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第6話 始まりと、予想外 クレア視点(1)

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「ダリア・エリテラット、ファビオ・オキユテ。御足労感謝する。……ところで……。君は、やけにふらふらしているね? どこか調子が悪いのかい?」

 午前11時ちょうど。私達は到着した2人に挨拶を行っていて、それをご覧になられていたマリアス様は首を傾げられた。
 今日のファビオ様は目の下にうっすらクマが出来て、随分とお顔が疲れている。これは多分――

「はっ、はいっ! 問題はございません! 昨夜はダリア様に、その……。浮気に関する謝罪を、遅くまで行っておりまして……。それによる罪悪感で、一睡もできていないだけなのでございます……」

 ――それは、嘘。今日の聴取を乗り切れるように、不眠不休で情報を叩き込んでいたからだと思う。

「ああ、そうだったんだね。睡眠不足が原因なら、心配は要らなさそうだ」(思っていた通りに動いたね)
(はい。予想通りですね)

 2人は今日を乗り越えないと大変なことになってしまうから、やり過ごす対策を練ってくると確信していた。そのため私達は小声でそんなやり取りを行い、早速――。マリアス様は、そんな対策に対する対策を始められた。

「じゃあ、始めるとしよう。俺はこれから、数点質問をする。現地を見ながら質問をしてゆくから、君達は間髪入れずに答えて欲しい」
「「か、かんぱついれず、ですか……?」」
「ああ、間髪入れず。……この中の誰かが嘘を吐いているのは明白で、嘘を吐いていないのなら迷わず応えられるはずだからね。クレアには昨夜および先ほども行っていて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、次は君達の番なんだよ」
「「っっ!!」」

 その台詞を聞いた途端に、二人の表情が強張った。なぜならそれは、『私は即答できた』を表すものだから。自分達もそうしないと、怪しまれてしまうと知ってしまったから。

「ん? お二人とも、どうしたのかな? 少し様子が変だよ?」
「きっ、気のせいでございますわっ!! わたくしにっ、おかしな点などございませんわっ!」
「わたしもっ、何一つございませんっ! 気のせい、ではないでしょうかっ?」
「……どうやら、そうみたいだね。では始めさせて――いけない、もう一つ伝え忘れていたよ」

 マリアス様が自嘲のため息を吐き、肩を竦められた直後だった。門の前には2台の馬車が停まり、門番の方の誘導で敷地内へと入ってきた。

 はじめに行う対策の対策は、一つだけではない。実はもう一つあって、それは――

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