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第3話 予想外 ロマーヌ視点(1)

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「……………………きょ、きょぎ? 虚偽っ!? とんでもありませんわっ!! 虚偽などではありませんわ!!」

 頭が固まってしまって、十秒くらいポカンとしていたあと。ようやく理解が追いついた瞬間首を大きく左右に振り、お腹の底から声を張り上げた。

「今――さっきの説明に関してもっ、真実しか申し上げておりませんわっ! 嘘などどこにもありませんわっ!」
「ふぅん。マリエスが被害妄想に囚われていて、それによって激昂して去り際に突き落とされてしまった。それは事実なんだな?」
「もちろんですわっ。紛れもない事実ですわっ!」
「そうか。だったら『指紋をつけてくれてありがとう』や『マリエスを加害者にして自分を被害者にしようとしている』と口にしたというのは、事実ではないんだな?」
「ええっ、ええっ! 事実ではありませんわっ! …………ジョルジュ様。お気持ちは痛い程に分かりますわ」

 即座の否定を繰り返したわたくしは、寂しげにポツリと呟く。

「大切な方を信じたい――。認めたくない――。わたくしがもし貴方様の立場なら、最愛の方が罪を犯してしまったのなら、そうしてしまうと思いますわ。ですが、違いますの……」
「……………………」
「制服の背部に付着している指紋が、何よりの証拠ですわ。……わたくしが去ろうとした際に、後ろから思い切り押された……。そちらは、その際以外には付きようのないものでして――」
「いいや、そうじゃない。それ以外の方法でもつけることはできるだろ? 触ってくれと頼めばな」

 ジョルジュ様はマリエスの言い分を、信じ切ってしまっている。
 でも、そうなる可能性はちゃ~んと想定済みですわ。だからわたくしは、用意しておいた台詞を――

「これからその証拠を、お前にも見せてやるよ」

 ――用意しておいた台詞を出そうとしていたら、ジョルジュ様がおかしなことを言い出しましたわ。
 証拠を、見せる? ……この方は、何を仰っていますの?

「あの場面の目撃者はいませんし…………そもそも、わたくしは何もしていないんですもの。そんな証拠なんて、どこにもありませんわ」
「そう思うだろ? じゃあ、これを見てもらおうか」

 パチン。ジョルジュ様は右手を頭上に掲げ、強く指を鳴らした。
 そうすると――っっ!? この方の頭上にどこからともなく虹色の光が表れ、それが集まって1枚の鏡になって――

《お待たせいたしました、ロマーヌ様》

 ――そこからマリエスの声が響き始めたあと、鏡面にわたくしの姿が映ったのだった……!!

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