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第3話 目が覚めたら アラン視点(2)

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「やっ、止めてくれ! 考え直してくれシャルロット! よっ、よくっ! よく思い出してくれっっ!! 思い出して欲しいことがあるんだっっ!!」

『心優しい素晴らしき淑女』ではなく、『ネジが外れている恐ろしい狂人』。シャルロットの認識ががらりと変わった瞬間、俺は無意識的に叫んでいた。

「思い出す? なにをでしょうか?」
「今君の目の前にいるのはっっ! 君が実験体しようとしているのはっっ! この俺っ、アラン・ザックルスなんだよっ!!」

 この狂人を止める方法は、これしかない。
 俺は首を懸命に動かして自分の全身を見渡し、もう一度しっかりとシャルロットを見つめた。

「目の前にいるのはアラン・ザックルスだから? アラン様、なにを仰りたいんですの?」
「俺はっ、君の婚約者!! シャルロットの最愛の人なんだよ!? 自分が愛する人がっ、恐ろしいっ、辛い思いをしてもいいというのか!? その事実に耐えられるのかい!?」

 そんなものに、耐えられるはずがない!
 シャルロットは研究中毒者! 研究狂い! 自分の目的を果たせると知って激しく興奮し、肝心な部分が頭から抜け落ちてしまっているだけだ!!
 その『抜け落ちた』部分を頭に嵌め直してやればっ、気が付いて考え直すようになる――


「ええ、耐えられますよ。だってわたくしにとって貴方様は、どうでもいい存在。躊躇も遠慮もまるで必要ないものであるが故に、わたくしは実験体にするのですから」


 …………。え?
 どうでも、いい……?

「俺は……。婚約者、なのに……? どうでも、いい……? なにも、必要、ない……?」
「アアラン様。貴方様にもうひとつ、お詫びをしなければならないことがありましたわ」
「お、おわびだって……? な、なんなんだ……?」
「実を言いますとわたくし、貴方様に好意を抱いてはおりませんの。1ミリも」

 な!? なんだって!
 俺に好意がない!? これっぽっちも!?

「嘘だ! それこそ嘘だ!! じゃあっ、じゃあ! どうしてあの日俺の告白を受け入れた!? お前が開発した薬の実験が目的ならっ、経過観察が目的ならっっ、言い寄った時すぐに――最初からOKを出して婚約していたはずだ!! 最初はっ、ずっとあんなにも拒絶していたじゃないか!! どうして昨日婚約を受け入れたんだっ!? どうなっているんだっ!?」
「何度も交際をお断りしていたわたくしの、考えが変わった理由。考えが変わり始めた理由。それは貴方様が思い出したと思い込んでいる、『1か月前の午後5時14分37秒』と『昨日の午後4時41分13秒』の発言にありますわ」

 まただ。また、あの数字が出た。
 俺が思い出した言葉は、間違っていた……?

「…………わ、分からない。思い出せない……」

 俺は、あの時……。
 シャルロットに、なんて言ったんだ……?
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