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第18話

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ガチャ・・

パーンパパパーーン

「せーの!」

「「「アーノルド様、お誕生日おめでとう御座いますっ!!」」」

打ち合わせ通り、クラッカーを鳴らして、おめでとうを言った。

「へへ、びっくりし‥‥た?って、あれ?」

私は、全力のドヤ顔でアーノルドを見ると…扉の一番前に立ってクラッカーを浴びていたのは、アーノルドでは無く、何故か王太子のフィンセントだった。

・・サプライズ失敗。

「あー‥‥悪い、急遽、フィンセント様が来たいって言われて、折角ならと、きてもらったんだ‥‥リリアーナにびっくりしてもらおうと思って連れてきたことを口止めしたんだが。まさか‥‥。」

びっくりして固まっているフィンセントの右後ろから、アーノルドが気不味そうに、頬をかきながら何故フィンセントがいるのかを説明してくれた。

アーノルドのサプライズは大成功だ。
だって、私、ビックリしすぎて息止まったもの。

「‥‥いえ、こちらの確認不足です。びっくりさせてしまって、申し訳ございません、フィンセント様。‥‥何も、危ない物は使っていませんのでご安心下さい。」

私は、なるべく冷静に見えるように振る舞う。

…今は"声"は聞こえないから、なるべく揚げ足を取られないように注意しないと。
そう思いながら、フィンセントを見るが、私の事を見たまま固まっている、フィンセントが動かない。いや、正確には、私の動きに合わせて目は動いているが、表情が驚いたまま固まっている。

「フィンセント様?」

フィンセントの近くに行って、目の前で手をヒラヒラさせて見ると、ハッとしたように目をパチパチし出した。

「‥‥い、いや。なんでもない。」

「なんでもないって事ないと思いますけど‥‥?」

「き、気にするなっ!」

フィンセントは、口元を手で押さえてプイッとそっぽ向いてしまった。
そのまま、フィンセントはアーノルドに案内されながら席に着く。

「こちらはー・・」

料理長が料理の説明をしてくれて、ケーキが私の手作りと聞くと、アーノルドも、フィンセントも、とても驚いていた。

「‥‥ありがとう、嬉しいよ。」

アーノルドは、ぎこちなくお礼を言って来た。

(‥‥また、何か入れたって思われるかな。それに、フィンセント様は食べないわよね?ここの料理長の作ったものでさえ疑うくらいなんだし‥‥)

本心が気になって、思わず能力を使う。
ジッと、二人の様子を見た。

『まさか‥‥あのリリアーナが手作りケーキ?あんなに料理は下人のする仕事って言ってたのに‥‥。あぁ、でもすごく可愛らしく装飾してくれて‥‥。これは、夕飯食べすぎないようにしないとな。ちゃんとデザートの腹をのこしておこう。ふふ。あの小さかったリリアーナが。こんなのまで作れるようになったなんてな。』

なんか、親目線で感激に浸っているアーノルドに、微笑ましい気持ちになった。

(よかった、本心で喜んでくれてるみたいで‥‥。)

ホッと私は静かに息を吐いた。
アーノルドから視線を外して、フィンセントの様子を伺う。

(さっきも変だったしなぁ。また変な事考えてないといいけど‥‥。)

『‥‥いいな。手作りケーキ。こんな事するほど、仲が良かったか?この二人は。あまり、仲の良い兄弟とは思わなかったが。いや、でも、リリアーナが変わったんだからアーノルドも良い印象になっていてもおかしくない。それに、さっきの笑顔‥‥。可愛すぎんだろ。真正面であんな笑顔受けたら、例えアーノルドと兄妹だとしても惚れかねないじゃないか。‥‥いや、いまのリリアーナはアーノルドが兄妹だってちゃんと思ってんのか?思ってないからあんな‥‥それに、手作りケーキに似顔絵クッキーまで‥‥?もしかして、アーノルドに惚れ‥‥?』

(なんでそうなる?‥‥この人の思考回路は聞いたとしてもよく分からないわ。)

でも、悪い嫌な事を考えているわけじゃなさそうだったので良かった。
そう思うと、午後はずっと厨房で動いていたのでお腹が減った。

ぐーーぅ。

未だ、ケーキを見て誰も話してなかった静かな中に私のお腹の音が響いてしまった。

「あ、あの、た、食べましょうか!!あの、後で美味しいお酒もあるので‥‥!楽しみにしててくださいね!お兄様っ!それが、私からの誕生日プレゼントですから!で、では、いただきまーす!」

羞恥で真っ赤になって、言い訳のように色々と言葉を並べて早口で頂きます、と挨拶した。

「「頂きます‥‥?」」

私は、習慣でつい言ってしまったが、聞いなれない挨拶に二人は不思議そうに顔を合わせている。

「ぁえ?あ、あぁ。頂きますっていうのはですね、なんていうか、癖っていうか‥‥!気にしないでください!ほら、冷めないうちに食べましょう!とっても美味しそうですよ!」

