上 下
61 / 193

第六十一話 ダンジョン旅行・三日目

しおりを挟む
 今日もタップリ寝て、スッキリ起きた。旅行三日目である、今日から高松市を離れて丸亀市へ移動する。

 ホテルのロビーで落ち合い、早速チェックアウトして高松駅に向かう。高松駅から普通電車で約四十分で丸亀駅に着いた。ダンジョンは現存十二天守の一つ丸亀城の側にある。駅から歩いて向かうが、その道沿いのうどん店で朝うどんを食べよう。

 今日は朝から肉うどんを食べる。このお店は大盛りの肉が盛られたこのうどんで有名らしい。名物料理は一度食べなければ気が済まない主義だ。ガッツリ朝からいただいた。

 丸亀ダンジョンは全二十階層のEランクダンジョンで迷宮型だ。出て来る魔物はクモでEランクダンジョンなので毒持ちは出てこない。

「ちょっと待って、クモが出てくるの?足が八本ある奴だよね。無理です、絶対に無理」

 遥がクモの魔物の情報を聞いてダンジョンの探索を拒否してきた。ゴブリンのような人型の魔物はダメな場合も想定していたが、クモがダメな場合は想定していなかった。確かに日常生活で昆虫やクモを嫌う人は結構いるよね。完全に僕の失敗だ。さてと、どうしたものか。

「今日は普通に観光でもするか?」

 この案はすぐに却下された。五人ともどうしてもダンジョンに行きたいそうだ。

「私のせいでごめんなさい。皐月さんに連絡してみます。オススメのダンジョンを紹介してもらいます」

 遥が責任を感じているのか、昨日連絡先を交換したばかりの皐月さんに電話をかけている。ダンジョンに入っていたら電話は繋がらないが、まだダンジョンに入る前だったようでセーフだった。

 丸亀市から近いところだと坂出市にFランクダンジョンがあるそうだ。今回はFランクダンジョンは最初から見ていなかったから助かったよ。明日のことは今日の夜に考えるとして、坂出市に移動しよう。

 丸亀駅から電車で十分ほどで坂出駅に着いた。駅からダンジョン行きのバスに乗って二十分で着くらしい。道中何度も遥が謝ってきたが、これは僕のミスだ。ちゃんと情報を伝えておかないといけなかった。

「今回は僕のミスだよ。報・連・相はしっかりしないとダメだね。こちらこそ遥に悪いことしたよ、ごめんな。今後は気をつけるよ」

 気を取り直して坂出ダンジョンの情報を調べよう。坂出ダンジョンは全六階層の草原型のダンジョンで、出てくる魔物はミニトレントモドキ………これは僕の大好きなダンジョンと同じではないか。やる気が爆上がりしたよ。

「これって、吉備路のダンジョンと同じだよね。お兄ちゃんと一緒だと滅茶苦茶暇なやつだよね」

 綾芽が文句を言っているが、皐月さんオススメのダンジョンである。入らないわけにはいかないよね。

 探索者センターで必要な手続きと着替えをさっさと済ませて、ダンジョンに入りましょう。

 ちゃんとパーティ登録をしてダンジョンに入ったが、入った後は六人別々に探索することにした。同じ階層にいないといけないので、いつものようにじっくりと探索することは出来ないが、方法は変えない。野球のグローブを出して準備万端だ。さあ来い!

 一階層は玉葱、ここも同じ食材しか出てこないのかな?キャッチして収納を繰り返し、最後に魔法でミニトレントモドキを討伐する。討伐した後には玉葱がドロップしている。吉備路ダンジョン群の五重ダンジョンと全く同じ原理だ。

 皆で二階層に進むと変化があった。カボチャを投げて来たのだ。僕のテンションがまたまた上がったよ。何でこんなことで興奮するんだろうね、自分でもよく分からないな。

 三階層でトウモロコシが回転しながら飛んできた時にはビックリしたよ。縦回転で投げて来るのっておかしいよね。四階層の梅は小さすぎて逆に取るのが難しかった。五階層でバナナがまたまた縦回転だったよ。六階層はなんとマンゴーを投げて来たので優しくキャッチだ。高級フルーツをありがとうございます。

 そして最後のボス部屋に皆で入る。僕に任せてねと事前に頼んでおくことも忘れなかった。ボスのトレントモドキが超高速で投げてきたのはなんとメロンだ。うひゃー!スイカに比べればキャッチしやすいので、すべて収納することが出来た。もう僕、大満足です。魔法でトレントモドキを討伐してこのダンジョンを完全攻略することが出来た。そして鉄の宝箱が現れた。

「お兄さん、ごめんなさい。私のせいで鉄の宝箱になってしまって、次回の私の順番の宝箱を開けてもらいますね」

 まだ遥は引きずっているようだ、気にしなくて良いのにね。

「ダンジョンに入る前にも言ったけど、遥は悪くないからね。苦手な物は誰でもあるんだよ。それに昨日の宝箱は鉄の方が銅よりも買取り価格が圧倒的に高かったよね。今回も凄いものが入っているかもしれないぞ」

 僕の順番なので宝箱を開けさせてもらう。中から出て来たのは指輪だった。最近よく見るような気がするのは気のせいではない筈だ、どんな効果があるんだろうね。そのうちすべての指に指輪を嵌めるようになるかもしれないな………指輪と指輪が当たって、なんだか指が痛そうだね。

