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第11話 ロティナのその後 俯瞰視点(1)

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「ロティナよ、よく正気に戻ってくれた。父は嬉しいぞ」
「お父様、その話は何度もお聞きしましたわ。でも、そうですわね。ちゃんと気が付くことができて、わたしとしても良い出来事でした」

 シモンと縁を切ってから、1か月と3日が過ぎた日。メイダルン侯爵家邸の執務室では、ロティナと父グレンが紅茶片手に笑い合っていました。
 グレンは子爵家の血下級の血が混ざらなくなったことが、よほど嬉しかったのでしょう。決別した日からずっと上機嫌で、休憩時間には頻繁に、娘を招いてこの手の話をしていたのでした。

「冷静になってみたら、おかしなことでしたわ。顔も性格も知っているのに急に格好よく感じるようになって、圧倒的な格下なのに魅力的に映るなんて。こんなの、本来のわたしじゃありませんわ」
「うむ、その通りだ。お前が脅迫を使ってまで我を通そうとした時は、心底肝が冷えたが――。目を覚ましてくれて一安心だ」
「お父様が仰っていたことは、正解でした。これからは行動する前に意見を伺って、同時に広い視点で物事を見るようにしますわ」

 2人は揃ってラングドシャクッキーを齧り、仲良くケラケラと笑います。そうして引き続きそんな話題で盛り上がり、次の話題が終わると、「そうだ」とグレンが1枚の紙を取り出しました。

「さっき入った情報なのだが、ハヌエ家で当主の交代があったそうだ。前当主および当主一家はハヌエ邸を去り、近々弟および弟一家が移るらしい」
「まあ、そうなんですのね。理由はなんなのかしら……?」
「息子シモンの悪評が広がりすぎたらしい。どうやら随分と調子乗って、様々なことを言い回っていたようだ。持たぬ者が持ったつもりになり、増長していたのだろうな」
「わたしが思っていた以上に、威張っていたんですのね。それはシモンの性質なのでしょうか? それとも、下々特有の性質なのでしょうかね?」
「どちらも、だろうな。下級特有の乞食精神と醜い自己顕示欲、それらが合わさってのことだろう。ますます、あの男との決別は正解だったよ」
「ですわね。こうして間違いを正せたことですし、そろそろわたしも、新たな恋を探してみることにしましょう」

 ちょうど先日の夜会で、お眼鏡に叶う・・・・・・相手を見つけていました。そのため、その人ことフェリフタス公爵家の次男テトスの顔を思い浮かべ――

「旦那様! 大変でございます!!」

 ――思い浮かべていた、その時でした。執務室の扉が勢いよく開き、この家の家令・ジュールが飛び込んできました。

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