12 / 39
第5話 初恋の人の家族 アマンディーヌ視点(2)
しおりを挟む
「………………こちらが……。わたしの、お部屋……?」
あのあと――。父親、母親、弟と使用人の皆様にちゃんとしたご挨拶をさせてもらい、ジェレミー様にお屋敷を案内していただいている時のことでした。
最後に案内していただいた場所――わたしに与えらえたお部屋は、かつて過ごしていた場所の何倍もの広さがある空間。しかもそこにはふかふかのベッドを始めとした新品の家具が並んでいて、ジェレミー様のお顔を室内を何度も交互に見てしまいました。
「居場所をいただけるだけでも、ありがたいのに……。ここまでしていただいて、よろしいのですか……?」
「もちろん。僕が、そうしたいんだよ」
好きな人には快適に暮らしてもらいたい――。好きな人に喜んでもらいたい――。
このようにセッティングをされた理由を、目を細めながら教えてくださりました。
「それにこっちで手いっぱいで、おかれた環境を知っていても何もできなかった。その分も含めてのこの部屋で――それ以外にも、まだまだ『そうしたいこと』はあるんだ。楽しみにしていてね」
「そ、そうなのですね……。あ、ありがとうございます」
「どういたしましてで、こちらこそありがとうだよ。僕に恋をさせてくれて」
『危険を顧みず助けようとしてくれた、清らかな心。損得勘定が一切ない、優しい心。そんな心を持っている人に会ったことはなくて、まさか存在するとは思っていなかった。僕にとって君は『奇跡の人』で、だから一目惚れをしてしまったんだ』
『嫡男だから誰かと結婚しなくてはならなくて、本当に困っていたんだ。もし君がその人になってくれたら、これ以上に幸せなことはないんだよ』
あの頃まで、『異性に対する』という感情を知らなかった――。愛するということの楽しさ、喜びを教えてくれて、ありがとう――。
移動中の車内でも言及されていたことを、改めて仰られました。
「この6年間大変だったけれど、これまでにない活き活きとした6年間だった。これからは、それ以上に瑞々しい日々になるだろう。アマンディーヌのおかげで、人生が何倍何十倍にも潤ったよ」
「わたくしもっ、こちらこそのこちらこそですっ。ジェレミー様のおかげで何倍何十倍、何百倍も眩しいものになりました!」
死ぬまでずっと、化け物扱いされる人生だと思っていました。どこにも居場所なんてないのだと思っていました。
でも、どちらも違っていました。
『わぁ。綺麗な髪の毛じゃないか』
『ようこそ、アマンディーヌ君。歓迎するよ』
『まぁ、本当に夜空みたい。素敵だわ』
『兄上が何度も絶賛されるので、ずっとお会いしてみたかったのですよ。お会いできて光栄です』
あの日、初めての人、と出逢って。今日、居場所をいただけて。
わたしの人生は、大きく、大きく変わりました。
「ありがとうございます。ありがとうございます、ジェレミー様」
「どういたしま――って、これじゃあ繰り返しになるね。それにそろそろ時間だし、感謝合戦はこのへんにしておこうか」
「??? お時間、ですか?」
急ぐような予定はありませんし、今日はご用事はないと仰っていました。
どうされたのでしょうか……?
あのあと――。父親、母親、弟と使用人の皆様にちゃんとしたご挨拶をさせてもらい、ジェレミー様にお屋敷を案内していただいている時のことでした。
最後に案内していただいた場所――わたしに与えらえたお部屋は、かつて過ごしていた場所の何倍もの広さがある空間。しかもそこにはふかふかのベッドを始めとした新品の家具が並んでいて、ジェレミー様のお顔を室内を何度も交互に見てしまいました。
「居場所をいただけるだけでも、ありがたいのに……。ここまでしていただいて、よろしいのですか……?」
「もちろん。僕が、そうしたいんだよ」
好きな人には快適に暮らしてもらいたい――。好きな人に喜んでもらいたい――。
このようにセッティングをされた理由を、目を細めながら教えてくださりました。
「それにこっちで手いっぱいで、おかれた環境を知っていても何もできなかった。その分も含めてのこの部屋で――それ以外にも、まだまだ『そうしたいこと』はあるんだ。楽しみにしていてね」
「そ、そうなのですね……。あ、ありがとうございます」
「どういたしましてで、こちらこそありがとうだよ。僕に恋をさせてくれて」
『危険を顧みず助けようとしてくれた、清らかな心。損得勘定が一切ない、優しい心。そんな心を持っている人に会ったことはなくて、まさか存在するとは思っていなかった。僕にとって君は『奇跡の人』で、だから一目惚れをしてしまったんだ』
『嫡男だから誰かと結婚しなくてはならなくて、本当に困っていたんだ。もし君がその人になってくれたら、これ以上に幸せなことはないんだよ』
あの頃まで、『異性に対する』という感情を知らなかった――。愛するということの楽しさ、喜びを教えてくれて、ありがとう――。
移動中の車内でも言及されていたことを、改めて仰られました。
「この6年間大変だったけれど、これまでにない活き活きとした6年間だった。これからは、それ以上に瑞々しい日々になるだろう。アマンディーヌのおかげで、人生が何倍何十倍にも潤ったよ」
「わたくしもっ、こちらこそのこちらこそですっ。ジェレミー様のおかげで何倍何十倍、何百倍も眩しいものになりました!」
死ぬまでずっと、化け物扱いされる人生だと思っていました。どこにも居場所なんてないのだと思っていました。
でも、どちらも違っていました。
『わぁ。綺麗な髪の毛じゃないか』
『ようこそ、アマンディーヌ君。歓迎するよ』
『まぁ、本当に夜空みたい。素敵だわ』
『兄上が何度も絶賛されるので、ずっとお会いしてみたかったのですよ。お会いできて光栄です』
あの日、初めての人、と出逢って。今日、居場所をいただけて。
わたしの人生は、大きく、大きく変わりました。
「ありがとうございます。ありがとうございます、ジェレミー様」
「どういたしま――って、これじゃあ繰り返しになるね。それにそろそろ時間だし、感謝合戦はこのへんにしておこうか」
「??? お時間、ですか?」
急ぐような予定はありませんし、今日はご用事はないと仰っていました。
どうされたのでしょうか……?
197
お気に入りに追加
591
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~
アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる