれていたけれど、もうその必要はないものね。これからは新しいやり方で、新しい形で、聖女として生きてゆく。
「その一環として、色々と考えていることもあるの。それにはマイユールの力も必要になると思うから、その時は頼むわね」
「うん、任せておいて。ずっと力を貯めていたから、それを使える時が来てくれて――? アルマ? どうかした?」
「ぁ、話してる途中なのにごめんなさい。急に身体に、不思議な感覚が走ったの」
つい意識が他に向いていたのは、違和感があったせい。
突然……なんというか……。言葉で表しにくくて……。
「強めのドクン、て言ったらいいのかしら。身体の中心が、弾んだような……? とにかく経験のないことが起きてたの」
「……そう、なんだ。今はどう?」
「そんな風になったのは一回だけで、今はもうないわ。……とても奇妙なものの、悪い――悪影響のある感じではなかった。だからたぶん、気にしなくてもいいと思う――ひあっつ!?」
右手を左右に動かしながら微苦笑を浮かべていたわたしは、座っていた椅子から落っこちてしまいそうになった。
なぜならば――
「だ、誰……!?」
――いつの間にか……。部屋の扉の前に、見知らぬ女性が立っていたのだから。
「こちらこそ、お疲れ様。手伝ってくれてありがとう」
殿下達のもとを去ってから、およそ14時間後。わたしはソル神殿の一室――今日から聖女の部屋となる一室で、マイユールと労をねぎらい合っていた。
移動を行って神殿に着いて、神殿長様達にご挨拶と急な転属のお詫びをして、その後荷物の設置など引っ越し作業を行った。
その際にマイユールは率先してくれて動いてくれて、とても助かったのです。
「アルマ、こちらこそのこちらこそ。手伝わせてくれて、ありがとう。……僕にできることは限られているからね。大切な人の力になれて嬉しいよ」
「マイユール……。わたしも、嬉しい。とっても幸せ」
大切な人にそんな風に言ってもらえて、そう感じないはずがない。自然と頬が大きく緩んで、私達は笑い合った。
「今まではなかなかできなかったけど、今はもう何もない。これからまた色々関わらせてもらうから、よろしくお願いします」
「はい、また色々関わってください。よろしくお願いします」
殿下と婚約関係にある以上、幼馴染とはいえ異性が頻繁に傍にいたら何かと問題が出てくる。対国外目線でも、あまりよろしくはない。
なので遠慮をしてくれていたけれど、もうその必要はないものね。これからは新しいやり方で、新しい形で、聖女として生きてゆく。
「その一環として、色々と考えていることもあるの。それにはマイユールの力も必要になると思うから、その時は頼むわね」
「うん、任せておいて。ずっと力を貯めていたから、それを使える時が来てくれて――? アルマ? どうかした?」
「ぁ、話してる途中なのにごめんなさい。急に身体に、不思議な感覚が走ったの」
つい意識が他に向いていたのは、違和感があったせい。
突然……なんというか……。言葉で表しにくくて……。
「強めのドクン、て言ったらいいのかしら。身体の中心が、弾んだような……? とにかく経験のないことが起きてたの」
「……そう、なんだ。今はどう?」
「そんな風になったのは一回だけで、今はもうないわ。……とても奇妙なものの、悪い――悪影響のある感じではなかった。だからたぶん、気にしなくてもいいと思う――ひあっつ!?」
右手を左右に動かしながら微苦笑を浮かべていたわたしは、座っていた椅子から落っこちてしまいそうになった。
なぜならば――
「だ、誰……!?」
――いつの間にか……。部屋の扉の前に、見知らぬ女性が立っていたのだから。
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