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第8話 借金の理由~過程~ 俯瞰視点
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「っっ、あのクソじじいめ……っ! つくづく邪魔な奴だ……っっ!」
あの日――父ロバンが祖父キリルのもとから帰ってきた、その直後のこと。良い返事をもらえなかったと知ったケヴィンは、目の前にある――父の執務室にあるデスクに、右の拳を叩きつけていました。
「わざわざエマに手紙を書いて、反省している姿を見せてきたっていうのに……っ。頑固なじじいだ……!」
「まったくだ……っ。些細なミスをいつまでも責める、人の成長を妨げる厄介な男だよ……!」
ケヴィンもロバンも、愚かな人間。非常識人にとって、常識人の正しい意見は非常識な発言。
2人は自らの行動を棚に上げ、口汚く何度も罵りました。
「くそ……っ。これじゃあ、いつまで経ってもリナスが欲しがっていたアレを買ってやれない……っ。…………奥の手を、使うか……」
「おくの、て……? お前は、何を考えているんだ……?」
「ああいった資産運用に頼っていたら、現金化に時間がかかりすぎる。だから、株に手を出すことにする」
このやり方なら、早く勝負をつけられる――短期間で、利益を上げることができます。そのためケヴィンは以前から目をつけており、今日実行を決意しました。
「ま、待て待てっ。お前はもう数万しか手持ちがないのだろう? 家からの資金援助はできないのに、どうやって株を売買するつもりなんだ?」
「……軍資金は、借金で調達する。3千万ルピスを借りるつもりだ」
現在家の名前は使うことができず、同時に、家の名に傷をつけかねない行動も取れません。そこで個人的に、貴族仲間ではなく、高利貸しと取引。とある条件と引き換えに、特別に年利5パーセントで高額の融資を受けられることになっていたのです。
「ケヴィンよ……。本当に、大丈夫なのか……? 上手くいくのか……?」
「父さん、俺は何千万もの利益を生み出してきた男だ。成功は間違いないさ」
そうして勝利を確信し、自信満々で動き出したケヴィン、でしたが――。
「ちっ、57万ルピスの損失か……。まあ、勉強代としておこう」
「くっ……っ。146万の損……。また負けか……」
「ぐ……。合わせて、245万が消えた……。こ、今度こそ取り戻す……!」
連戦連敗。慣れない畑で大きな敗北を繰り返し、僅か3か月後で軍資金は0に。
ケヴィンは、リナスが知らない間に――確実に稼いでいると確信し、お茶会を愉しんでいる間に、取り返しのつかない状況を作ってしまっていたのです。
あの日――父ロバンが祖父キリルのもとから帰ってきた、その直後のこと。良い返事をもらえなかったと知ったケヴィンは、目の前にある――父の執務室にあるデスクに、右の拳を叩きつけていました。
「わざわざエマに手紙を書いて、反省している姿を見せてきたっていうのに……っ。頑固なじじいだ……!」
「まったくだ……っ。些細なミスをいつまでも責める、人の成長を妨げる厄介な男だよ……!」
ケヴィンもロバンも、愚かな人間。非常識人にとって、常識人の正しい意見は非常識な発言。
2人は自らの行動を棚に上げ、口汚く何度も罵りました。
「くそ……っ。これじゃあ、いつまで経ってもリナスが欲しがっていたアレを買ってやれない……っ。…………奥の手を、使うか……」
「おくの、て……? お前は、何を考えているんだ……?」
「ああいった資産運用に頼っていたら、現金化に時間がかかりすぎる。だから、株に手を出すことにする」
このやり方なら、早く勝負をつけられる――短期間で、利益を上げることができます。そのためケヴィンは以前から目をつけており、今日実行を決意しました。
「ま、待て待てっ。お前はもう数万しか手持ちがないのだろう? 家からの資金援助はできないのに、どうやって株を売買するつもりなんだ?」
「……軍資金は、借金で調達する。3千万ルピスを借りるつもりだ」
現在家の名前は使うことができず、同時に、家の名に傷をつけかねない行動も取れません。そこで個人的に、貴族仲間ではなく、高利貸しと取引。とある条件と引き換えに、特別に年利5パーセントで高額の融資を受けられることになっていたのです。
「ケヴィンよ……。本当に、大丈夫なのか……? 上手くいくのか……?」
「父さん、俺は何千万もの利益を生み出してきた男だ。成功は間違いないさ」
そうして勝利を確信し、自信満々で動き出したケヴィン、でしたが――。
「ちっ、57万ルピスの損失か……。まあ、勉強代としておこう」
「くっ……っ。146万の損……。また負けか……」
「ぐ……。合わせて、245万が消えた……。こ、今度こそ取り戻す……!」
連戦連敗。慣れない畑で大きな敗北を繰り返し、僅か3か月後で軍資金は0に。
ケヴィンは、リナスが知らない間に――確実に稼いでいると確信し、お茶会を愉しんでいる間に、取り返しのつかない状況を作ってしまっていたのです。
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