上 下
11 / 34

第6話 移動した、その先で ~不思議なこと~ アルマ視点(1)

しおりを挟む
「ようやく終わったね。お疲れ様、アルマ」
「こちらこそ、お疲れ様。手伝ってくれてありがとう」

 殿下達のもとを去ってから、およそ14時間後。わたしはソル神殿の一室――今日から聖女の部屋となる一室で、マイユールと労をねぎらい合っていた。

 移動を行って神殿に着いて、神殿長様達にご挨拶と急な転属のお詫びをして、その後荷物の設置など引っ越し作業を行った。
 その際にマイユールは率先してくれて動いてくれて、とても助かったのです。

「アルマ、こちらこそのこちらこそ。手伝わせてくれて、ありがとう。……僕にできることは限られているからね。大切な人の力になれて嬉しいよ」
「マイユール……。わたしも、嬉しい。とっても幸せ」

 大切な人にそんな風に言ってもらえて、そう感じないはずがない。自然と頬が大きく緩んで、私達は笑い合った。

「今まではなかなかできなかったけど、今はもう何もない。これからまた色々関わらせてもらうから、よろしくお願いします」
「はい、また色々関わってください。よろしくお願いします」

 殿下と婚約関係にある以上、幼馴染とはいえ異性が頻繁に傍にいたら何かと問題が出てくる。対国外目線でも、あまりよろしくはない。
 なので遠慮をしてくれていたけれど、もうその必要はないものね。これからは新しいやり方で、新しい形で、聖女として生きてゆく。

「その一環として、色々と考えていることもあるの。それにはマイユールの力も必要になると思うから、その時は頼むわね」
「うん、任せておいて。ずっと力を貯めていたから、それを使える時が来てくれて――? アルマ? どうかした?」
「ぁ、話してる途中なのにごめんなさい。急に身体に、不思議な感覚が走ったの」

 つい意識が他に向いていたのは、違和感があったせい。
 突然……なんというか……。言葉で表しにくくて……。

「強めのドクン、て言ったらいいのかしら。身体の中心が、弾んだような……? とにかく経験のないことが起きてたの」
「……そう、なんだ。今はどう?」
「そんな風になったのは一回だけで、今はもうないわ。……とても奇妙なものの、悪い――悪影響のある感じではなかった。だからたぶん、気にしなくてもいいと思う――ひあっつ!?」

 右手を左右に動かしながら微苦笑を浮かべていたわたしは、座っていた椅子から落っこちてしまいそうになった。
 なぜならば――

「だ、誰……!?」

 ――いつの間にか……。部屋の扉の前に、見知らぬ女性が立っていたのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

【完結】王女と駆け落ちした元旦那が二年後に帰ってきた〜謝罪すると思いきや、聖女になったお前と僕らの赤ん坊を育てたい?こんなに馬鹿だったかしら

冬月光輝
恋愛
侯爵家の令嬢、エリスの夫であるロバートは伯爵家の長男にして、デルバニア王国の第二王女アイリーンの幼馴染だった。 アイリーンは隣国の王子であるアルフォンスと婚約しているが、婚姻の儀式の当日にロバートと共に行方を眩ませてしまう。 国際規模の婚約破棄事件の裏で失意に沈むエリスだったが、同じ境遇のアルフォンスとお互いに励まし合い、元々魔法の素養があったので環境を変えようと修行をして聖女となり、王国でも重宝される存在となった。 ロバートたちが蒸発して二年後のある日、突然エリスの前に元夫が現れる。 エリスは激怒して謝罪を求めたが、彼は「アイリーンと自分の赤子を三人で育てよう」と斜め上のことを言い出した。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」 物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。 ★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位 2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位 2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位 2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位 2023/01/08……完結

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

駒として無能なお前は追放する?ええ、どうぞ?けど、聖女の私が一番権力を持っているんですが?

水垣するめ
恋愛
主人公エミリー・ヘミングスは男爵家の令嬢として生まれた。 しかし、父のトーマスから聖女として働くことを強制される。 聖女という地位には大きな権力と名声、そして金が入ってくるからだ。 エミリーは朝から晩まで働かされ、屋敷からも隔離され汚い小屋で暮すことを強要される。 一度駒として働くことが嫌になってトーマスに「聖女をやめたいです……」と言ったが、「駒が口答えするなっ!」と気絶しそうになるぐらいまで殴られた。 次に逆らえば家から追放するとまでいわれた。 それからエミリーは聖女をやめることも出来ずに日々を過ごしてきた。 しかしエミリーは諦めなかった。 強制的に働かされてきた聖女の権力を使い、毒親へと反撃することを決意する。

処理中です...