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第5話 悪女の行方は ロズリーヌ視点
しおりを挟む「この辺りで最も姿を隠しやすい場所は、ここ。『ラーガットル』になります」
ひとまず、発端となった場所こと老人ホームを目指す馬車の中。オディロン様と共に移動先の推理を始めたわたしは、付近にある街の名前をあげました。
「ラーガットルは人気(ひとけ)が非常に多く、その関係で宿屋だけではなく民宿もたくさん存在しています。あそこなら出歩く必要が出来た場合でも、人の波に紛れられる。わたしが逃走するならここを選び、ラーガットルで潜伏します」
「木を隠すなら森の中、ということですね。俺も、タチアナはそこにいると思います。いえ、正確にはそこにしか行けませんね」
タチアナさんは、相当に甘やかされて育てられていた。その影響で独りで生きていくことはできず、誰かが提供してくれたもので生きていく、ことしかできないそうです。
「山など完全に人気(ひとけ)がない場所を選ばれていたら、高確率で詰んでいました。不幸中の幸いです」
「悪いことばかりでは、ありませんね。流れは引き続き、こちらにあります」
この流れは、絶対に手放さない。
わたし達は頷き合って更に推理を行い、到着後の動きについて話し合います。
「まずは、目撃情報を集めましょう。他に部屋からなくなっていたのは、帽子とサングラス、でしたよね? その色と形を教えて――視覚的に認識できるように、こちらに絵を描いていただけますか?」
「畏まりました。帽子はこういった形で、この色で……。サングラスの方は、この色でこんな形をしています」
「ありがとうございます。ロズリーヌ様の外見のデータも、改めてお教えください」
「身長は157センチで、少しやせ型です。髪の毛は金色、長さはセミロング、毛先にちょっとだけ癖があります。上手くはありませんが、こちらも絵に起こしますね」
「助かります」
「…………なるほど。ではこちらを見せて回りましょう。近隣住民目線では、東西南北どの出入り口から街に入っていると思われますか?」
「あのホームからだと距離的には東口が最も近いのですが、道中には少々治安が悪い場所があります。あそこは雰囲気で危険と分かりますから………………そこを迂回して、南口から入っていると思います」
「最高の情報をありがとうございます。では、そちらを目指しましょう」
などなど。様々なやり取りをして態勢を整え、その甲斐あって万全の状態で目的地に到着することができました。
ですのでわたし達はすぐさま、タチアナさんの捜索を始め――ようとしたのですが。馬車を降りてまもなく、とあるトラブルと遭遇することとなるのでした。
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