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第185話 美紅と探索者省との話し合い・前編

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 智美と別れ一人で朝食を食べた後は、世那と私が不在の間のクランを任せている夕風と打ち合わせをする。夕風にクランマスター室に来てもらった。

「この機械の使用を昨日の会議に参加した者に許可した。夕風に管理を任せると皆には言ってあるから、順位を調べる時に立ち会いチェックをおこなってくれ。決して他の人に順位の情報が洩れないように気をつけておいてほしい」
「分かりました。しかし、朝の探索前の連絡事項の確認時と、探索後の結果報告時には手が空きませんから、順位を調べる時の時間を決めてもらわないと対応できそうにありません」
「そうだな、夕風には負担ばかりかけているな。どの時間に設定すれば良いだろうか?」
「夜の八時から十時の間であれば、その日の報告のまとめをする時間ですからちょうど良いです。クランの休息日には使用出来ないようにしていただくとありがたいです」
「分かった。その時間限定で調べることが出来るように話しておこう」

 かなり夕風に負担をかけているのは分かっているが、完全に信頼出来るスタッフとなるとそうそういないものだ。クランの大事な情報は、夕風以外のスタッフには今のところ知らせることは出来ないと思っている。

「今日の探索者省との話し合いでは、夕風には私の隣で【嘘看破】のスキルを使い、即座に知らせてもらいたい」
「探索者省の人が嘘をつくんですか?何についての話し合いなのでしょうか?」
「おそらくは住之江ダンジョンに関してだと思うが、こちらとしては《花鳥風月》のダンジョンへの立入禁止の措置がどうなっているのかも気になる。それとSランクダンジョンから魔物がいつ溢れるかも知りたい情報だ。その辺りの話になったときに夕風のスキルで探索者省が嘘をついているか教えてほしいと思っている」
「分かりました。私がいつも担当しているお茶汲み等はどうしましょうか?」
「夕風が一番信頼しているスタッフは誰なんだ?」
「初音先輩です。宮園初音みやぞのはつね先輩のことは、私に一から仕事を教えていただいた時からずっと信頼しています。私だけでなく、皆からも厚く信頼されている先輩です」
「初音か?なるほど。では、初音をここに呼んで来てくれないか」

 初音を交えて打ち合わせをおこなったが、実際にどういう話し合いになるのかは蓋を開けてみないと分からないとは思っていた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 午後二時ちょうどに応接室に入った。探索者省からは二名来ているが、その内の一人は前回の自衛隊を交えての話し合に来ていた藤林という者だった。もう一人の名刺を見ると安達さんという方で、藤林より偉い人のようだ。さて、何を言ってくるのだろうか。

「早速ですが、今日は何の為に来られたのでしょうか?福岡にも人を送って来たようですが、行動を監視されているようで気持ちのいいものではないな。今後は止めていただきたい」
「監視する等、そういうつもりはありませんでした。ご不快にさせて申し訳ありません。ただ探索者省といたしまして、《Black-Red ワルキューレ》様には住之江のAランクダンジョンでの探索を再開していただければと思い、福岡ダンジョンに伺わせていただきました。今日伺わせていただいたのも同じです。どうか住之江ダンジョンを再び探索してください、お願いします」
「私達がどのダンジョンを探索しても自由な筈だが、それに住之江は自衛隊に探索をお願いした方が良いんじゃないかな。藤林さんは前回もこちらへ来られたから、その辺のことはご存知の筈だと思いますが」
 
 藤林は苦虫をかみつぶしたような表情をしている。ここに来たのは渋々といった感じだな。

「そんなに嫌な顔をされてまで話し合うことはないな。どうぞお帰りください。私も暇な人間ではないのでね」
「いや、そんなことはないです。藤林、嫌な顔をしていたのか?」
「いいえ、とんでもないです。元々からこんな顔ですので、不快にさせてしまったのなら申し訳ありません」
「今の言葉は嘘だな。正直に話をしてもらわないと、こちらとしても困るんだがな。もう一度言うが、住之江は私達にではなく、自衛隊に探索をお願いした方が良いと思う。理由は藤林さんが知っている通りだ」
「いや、自衛隊は二カ所のSランクダンジョンで手一杯です。とても他のダンジョンを攻略するのは無理だと言われました」

 夕風からの合図がないので、安達さんは本当の事を言っているようだな。

「おかしいな。この前藤林さんと来られた自衛隊員は、Aランクダンジョンを遊びながら探索出来ると言っていたのだが………確かそう言ってましたよね、藤林さん」
「いや、そうは言ってなかったです。《花鳥風月》のクランマスターに、Sランクダンジョンの探索は無理だと言っていたと記憶しています」
「では、前回言ってた《花鳥風月》さんをダンジョンに入らせないようにするという話はどうなったんだ。もしも本当に立入禁止にするなら理由は何なんだ?同じ探索者として、いきなりそんなことをされると困るから聞いておきたい。正当な理由無しに立入禁止を言い渡すなら、《Black-Red ワルキューレ》と《東京騎士団》は海外で活動しようと話し合っているんだ。もう決定しているのだろう、《花鳥風月》さんはどうなるんだ?」

 さて、どんな回答をして来るだろうか。
 

 

 
 
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