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36*恩返し
しおりを挟む(ん‥‥気持ちいい‥。ふわふわして‥‥ここは‥‥?)
雛はいつの間にか気を失っていたのかなにか暖かい肌さわりの良いもので包まれているような感覚で目を覚ます
「あ、あたし!!水っ!!きゃあ!!!」
ふわふわが勝手に動いた
「え、なに‥‥?」
『ふわふわ』が動いてこちらをジーっと見て来る
「‥‥犬?」
シルバーの毛並みで瞳の色が右が翡翠色、左が空色をしている
「わ‥‥君、綺麗ね。」
『ありがとう、雛』
「‥‥え?」
聞き覚えのない声、何処から‥‥
「えぇ!?犬がしゃべ・・」
『犬じゃない、狼だ』
「おおかみ‥‥って、やっぱり喋ってる!!」
『なんだ雛、前にも話したじゃないか』
「え?前にあったことあった?」
『随分前だから‥‥忘れてしまったか?』
「ごめんなさい‥‥」
『いや、仕方ない。君は小さかったからな。とても、立派になったな。』
そう言うと狼は優しく瞳を細めた
この目‥‥なんか知っている気がする。
『雛?』
「あ、ごめんなさい。なんだか‥‥懐かしく感じて‥‥」
雛が狼の頭に手を差し出すとその手に頭を擦り付けて気持ちよさそうに目を閉じた
その光景を見て雛の頭に何かが流れ込んで来る
*****
まだお母さんと暮らしてた時‥‥
帰りたくなくて近くの公園に良く暗くなるまでいることが多かった
その日も一人で暗い公園のブランコでただひたすらユラユラ時間を潰してた
カサ・・
「 ? 」
ブランコから降りて音がした草むらにゆっくり近く
草むらの陰に何かが横たわっている
「ワンちゃん?」
シルバーの毛並みが所々赤黒くなっている
「怪我‥‥してる。。可哀想に。」
横たわっていた犬を抱きかかえてベンチに横たえる
「大丈夫?痛いね、あたしがなんとかしてあげる!」
ランドセルを持って、体育着を犬に被せて抱っこして家に帰る
恐る恐る玄関を開けるとその日はもうお母さん男と仕事へ行ったのか家には誰も居なかった
ホッとしてとりあえずお風呂へ行って犬の汚れを落としてよく拭いて乾いたら怪我の処置をする
「ごめんね、これで合ってるか分からないけど‥‥しないよりかはマシだと思うから‥‥あ、お腹減ったよね?これ食べれるかな?」
そう言って雛はミルクと味噌汁にご飯を浸したものを差し出すと勢いよく犬はそれに食らいついた
「ふふ。よかった、食べられて」
そう言って雛も同じものを食べる
「二人で食べると美味しいね。君がずっといればいいのに‥‥」
寂しそうに雛が呟くのを不思議そうに犬が見つめる
「君の名前、なんて言うの?私がつけてもいい?」
ペロペロと雛の顔を舐めて返事をしてくれた
「ふふふ。くすぐったいよー!!じゃあ、そうだな‥‥君は、今日からギンちゃんね!」
きゃん!ギンが一鳴きすると雛はギュウっとギンに抱きつく
「ギンちゃん、大好き。ふふ」
ガチャ
「っ!!」
一気に血の気が下がっていく雛をギンは不思議そうに見つめる
「おい、なんだこのきったねぇ犬は。何してやがる」
雛を見下ろしながら男は怒鳴りながら聞く
「怪我してたから連れてきたの。」
バシっドカっ
雛が静かに答えると殴られた
「ウッグ‥‥グェ」
「なぁにがグエだ。きったねぇな。吐いてんじゃねぇよ!!!このクソガキ!!」
バキッ
「う‥‥ぐっ。‥‥っ」
雛は男の暴力に歯を食いしばって耐えているその背後では雛の母が目を背けて立って居た
ワンワンワン!!
グゥーー
犬歯を剥き出しにして男に吠える
「あぁ?こいつ?」
首根っこを鷲掴みにされて思いっきり投げられる
「ギンちゃん!!」
壁にぶつかって落ちた所に雛が急いで駆け寄る
「やめて!!ギンちゃんは怪我してるんだから!!私だけで十分でしょ!?」
「あぁ?こいつが吠えてきたんだろうが!!」
雛の頭を鷲掴みにして頭を持ち上げられる
「つーか、うちは犬なんか飼えるわけねぇだろ。早く捨ててこい!!」
そう言って玄関から雛とギンは投げ飛ばされた
「うっうっ。ごめんね、ギンちゃん、痛い思いさせてごめんね‥‥」
クーン
ギンは雛の腕に頭を擦り付けて尻尾をフリフリしている
「大っ嫌い。あんな所帰りたくない‥‥早く大人になりたい‥‥あんなところ出て行きたい‥‥なんで、子供なんだろう‥‥。」
そう言って雛はまた泣いた
一通り泣いて少しスッキリしたのか雛が顔を上げるとギンも顔を上げる
「ギンちゃん、明日またご飯もってくるから、ココで待っててくれる?」
ワン!
「ありがとう、寒いから、これ着て!」
そう言って雛は上着を脱いでギンの周りに置いて立ち上がる
「本当に、ごめんね。また明日来るね!」
そう言って雛はあの家へ帰って行った。
次の日、約束通りご飯を持って約束の場所に来たがギンはどこにも居なかった
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