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第五十話 面談

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 今日は朝の鍛練からドキドキしていた。僕は人との付き合いがそれ程上手ではないと自覚している。面談が上手く出来るかだんだん不安になって来る。

「お兄ちゃん、今から緊張してどうするの。最初が肝心だよ。ナメられたらダメだからね」
「ナメられるとか、お前は何を考えているんだよ。仲間を探しているんだ、それも頼りになる人をね。そうだな僕の良いところも見てもらわないとな。緊張して変なことをしてもいけないもんな」

 いろいろと考えて、またまた緊張してくる。

 鍛練も終わり朝御飯をしっかりと食べて岡山ダンジョンに向け家を出た。

 今日の面談は午前十時からだが、岡山ダンジョンには九時十分に着いた。

「龍泉様、おはようございます。お早いお着きですね。今日はよろしくお願いします」
「常盤さん、おはようございます。なんだか家にいても落ち着かないんで早めに来ました。こちらこそよろしくお願いします」

 今日の面談は一日中常盤さんがアシストしてくれることになった。面談に申し込んでくれた人には探索するときの格好で来てもらうように連絡をしてもらっている。こちらもしっかりと着替えて待つとしよう。

 面談用に借りた部屋の中で落ち着きなく時間が来るのを待つ。十時になり一人目の面接者を常盤さんが案内してきた。

「どうぞこちらにお座りください」

 僕が声をかけて面談が始まった。今日は申し込んでくれた順番に面談をしていく。最初に申し込んでくれたのは、あの大学生のサークルパーティの橘真姫さんの双子の妹である。

「お名前とどうして申し込んでくれたのかを教えてください」
「はい、橘美姫たちばなみきです。国立福岡ダンジョン高校出身で、学校を卒業して四年目になります。今年の三月まで福岡で活動していましたが、四月に実家のある岡山に戻ってきました。戻ってきてから姉のパーティに参加させてもらったりしていましたが、もっと本格的にダンジョンに挑戦してみたいと思い応募しました」
「本格的にダンジョンに挑戦するというのはここのダンジョンへの挑戦を意味しているんですか?」
「勿論ここのダンジョンも完全攻略したいですが、もっと上のダンジョンにも挑戦してみたいです」
「失礼ですが、何故福岡から岡山に戻ってきたんですか?多分三月まではあちらでパーティを組んでいたんですよね」
「そうですね、福岡のBランクダンジョンに去年の春から挑戦していたんですが、三十階層のボス部屋が超えられなくて。何度か挑戦したんですが、その度に帰還石を使っていると資金がかかりますし、人間関係もおかしくなってしまって三月で解散になってしまいました」

 よく聞く解散の理由である。そこで諦めてBランクダンジョンの攻略できる階層までで生計を立てる探索者もいれば、もっと出来るとパーティメンバーを変えて挑戦する探索者もいる。特に若い探索者は後者を選ぶ。

 僕は一発でパーティから追放されたけどね。

「あのー、龍泉さんは何故ソロで攻略をされているかお聞きしても良いですか?」
「僕も一緒ですね。先月の初めに京都のAランクダンジョンに挑戦して十五階層のボス部屋で失敗したんですよ。僕の場合その一回でパーティから追放されてね、それで岡山に帰って来たんです。ここの十五階層のボス部屋を最初に挑戦したときに、ソロだときついなと思って遠距離攻撃の出来る人を仲間にしたくて求人票を出したんですよ」
「そうですか。Bランクダンジョンは超えられたんですね。凄いです」
「僕の場合はパーティメンバーが強かったからね。だから、Aランカーにしてもらったって感じなんですよ。今度は自分も力になって本当のAランカーになったって実感したいですね」

 なんだかどちらが面談をしているのか分からなくなってきた。立て直そう。

「ええっと、ここのダンジョンは何階層まで攻略しているんですか?」
「姉のパーティメンバーと一緒に十五階層まで攻略してます」
「僕と二人でここを攻略するとしたら、何匹かのゴブリンは討ちもらしてしまうかも知れません。その場合、自衛は出来ますか?」
「二人だけで攻略するんですか?」
「当面はそのつもりです。まあここの深層だと厳しくなるかも知れませんが、優秀なアタッカーはそうそう見つかるとは思えませんしね」
「正直、厳しいかも知れません。高校で後衛職の自衛のための短剣術は習ったんですが、実際には六人パーティでそんな場面には会うことが無かったので自信はないです」
「そうですか、分かりました」

 その後は実際にパーティを組んだとして、週に何回ダンジョンに入れるかなど具体的な話をしていった。聞くこともすべて聞いたので、練習場に場所を移し腕前を見せてもらう。

「では、まず真ん中の的に向かって矢を射て下さい」

 五つ並んでいる的の真ん中に向かって、三十メートル程離れた位置から射てもらう。

「はい、分かりました」

 言うや否や、あっという間に矢は的の真ん中に刺さっていた。

「今度は出来るだけ速く三本矢を射て下さい」
「どこの的に向けてですか?」
「真ん中でお願いします」

 今度も難無く三本続けて真ん中に命中している。連射速度も申し分ない。

「じゃあ最後に、左の的から順番に出来るだけ速く五本の矢を射て下さい」

 多少真ん中を外す矢はあったが的にはしっかりと当たっている。自分が思っていたよりもずっと技量の高い弓術士がいきなり見つかってしまった。今後の事を考えて僕が少し黙っていると声がかかった。

「あのー、ダメだったでしょうか?」
「いえいえ、思っていたよりもずっと優秀だったので今後の事を考えていました。橘さんを守る人を見つけないと探索出来ないですからね。また求人票を出さないといけないかなと」
「良ければ姉の真姫を私の守りに使って一度ダンジョンに入らせて下さい。自分で何とか出来るかも知れませんし」

 八月の最後の火曜日に、お試しでダンジョンの探索をすることを約束して一人目の面談が終わった。

 面談用の部屋に戻って来ると常盤さんが話しかけてきた。

「もう決まりですか?他の方はどうしましょうか?」
「勿論面談させてもらいます。ちょっと一人目が思っていたよりも優秀な方だったので興奮しました。後衛が二人いても良いですし、優秀な方がいれば是非パーティを組んでみたいと思います」

 期待して他の四人の方とも面談をおこなったが、橘さんに並ぶような技量を持つ人はいなかった。後日面談の結果をお知らせしますと言ってお帰りいただいた。

「龍泉様、結果は不合格ですか?」
「そうですね、最初の橘さんと比べると明らかに差がありますからね。申し訳ありませんが不合格と連絡をしていただけますか」
「申し訳ないなどおっしゃらなくても良いですよ。素人の私が見ても違っていましたし、一人でも合格者がいてホッとしました。四人には不合格の連絡を、橘様には期日の確認の連絡をしておきます」

 その後常盤さんにお礼を言い、着替えをして家に帰った。

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