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第7話 追放されてから一週間後~2つの嬉しいことと、1つの不思議なこと~ リリアーヌ視点(1)
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「お姉様っ、こうやるのですわっ。こう! こうですわっ!」
「は、はいマノンちゃんっ。こっ、こうですかっ?」
「ええそうですわっ! さすがお姉様っ。呑み込みが早いですわっ!」
レヴィテット家でお世話になり始めてから、一週間後。皆様のおかげでずっと幸せな時間を過ごすことができていて、今日はマノンちゃんと一緒にお料理を作っていました。
「フライパンを上手く扱うコツは、手首――細かなスナップと、右手で行う『トントン』ですのっ。そちらを意識していれば、上手にオムレツを作れますわ」
「な、なるほど……。先生、勉強になります……!」
マノンちゃんは『お料理』と『ピアノ』など、わたしは『裁縫』と『絵画』などが得意で、共通な特技はありませんでした。ですので時間がある時に、お互いの特技を教え合うことになっているんです。
ちなみに呼称が変わっているのは、マノンちゃんとエブラ―ルさんのご提案が切っ掛け。『家族なのだからもっと気軽に呼んで欲しいし、気軽に呼ばせてもらいたい』と言ってくださって、そうなっているんです。
「うむうむ。リリアーヌ君、これからもわたしの姿をよ~く見えて励んでくれたまえ。……うふふっ。お隣にお姉様が居てくださって、こんな風なお話しをできるだなんて。夢みたい、幸せですわ」
あの日のマノンちゃんは呪いの影響によりお喋りをする体力がありませんでしたし、互いの立場上、会うこともお手紙のやり取りをすることもできません。ですので長年の『夢の一つ』としてそれらを抱いてくれていて、改めて喜びを噛み締めてくれました。
「わたしもですよ。あの時の女の子が元気で成長してくれていて、その子とこんな風に過ごせている。とっても幸せです」
「お姉様……! わたくし達全員が望み続ける限り、こんな時間は続いていきますわっ。この先もず~っと、ず~っと家族で居てくださいねっ!」
「はいっ。ありがとうございますっ。よろしくお願い致しますっ」
すっかりお馴染みになってしまった嬉し涙が、また零れます。
――こんなに幸せでいいのでしょうか?――。
聖女剥奪なんておかしい。パーティー会場に居た人も神殿に居る6人人以外の人達もおかしい。家族の反応もおかしい。
そんな風に思ってもらえるだけでも嬉しいのに、皆さんにそう言ってもらえる。
ですので胸の奥は感謝で溢れていて、だから――フライパンを握る手にも、力が入ります。
「先生っ。この感情も込めて、オムレツを作りますねっ」
実は『教え合い』のあとには『成果の発表会』を行うことになっていて、今日はディナーの際にわたしが作ったオムレツを皆様に食べていただくことになっているのです。
なので今日教わった技術と気持ちを合わせ、一生懸命フライパンを振るって――
「これは、絶妙な焼き加減ですね。ふっくらトロトロで、とても美味しいですよ」
「うん。とても美味しい」
「ふわふわ加減が、とっても私好み。美味しい」
「さすがお姉様。すべてのポイントがしっかり守られていて、良いオムレツですわっ」
ドキドキドキドキ。
初めて経験する『誰かに食べてもらう』が始まり、どんな評価をいただけるのか緊張していると――皆さんに浮かんだのは、笑顔。エブラ―ルさんもおじ様もおば様もマノンちゃんも褒めてくださり、高評価をいただくことができました。
((……よかった……!))
大好きな人達に、喜んでもらえる。そちらがとっても嬉しくて――それだけでも充分すぎるのに。わたしはその後もうひとつ、エブラ―ルさんから『嬉しい』をいだだくことになるのでした。
「は、はいマノンちゃんっ。こっ、こうですかっ?」
「ええそうですわっ! さすがお姉様っ。呑み込みが早いですわっ!」
レヴィテット家でお世話になり始めてから、一週間後。皆様のおかげでずっと幸せな時間を過ごすことができていて、今日はマノンちゃんと一緒にお料理を作っていました。
「フライパンを上手く扱うコツは、手首――細かなスナップと、右手で行う『トントン』ですのっ。そちらを意識していれば、上手にオムレツを作れますわ」
「な、なるほど……。先生、勉強になります……!」
マノンちゃんは『お料理』と『ピアノ』など、わたしは『裁縫』と『絵画』などが得意で、共通な特技はありませんでした。ですので時間がある時に、お互いの特技を教え合うことになっているんです。
ちなみに呼称が変わっているのは、マノンちゃんとエブラ―ルさんのご提案が切っ掛け。『家族なのだからもっと気軽に呼んで欲しいし、気軽に呼ばせてもらいたい』と言ってくださって、そうなっているんです。
「うむうむ。リリアーヌ君、これからもわたしの姿をよ~く見えて励んでくれたまえ。……うふふっ。お隣にお姉様が居てくださって、こんな風なお話しをできるだなんて。夢みたい、幸せですわ」
あの日のマノンちゃんは呪いの影響によりお喋りをする体力がありませんでしたし、互いの立場上、会うこともお手紙のやり取りをすることもできません。ですので長年の『夢の一つ』としてそれらを抱いてくれていて、改めて喜びを噛み締めてくれました。
「わたしもですよ。あの時の女の子が元気で成長してくれていて、その子とこんな風に過ごせている。とっても幸せです」
「お姉様……! わたくし達全員が望み続ける限り、こんな時間は続いていきますわっ。この先もず~っと、ず~っと家族で居てくださいねっ!」
「はいっ。ありがとうございますっ。よろしくお願い致しますっ」
すっかりお馴染みになってしまった嬉し涙が、また零れます。
――こんなに幸せでいいのでしょうか?――。
聖女剥奪なんておかしい。パーティー会場に居た人も神殿に居る6人人以外の人達もおかしい。家族の反応もおかしい。
そんな風に思ってもらえるだけでも嬉しいのに、皆さんにそう言ってもらえる。
ですので胸の奥は感謝で溢れていて、だから――フライパンを握る手にも、力が入ります。
「先生っ。この感情も込めて、オムレツを作りますねっ」
実は『教え合い』のあとには『成果の発表会』を行うことになっていて、今日はディナーの際にわたしが作ったオムレツを皆様に食べていただくことになっているのです。
なので今日教わった技術と気持ちを合わせ、一生懸命フライパンを振るって――
「これは、絶妙な焼き加減ですね。ふっくらトロトロで、とても美味しいですよ」
「うん。とても美味しい」
「ふわふわ加減が、とっても私好み。美味しい」
「さすがお姉様。すべてのポイントがしっかり守られていて、良いオムレツですわっ」
ドキドキドキドキ。
初めて経験する『誰かに食べてもらう』が始まり、どんな評価をいただけるのか緊張していると――皆さんに浮かんだのは、笑顔。エブラ―ルさんもおじ様もおば様もマノンちゃんも褒めてくださり、高評価をいただくことができました。
((……よかった……!))
大好きな人達に、喜んでもらえる。そちらがとっても嬉しくて――それだけでも充分すぎるのに。わたしはその後もうひとつ、エブラ―ルさんから『嬉しい』をいだだくことになるのでした。
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