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第2章この度、学生になりました。

21*初めてのお泊まり会なのです。

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「私、お友達の家にお泊まりなんて初めてっ!!」

リリはさっきまで泣いていたのが嘘のようにワクワクした顔で私に抱きついて来ました。

「わっと!急に抱きつくとかあぶないよ~」

「へへ、ゴメンゴメン。ちょっと浮かれすぎたっ!チャコ、これからお風呂でしょう?一緒に入ろ?」

「うん!いいよ。行こう。」

いつもは一人で入るお風呂ですが、今日はドレスを着ているので脱ぐのを手伝ってもらいます。その後に、リリと二人でお風呂でこれでもかとはしゃいで寝る準備をしました。

「結構長くいちゃったね~逆上せた‥‥」

「確かに‥‥あっつい‥‥!」

「お嬢、此方を。」

ジンが私の部屋に冷たい飲み物を持ってきてくれました。

「ありがとう、ジン。」

「ふわ~これ美味しいね。」

「うん。お風呂上がりのレモン水って凄く染み渡っておいしいよね。」

「私も家でやろ~!」

「ジン。今日はもう上がっていいわ。これからは女子会だからね。何があっても入ってきちゃダメよ?」

「何があってもですか‥‥?」

「えぇ。絶対に。例え‥‥」

「例え‥‥」

「叫び声が聞こえてもよ。」

「‥‥‥‥畏まりました。善処いたします。」

「ふふ。本当に大変なことがあったら名前を呼ぶわ。じゃあ、お休みなさい。」

「畏まりました。では、失礼します。」

「ジン、おやすみ~~」

「リリア様も、お休みなさいませ。」

ジンが気を利かせてちょっとしたお菓子とジュースを何種類か置いて行ってくれました。
うん、これは、夜更かししろってことですね!!

「‥‥じゃあ、始めますか?」

リリを見ると、リリも準備万端なようでニヤリと笑ってくれました。



◇◆◇◆◇◆


「でね、この樒くんがさースパダリすぎて尊いのよ。いやー、素晴らしいのよ。」

「んー、スパダリすぎると逆に騙されてるのか?って不安にならない?」

「ほんとそれ!最初はなるよ?なるんだけどね、そこはちゃんと信用してもらえるように努力していくわけっ!!んで、受けのアカくんが警戒心むき出しだったのが少しづつ心開いていく様がね‥‥あぁ~~~素晴らしい!!」

「チャコって、結構難しい目の恋愛好きだよね。」

「そうかな?でも、結構溺愛ものが多いよ?ほら、この騎士物語も、こっちの下町のも。」

「それは大前提でしょう!ハピエンオンリーしか認めません!!」

「本当、それ!ご都合主義でもなんでもハピエンがいいよね!死エンドとか辛すぎて見てらんない!!だから、騎士物語でも学生中のが一番いいよね!!討伐物は推しが死んじゃった時とか泣き腫らすもん!!私、昔すごい好きな本があってさ、それが討伐系で推しキャラがなんの前触れもなく死んじゃって三日くらいご飯食べれなかった。その後も思い出すたびに…あ、やばい、思い出しちゃった。」

あー。むーくん。辛い。

「右に同じ!!絶対、推しが亡くなるとか考えられない‥‥!まだその経験はないけど、怖くて見れないっていうのが本音だよー。気になってる本は何個もあるんだけどね…」

「考えれないからこその学園物だよね!ライバル心から友情に、友情から愛情に変わっていくのが尊すぎて‥‥そういうのにめちゃくちゃ弱いよねぇ~~」

「激しく同意!!」

「騎士って良いよねぇ。雄みがあって、その中に可愛い子がいたらそりゃ食べちゃうよね~~」

暫く、どんなシチュが良いとか、どんな子を受けにしたいなど議論しつつベッドに移動します。勿論、寝るつもりはありませんが、いつでも寝落ちれるように‥‥ね?

