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第3話 ウィリアム編2日目 日常と、非日常? 俯瞰視点(3)

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「………………………………………………」

 高級素材で作られたスリッパを履いたまま飛び出した、ウィリアム。その後無我夢中で門の外へと出た彼は、間抜けに口を開けて言葉を失っていました。
 彼がそんな状態になった理由は、

 誰もいなかったから。

 360度見回しても人はおらず、やって来ることもない。必死に耳を澄ませても、話し声はおろか物音さえもしない。
 外も、邸内と同じ状況だったのです。

「う、嘘だよな……? 違う、よな……? どこかには、いるよな……? 偶々。偶然。奇跡的に……っ。この周辺に、いないだけ、だよな……?」

 残念ながら、それは間違い。

「おーいっ!! おーいっっ!! おーいっっっ!! 誰かっ!! 誰かいないのかっ!!」

 死に物狂いで走り回っても、発見できず。

「おっ、俺は侯爵家の人間だ!! 一番先に視界内に現れた者には何でも欲しいものをやるぞっ!! 金でも土地でもいいっ!! 女でも男でもっ、なんでもやろうっ!! 平民ならば喉から手が出るほど欲しいだろうっ!? 欲しいなら出てこいっ!!」

 物で釣ろうとしても、発見できず。

「おっ、おいっ!! 自分達の家が、壊されているんだぞっ!! じっとしてていいのかっっ!? 大変なことになってゆくぞっ!? でっ、出てきて俺を止めた方がいいぞっ!!」

 庭に侵入し石をぶつけて窓ガラスを割っても、発見できず。
 ウィリアムはおよそ1時間遮二無二動き回りましたが、鳥や虫すらも見つけられませんでした。

「は、ははは……。はははははは……。そんな……。どこにも……。誰も、いない……」

 この世にいるのは、自分だけ。ついに認識をした彼は膝から崩れ落ち、青天を見上げて力なく笑います。

「ははははは……。ははははは……。ははははは……。ははははは……」

 返事をしてくれる事はなく、近づく事もできない雲。自分以外で唯一の動く存在に乾いた笑みを向け続け、不意に「そうだ!」と大きな声を発しました。

「そうだ、そうだった。そうだ! 物は考えようだ。誰もいないのであれば、全ては俺の物じゃないか! そこにある家も、そっちの家も、土地も、施設も、大公の豪邸も、王族の城もっ! この世界だって! 全部俺の物だ!!」

 ウィリアム・オーレスはこの世の支配者となったのだっ!! あははははっ! あははははははっ!! いいぞっ!! いいぞぉぉっ!!――。
 大きく両手を広げて快哉を叫び、けれど、そんな喜びは長くは続きません。それは所詮、強がり。現実逃避です。

「なぜだぁぁあああああああああああ!! なぜだれもいないんだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 この世でたった1人。尋常ではない孤独に耐えられなくなり、ウィリアムは絶叫。

「どうしてなんだぁあああああああああああああああああああ!! どうしてなんだよぉぉおおおおおぉおおおおおおおおおぉぉおぉおおおおおお!!」

 彼は喉が裂けそうになる程のボリュームで奇声を発しながら頭を掻きむしり、

「どうして俺がぁっ! 何一つ悪いことをしていない俺がぁっ・・・・・・・・・・・・・・・・・! こんなめにあわないといけないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――!? ぃ、ぃぃ…………」

 恐怖と絶望が精神の許容範囲を超えてしまい、泡を吹いて失神してしまったのでした。
 そして、彼は――
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