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第17話 裁きの時 ジェレミー視点

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「ジェレミー!! よくも騙したわね!!」
「ジェレミぃぃ!! よくも嵌めやがったな!!」

 罰に関するやり取りは、『国』の目がある場所で行わなければならない。そのため二人がいる治安局に赴くと、僕の姿を見るや親子揃って目を剥いた。

「はぁ、先に騙していたのはそちらだろう? よくもまあそんな台詞を吐けるね」
「なによその勝ち誇った顔……!! 不愉快だわ!! いますぐ――離せ!! はなぇっっつ!!」
「離せ!! ヤツのもとへ行かせろ!!」

 殴りかかろうとするも、それぞれが傍にいる治安局員に取り押さえられてしまう。
 礼儀正しい妹と温厚な叔父。そんな姿は見る影もない。

「わたくしには殴る権利があるわ!!」
「俺にもだ!! やらせろ!! 離せ!!」
「という風に叫び散らかす輩の傍に居たら、性悪が移ってしまう。それに僕は、これから空白の6年を埋めないといけない。早々に宣告して、帰らせてもらうよ」

 ふたりプラス2家6人への罰は、とっくに決めている。さっさとそれぞれに伝えて、アマンディーヌのもとにさっさと戻ろう。

「オディール、ジャン。お前達への罰は、炭鉱での強制労働だ」

 5億ベリアールを稼ぐまで、厳しい環境下で働き続ける。それが、この者達――別室で拘束されている者達にも、与える罰だ。

「オディールは――ジャンも、自分は恵まれていない、役不足で可哀想だと思っていたんだろう? それが間違っていたことを――自分達がどれだけ恵まれていたのかを、思い知るといい」

 コイツらは『金』の大事さや『今ある環境』のありがたさが、まるで分かっていない。そこで本来は『ザイロルエ家』に請求する慰謝料を『2人』にし、汗水を流して工面させることにした。

「炭鉱!? 5億だと!? 滅茶苦茶だ!! 法外だ!!」
「わたくし達はちょっと手紙を送ってっ、ちょっとお芝居を頼んだだけなのに! やりすぎよ!!」
「法外でもやりすぎでもない。お前達はそれだけのことをやってきたんだよ」
「「ふざけるな!! 違う!! そこまでじゃない!!」」
「お前達の言い分が間違っていることは、じきに分かるだろう。……じゃあな。頑張って稼ぐんだぞ」

 別室でも叔父達が激昂していたが、相応であるので提示した罰はあっさりと認められる。そのためオディールと一家×2の8人はすぐさま、こちらが指定した炭鉱へと移動させられて――

 新たな人生、第二の人生が、悪を開けることとなるのだった。



 ○○○



「困った……。大変なことになった……」
「もう、どうしようもない……。こんなことに……なってしまうだなんて……」
「……どうしましょう……」
「どうしたら、いいの……!?」

 オディール達の日常が崩壊してしまった日から、およそ半年後。
 隣国ランディール内にあるとあるお屋敷では、4人の親子が顔を真っ青にしていて――

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