「あ、この前ね、学園でこんな本を見つけたんだけど‥‥」

「ん?どれ~?あ、これ知ってる!!まだ読んではないんだけど‥‥騎士になるための学園の話よね。結構、男の子に人気のやつだよね?」

私がリリに渡した本は、今、結構学園でも流行っている本です。
この、学園を卒業した後に行く専門学校のような学園がこの世界にもあるようで、その騎士学校を舞台にした青春物語です。

「そう!これに出てくる、リュークxサシャがやばいよ!!熱いよ!」

「そうなの?詳しくっ!」

「あのね、リュークはそつなくなんでもこなして、いつも成績優秀で口は悪いけど実は優しい子なの。サシャは、本当に人一倍努力家で、人に優しく自分に厳しくっていう心の持ち主なんだけど、要領が悪くていつも失敗してるからみんなの笑い者なの。
そんなサシャは、いつも一番のリュークを勝手にライバル視してたんだけど、サシャが一人で練習とか鍛錬とかしてるのを影で見て知ってるリュークは、サシャを誰より認めてたんだよね。で、ある日、学園の遠征試験に行った時にリュークがサシャを煽ってバディになるんだけど‥‥もうね、もうね、ヤバイ。語彙力なくなるくらい、尊い。読んで!絶対読んで!!」

「ちょ、気になる!!そこで辞めないでよーーー気になるじゃないっ!!」

「え?ネタバレだよ?言っていいの?」

「えーーー‥‥あぁ‥‥うん。気になる!!でも、ちゃんと読むから!!」

「じゃあ、遠慮なく‥‥

まぁ、遠征に行ってバディを組むんだけど、この遠征は、あくまで試験。
今まで同じ釜の飯を食べたクラスメイト達に狙われながら『宝』を守り、奪いつつ二人で敵を蹴散らしながら5日以内にキャンプ地に戻らないといけないんだけど‥‥三日経った時にリュークを庇ってサシャが足に怪我をしちゃうんだよね。それによって、二人で諦めるか、リュークだけでもゴールするか、それとも二人で無理して頑張るか迫られるわけ。今にも医者に見せないといけないサシャを置いてなんて行けないってリュークは言うんだけど、サシャは自分のせいでリュークが失格になるのなんか死んでも嫌だって言ってて‥‥結局、間をとって二人で頑張るんだけど…後少しってところで結構な崖があって…リュークは、サシャを背負いながら行くって言うんだけど、それだとサシャは背負われるだけで足手纏いだし、リュークの重荷になるのが嫌だしなにより時間的にも厳しい‥‥本当にどっちかを諦めないとっていうその葛藤とか、口悪くて印象最悪だったリュークの優しさに胸キュンしちゃってるサシャとか、サシャに元々惹かれてたのにこの遠征で距離が近づいた分、サシャの心に触れて手放せなくなってるリュークとか。あぁ、本当にエモい‥‥‥‥」

「‥‥やばい、絶対、やばい。読みたい」

「どうぞどうぞ!!ライバルキャラとか、色々いるけど二人の未来に幸あれって感じでいいスパイスになってたよ~~!!」

「ゆっくり読みますね。汚さないようにこっちに置いておくわ。」

「ふふ。うん。」

リリが、受け取った本をソファーの上に置いてベッドに戻ってきました。

「‥‥チャコ、聞きたいことあるんだけど。」

急に真面目なトーンで話しかけられて思わずリリの顔をキョトンと見てしまいました。

「ん?どうしたの?」

「私には、何も隠さないでね。」

「う、うん‥‥。」

「失恋したばっかりだからって、気を使うのは無しだよ?」

「わかった‥‥‥‥。」

「じゃあ。」

コホン。と一度咳払いをしてリリがベッドの上で正座します。
私もつられて正座しました。

「今日、ディナン殿下に見惚れてたでしょう。」

「えっ!!なっ!!!!?」

ズバッとリリに言い当てられて言葉にならない声が大きく響きます。

「私が隣に居るのも見えないくらい、殿下に見惚れてたでしょう。」

「え、ちょ、そんな‥‥!!」

この子、二回言った!恥ずかしいのに!二回言いましたよ!?ってか、なぜ知ってるんですか!?リリは、エスパーか何かを使えるってことですか!?