 とりあえずダンジョンから出てお昼御飯を食べることにする。今日は牛丼だ、食べながらこの後のことを話し合う。

「この後はどうする。丸亀市のホテルに行くか?もう一度ダンジョンを探索するか?他の案でも良いから五人で決めてね」

 五人が決めたのは、出来るだけここを完全攻略するという案だった。とにかく走って出来るだけミニトレントモドキと戦わずにボス部屋を目指すということだ。桃の盾と真琴の弓は一旦僕が収納して走り易いようにした。山吹の盾には昨日のお札を貼ってあるらしい、凄い軽くなり取り扱いがしやすくなっているそうだ。山吹の盾で攻撃を防ぎつつ駆け抜ける作戦らしい。
 
 なんと五回も宝箱を開けることが出来た。どれだけ走ったのか分からなくなるほど走って大変疲れたけど、収穫は大きかった。僕的にはボス部屋だけは通り過ぎる訳にはいかないので、メロンが大量に手に入った事が一番の収穫だった。《桜花の誓い》にとっては勿論宝箱が一番の収穫だ。すべて鉄の宝箱で、すべて指輪だったよ。ここは指輪しか出てこないのか?誰の物なのか分からなくなるので、自分で管理することにしてダンジョンの外へ転移した。

 昨日は武具店に行っていないので、まず武具店で武器のメンテナンスと矢の補充をしてから買取り受付に向かった。

 いつも通り窓口から部屋へと案内されて、マジックアイテムが何処から出て来たのかを確認される。

「六個ともボス部屋の鉄の宝箱から出て来ました」

 六回完全攻略したことに驚いているのか、鉄の宝箱が六回連続で出て来たことに驚いているのか分からないが、とにかく支部長は驚いていた。

 ここに来る前に皆から鉄の宝箱が出たことに感謝されて、野菜と果物は僕にすべてくれることになった。気を使わせて申し訳ないが、ありがたくすべて貰っておいた。

 今回の現金収入は魔石だけなので、小学生のお小遣程しかなかったが皆それで満足していた。

 鑑定の結果によると、綾芽の指輪は俊敏の効果があり、他の四人の指輪は腕力強化の効果があるものだった。そして僕の指輪は魔力消費軽減の効果があるものであった。確実に宝箱を開ける人によって中身が変わることを確信した。これも僕のスキルの効果なのだろうか?

 すべてを終えてダンジョンを出た。丸亀市のホテルに向けてバスと電車を乗り継ぎ、無事にチェックインを済ませた。

 丸亀市は骨付き鳥の本場である。丸亀市で一番有名なお店で晩御飯を食べた。二日連続で同じメニューだったが、お店によって全然味付けが違うので皆が満足出来た。気に入ったので、お持ち帰りを十本頼んだ。当然調理済みのものを頼んで、こっそり腕輪に収納しておいた。
 
 食べながら明日のダンジョンをどうするか話し合った。話し合いの結果、朝早くここを出て倉敷ダンジョンを探索することになった。夏休み中の月木のダンジョン探索もこの旅行が終わればあと二回である。なんとか夏休みの間に倉敷ダンジョンを完全攻略したいので、明日の一日で攻略階層を進めておきたいということだ。

 明日の予定も決まったので、ホテルに帰って休むとしよう。このお店は僕が支払った。野菜と果物を大量に貰ったからね。マンゴーとメロンの買取り金額は滅茶苦茶高かったんだ。このことはネガティブ西湖には伝えないようにしよう。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko
ファンタジー
ある日私は、男の子4人、女の子4人の幼なじみ達が出てくる乙女ゲームを買った。 魔法の世界が舞台のファンタジーゲームで、プレーヤーは4人の女の子の中から1人好きなヒロインを選ぶ事ができる。 ・可愛くて女の子らしい、守ってあげたくなるようなヒロイン「マイヤ」 ・スポーツ、勉強と何でもできるオールマイティーなヒロイン「セレス」 ・クールでキレイな顔立ち、笑顔でまわりを虜にしてしまうヒロイン「ルナ」 ・顔立ちは悪くないけど、他の3人が飛び抜けている所為か平凡に見られがちなヒロイン「アリア」 4人目のヒロイン「アリア」を選択する事はないな……と思っていたら、いつの間にか乙女ゲームの世界に転生していた! しかも、よりにもよって一番モテないヒロインの「アリア」に!! モテないキャラらしく恋愛なんて諦めて、魔法を使い楽しく生きよう! と割り切っていたら……? 本編の話が長くなってきました。 1話から読むのが大変……という方は、「子どもの頃(入学前)」編 、「中等部」編をすっと飛ばして「第1部まとめ」、「登場人物紹介」、「第2部まとめ」、「第3部まとめ」からどうぞ! ※「登場人物紹介」はイメージ画像ありがございます。 ※自分の中のイメージを大切にしたい方は、通常の「登場人物紹介」の主要キャラ、サブキャラのみご覧ください。 ※長期連載作品になります。

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜

束原ミヤコ
恋愛
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。 そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。 だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。 マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。 全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。 それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。 マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。 自由だ。 魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。 マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。 これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。 クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!

転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。 そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。 しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。 世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。 そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。 そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。 「イシュド、学園に通ってくれねぇか」 「へ?」 そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。 ※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。

【完結】結婚してから三年…私は使用人扱いされました。

仰木 あん
恋愛
子爵令嬢のジュリエッタ。 彼女には兄弟がおらず、伯爵家の次男、アルフレッドと結婚して幸せに暮らしていた。 しかし、結婚から二年して、ジュリエッタの父、オリビエが亡くなると、アルフレッドは段々と本性を表して、浮気を繰り返すようになる…… そんなところから始まるお話。 フィクションです。

処理中です...