上 下
21 / 39

第12話 わたくしはいつも可哀想 オディール視点

しおりを挟む
 自分はなんて可哀想なのかしら――。わたくしは幼いころから、いつもそう思っていた。
 だって、そうでしょう?

 わたくしは容姿端麗、頭脳明晰。おまけに類まれなる才能におごらずちゃんと努力であり自分磨きを続けられる、人格者。

 なのに、平凡な伯爵家の長女として生まれてしまっている。
 本来なら侯爵――公爵クラスの娘として生まれるべきなのに、コレ。圧倒的に役不足で、こんな家に誕生させた『神』に常日頃苛立ちを覚えていた。

((ああ、可哀想。なんて、可哀想なの))

 貴族の中でも上級もしくは最上級に居るべき美少女が、せいぜい中級レベルに居るだなんて。あまりに理不尽。
 可哀想すぎて涙が出てくる。

((あるべき状況に変えなさい。変えられないのなら、時間を戻して1から人生をやり直させなさい))

 いくらそう繰り返しても状況は変わらないし、時間が巻き戻りもしない。
 だからもう、諦めた。神なんかにお願いするのはやめた。
 自分の手で、本来あるべき日常を――わたくしに相応しい『地位』と『財』を手にすることにした。

((ジェレミーお兄様))

 幸いにも生真面目で堅物だったお母様とは違い、お父様も似たような考えの持ち主だった。そんなお父様がファブリスおじ様に近づいていたおかげで、『金持ちの家の次期当主』かつ『次期商会頭』が幼馴染にいた。

((ふふ。お兄様は、絶対にわたくしのモノにしてみせますわ))

 この人と結婚すれば、まあそれでも足りないのだけれど、一応は満足できるお金と地位が手に入る。だからずっと、お兄様がわたくしに惚れるように働きかけていて――いた、のに。突然邪魔者が現れてしまう。

((アマンディーヌ……!!))

 よく分からない女と隣国で出会ってしまい、あまつさえ一目惚れをしてしまったのだ。

((この女と結婚する!? そんなの許しませんわ!!))

 到底認められるはずがなく、わたくしはすぐお父様と共に手を打った。
 しかしながら最終的にソレは失敗してしまい、万事休す――かと思われたけど、それで諦めるようなわたくしではない。すぐさま再度お父様と共に妙案を生み出し、実行し、今度こそ成功を収めたのですわ!!

((可哀想なわたくしを救えるのは、わたくしだけ。もうひと踏ん張りですわ、わたくしっっ! このままゴールしてしまいましょう!!))

 この勢いを活かしてわたくしは走り続け、薔薇色の未来へと到達する明確なビジョンが見えた。
 はっきりと、見えていた。

 なのに――。

 どう、なっているんですの……?
 なぜ――

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

この声は届かない

豆狸
恋愛
虐げられていた侯爵令嬢は、婚約者である王太子のことが感知できなくなってしまった。 なろう様でも公開中です。 ※1/11タイトルから『。』を外しました。

辞令:高飛車令嬢。妃候補の任を解き、宰相室勤務を命ずる

花雨宮琵
恋愛
“庶子・黒髪・魔力なし。3拍子揃った高飛車令嬢”――世間でそう呼ばれ蔑まれているデルフィーヌは、あらゆる魔力を無力化する魔力無効の持ち主である。 幼き日に出会った“海のアースアイ”を持つ少年が王太子・リシャールであることを知ったデルフィーヌは、彼に相応しい女性になるため厳しい妃教育に邁進するも、150年ぶりに誕生した聖女に彼のパートナーの座をあっさりと奪われる。 そんなある日、冤罪で投獄されたデルフィーヌは聖女付の侍女となり過労死する未来を透視する。 「こうしちゃいられない!」と妃候補を辞退する道を画策するデルフィーヌに、王命による辞令が言い渡される。 親世代の確執に、秘匿された出自の謎が解き明かされたとき、デルフィーヌが選ぶ未来とは――。 この小説は、不遇なヒロインが自分の置かれた環境で逞しく生き抜いていく姿を描いたハッピーエンドの物語です。 ※異世界の物語のため、アース・アイの描写など現実世界とは異なる設定になっています。 ※カクヨムにも掲載しています((C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。)

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

最後に笑うのは

りのりん
恋愛
『だって、姉妹でしょ お姉様〰︎』 ずるい 私の方が可愛いでしょ 性格も良いし 高貴だし お姉様に負ける所なんて ありませんわ 『妹?私に妹なんていませんよ』

処理中です...