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第13話 捨てた者が捨てられる時 リリアン視点(1)

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「あっ、飽きた……!? わたくしはこんなにも絶世なのに……!? どうして……っ!?」
「そう思っているのは、貴方のみだから。マルク様はもう、リリアン様に魅力を感じてはいらっしゃらないのですよ」

 5年。それなりに月日が経ったことで、当時のような輝きがなくなってしまった。
 マルク様が求めるレベルでは、なくなってしまった。

 それらが理由で、そのように判断されたそう……。
 さっき眺められていたのは……。最後の確認だった……。

「これからリリアン様には、こちらの書類にサインをしていただくことになります。速やかにお願い致します」
「まっ、待ってください!! これっ!? この内容っ!? 滅茶苦茶ですわっ!!」

 離婚の原因は妻・リリアンによる浮気。

 そこには、それを認めろという記載があって……。慰謝料も、ない……。

「こんなの納得できるはずがありませんわ!! 拒否を――」
「拒否をされるとマルク様は、力ずくで貴方を従わせることになるでしょう。それでもよろしいのですか?」

 マルク様の力は、傍に居たからよく知っている……。
 たとえお父様に頼んでも、歯が立たないと知っている……。

「お優しい主は、『今身につけているものはやる』、『特別に生家まで運んでやる』と仰られております。よかったではありませんか」
「お優しい!? よかった!? 主従揃って何を言って――…………。な、なんでもありませんわ……」

 逆らっては駄目。下手に刺激してしまうと、どんな風に悪化してしまうか分からない。
 なので手の平に爪を食い込ませて怒りを抑え込み、涙を堪えて頷いた。

「サインをしていただける、ということですね? ではお願い致します」
「………………」
「リリアン様。お願い致します」
「………………畏まりました」

 わたくしは仕方なく従い、それが終わると乱暴に馬車に――いつも乗っていた広々としたものではなく、一番小さなものに乗せられる……。
 そうしてわたくしは、リッカズス侯爵家を無慈悲に追い出され――

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