「‥‥ふふふ。チャコ、すごく分かりやすかったわ。全然私の事見えてなくてポケーーっと殿下ばっかり見るんですもの。ダンスの時も、チラチラと見ちゃって。本当に分かりやすすぎたわ。」

「え‥‥。嘘・・・・。」

え、そしたらディナンにもバレてしまっているのでは?どうしよう、恥ずかしいです!

「まぁ、あの鈍感ネガティブ王子はなーーんにも気がついてないでしょうけど?」

「‥‥そ、か。」

ほっ。この気持ちは恋なのか、吊り橋効果なのか、軍服効果なのかわからないのでまだ誰にも言いたくなかったんですが‥‥。

「で?殿下に恋したの?」

失恋したばっかりのリリにこんな話しして良いんでしょうか‥‥?恋話は女子会の醍醐味とはいえ少し、言いずらいです‥‥。でも、

「恋、なのかは、わからない‥‥でも、」

素直にいうのが正解だとわかります。
誤魔化してもリリは絶対確信持ってますし。

「でも?」

「今日のディナンは半端なくかっこよかった‥‥。」

キャーーっと叫びたくなるほどですが枕を抱えて我慢しました。

「周りが見えないほどにね?ふふ」

「あーーー‥‥でもね?でもね?これは、恋なのか自信なくて‥‥。」

「なんで?」

意味がわからないというように首を傾げられてしまいました。

「噴水に行った時におじさんから助けてもらったからそれでかなって‥‥あと、」

「あと?」

「‥‥‥‥‥‥軍服萌え、なのかなって。」

「ぶっくくくく」

リリが布団に顔を埋めて笑い出しました。いや、でもあり得るのよ?私だったら。
だって、制服とかスーツとか、弱いんですもん!!その中でも、軍服が一番やばいなってなっただけかも!!それに、ディナンだけしか軍服着てなかったから目立ってたし!そうかもしれないじゃないですか!!

「ほんと、気持ちが確定したわけじゃないから‥‥誰にも言わないで?」

「わかってるよ。ちゃこ。ただ‥‥」

「ただ?」

「‥‥んーん。それはあっちが頑張らないといけないことだからね。ほっとこ。」

「???」

「ふふ。軍服萌えねぇ~。じゃあ、軍服萌えかどうかは、次の学校の時に分かるね。」

「……たしかに。」

「どうなんだろうねぇ~ふふ」

「絶対、楽しんでますよね?リリさん。」

「当たり前でしょ!親友の初恋じゃないのっ!」

「‥‥そうかな。」

「失恋は辛いけど、恋は楽しかったし、またいつかしたいなって思ってるんだよ?‥‥まだまだ辛いけど。」

「リリ‥‥」

寂しそうに笑うリリですが最高に綺麗です。

「それに、思いがけずお泊まり会出来ちゃうし?夜遊びしたりしても怒られないし!なんだか棚ボタってやつね!‥‥使い方、合ってる?」

この前教えた『棚ボタ』っていう言葉をもう、使いこなしてます。

「ふふ。合ってる、合ってる。」

「ふふふ。友達がいてくれて良かった。」

「私が失恋したらリリも慰めてね?」

「‥‥するかしら?」

「いや、わからないでしょー」

「まぁ、万が一‥‥いや、億が一、失恋したら全力で慰めるわ!」

「くふふ。ありがとう。」

その後も、二人でいろんな話をしていたらあっという間に夜が更けって行きました。
初めてのお泊まり会はとても楽しかったです。


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