そう言って、二人に促せば、二人はカラトリーを手に取ってご飯を食べ出した。





無事にデザートまで食べ終わって、晩酌の用意がされる。
今日は天気もいいし、とても過ごしやすいからとライトアップされている庭へ3人で移動した。

「それで、なんで今日は、フィンセント様が急に来ることになったんですか?」

「なんだ、婚約者の家に来てはいけなかったか?」

「というか、もっと早くに連絡するべきだと思いますけど‥‥。」

「まぁ、急になってしまったのは申し訳ない。でも、意外だったな。リリアーナにあんな特技があったなんて。」

幾らかお酒が入って、最初よりかは緊張もせずに普通に話せるようになって来た。

「本当ですね、リリアーナがまさかお菓子を作れるなんて思いもしませんでした。」

アーノルドは、顔が赤いが、そこまで酔っ払ってはないみたいだ。
リリアーナ自身も、お酒には強いみたいだからそれは遺伝だろうか。
私は、前回の失敗もあるのでまだ赤ワイン2杯ほどをちびちびと飲んでいる。

「料理人達にお手伝いしてもらいながら作ったので、私だけではあそこまでのクオリティーは難しかったですよ。でも、喜んでくれて、本当良かったです。」

「あぁ、リリアーナもちゃんと成長したんだなって少しうるっとしたよ。こんなに可愛いクッキーまで焼いてくれて‥‥本当、食べるのが勿体無い。」

アーノルドは、似顔絵クッキーを見て、しみじみとしている。

「ふふ。またいつでも焼きますから、食べれるうちに食べてしまってください。」

「今度は、俺の分も焼いてくれないか?」

「…いつか、機会があれば。」

「‥‥アーノルド、おれの婚約者が冷たいんだが‥‥。」

「ははは。」

そんな砕けたやりとりをしていると、ヘンリーが日本酒と、私が作ったおつまみのを持って来てくれた。

「これはね、お米から作ったお酒で、すっごく度が強いから少しづつ飲むようにしてくださいね。あと、こっちは私が作ったお酒に合うであろうおつまみです。ちょっと、手で食べたりするのもあるので抵抗があるようだったら、おっしゃってください。皮を剥いてきますから。」

「こんなプライベートな空間だ。気にすることもないだろう。‥‥美味しい!これって、枝豆だよな?すごく、後味が引いてくせになる味だな‥‥。」

フィンセントが、なんの抵抗もなく焼き枝豆を食べて、感想を言ってくれた。

「でしょう?房ごと焼いて、枝豆の風味もですが、バターとニンニク醤油の味がなんとも相まってあたし、これ大好きなんです!いっくらでも食べれますよね!」

「うん。確かに。本当に美味しいよ。‥‥あ、コメ酒も、とても美味しいね。これは、飲みすぎないように気をつけなきゃだな。」

「明日がお休みだからこそですよね。ふふ。」

作ったものが、美味しい美味しいと減っていく様子を見るのはとても嬉しくなる。
たとえ、いい感情だけじゃないとしても、聞こえなければ言われてないのと同じだから。





和気藹々と意外にも3人は楽しく呑んで、流石にアーノルドが酔っ払って眠そうにしている。

「お兄様、もうお休みになってはいかがですか?お顔、真っ赤ですよ?」

「‥‥んー‥‥。」

「おい、こんな所で寝るな、アーノルド。」

フィンセントは、お酒はザルなようで、結構ワインもコメ酒も結構呑んでいるが顔色も態度も変わらない。

「ヘンリー、お兄様を部屋へ連れ行ってあげて。こうなっては湯浴みも危ないから、させないようにね。着替えだけ、手伝ってあげてちょうだい。」

「畏まりました。‥‥フィンセント様は、「俺は、もう少しリリアーナと飲んでいるよ。その間に、アーノルドを置いてこい。」

ヘンリーの言葉に被せて、フィンセントが言った。

「だそうよ。ゆっくりで大丈夫だから、怪我させたりしたりしない様に気をつけてね。」

「…はい。畏まりました。」

そう言って、ヘンリーはグデングデンになったアーノルドをお姫様抱っこして、涼しい顔してその場を去っていった。

「‥‥で、フィンセント様はいつおかえりになられるんですか?」

もう、この時点で10時近い。

「誰もいなくなった途端に辛辣だな、リリアーナ。」

「誰もいない訳ではないですよ?ユーリだってあそこにいますし。」

まぁ、距離は離れているけれど。

「まぁ、いいじゃないか。ゆっくり君と、話したかったんだ。」

「まぁ、そうですね。せっかくの機会ですし、腹割って話してみましょうか。」

「あぁ。そうだな。‥‥で、君は誰なんだ?名前は?」

いままで見たこともない様な楽しそうに笑いながら、ここぞとばかりにフィンセントが聞いてくる。

「いきなりですか‥‥。」

「だって、知りたいんだ、君の事を。教えてくれないか?」

真剣に、前に手を組んで横目でニヤリと聞いてきた。
その笑いが無駄にカッコよくて、私はギュッと目を瞑った。

(これは、キャラが尊すぎて直視できない時になる生理反応だ。やばい、いまの、スチルとして欲しかったー‥‥)

「何してる?」

「いえ、お気になさらず。‥‥私の事を知ってどうするんですか?どうせ聞いても、面白みなんかないですし、元に戻れない以上あまり知ったところで‥‥」

「それでも、君の人となりがわかるだろう?リリアーナの時にはなったことがなかった感情が、君には何故か湧き出るんだ。だから、この感情が何なのか知りたい。」

私の目を見て偽りなく言ってくれていると確信してしまうくらい真剣に言ってくれている。そんなフィンセントを見て、ドキリと、心臓が早くなる。

でも、嫌な感情の高鳴りではなくて、フィンセントにときめいたと認めたくないが、認めざるえないくらい一気に顔に熱くなった。

「‥‥え、と。何が、知りたいんですか‥‥?」

私は、しどろもどろになりながらも、フィンセントに聞いた。





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