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第8話 一週間後 ジル視点

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「くくくくくっ、ははははははっ! 今のジル・ロズオルヤ様はなんだって出来てしまえそうだ!!」

 帰路の馬車の中。俺はふんぞり返り、大きな大きな笑い声をあげていた。
 今日は家督継承へのステップの一つとして、初めて単独で他貴族との会談を行った。『初』であり大きな意味を持つ行動は、酷く緊張してしまうものだろう?

 だが、俺は違う!

 このジル様は常に堂々とした振る舞いを見せ、相手に――30歳7つも上の伯爵が『昔の自分とは大違いだ……』と目を見張るほどだったのだ。

「ルイよ! お前も見ていただろう? 卿の顔を!」
「え、ええ。驚かれて、おりましたね」
「すさまじい、驚きようだったな。……認めよう。7か月前までの俺ならば、こんな結果はもたらせていない」

 向かいにいる従者に対して肩を竦め、右斜め前を――ロズオルヤ邸が建つ方角へと顔を向ける。
 俺がここまで活躍できるのは、愛する人のおかげ。リリアンのおかげなのだ。

「最愛の人が待っていてくれる。活躍を褒めたたえてくれる。こいつが恐るべきパワーをもたらしてくれるんだ」

 元々俺は、類まれなる才を持っていた。だがソレには不思議な『鍵』がかかっていたらしく、これまで発揮することはできなかった。
 我が実力を封じ込めていた『鍵』。その除去、解錠に必要だったものは、相手の『真なる愛』と『純粋な心』だったのだ。

「かつての婚約者の……。ルイ、あの女はなんという名前だったかな?」
「お、オデット・ハドテーク様でございます……」

 ああそうそう。そうだったそうだった。
 オデットという名だったな。

「アイツの時にこうならなかったのは、アイツにそれらがなかったからだ」

『愛されあれば他には要らない』

 あの女は、そう思っていなかった。悟られないように上手く隠していたのだろうが、内心では色々なことを考えていたんだろう。
 だから、アレだったのだ。

「……つくづく、あの夜リリアンと出逢えてよかったと思う。……リリアン、ありがとう」

 君のおかげで俺は、真なる姿となれたよ。
 忌々しい祖父のせいでプレゼントはできないけれど、その分たっぷりと愛させてもらうからね。君が大好きな人はもう間もなくお屋敷に着くから、楽しみにしていてね――

「ん!? なっ、なんだ!?」

 待ちきれず窓から顔を出していたら、見慣れない大きな馬車がウチの門を潜っていくのが見えた。
 今夜は、来訪の予定なんてなかったぞ。それにあの大きさは、かなりの『家』の所有物のはず。だ、誰が乗っているんだ……!?

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