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34*雛の答え

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「とまぁ、お嬢が寝てた時はこんな感じでしたね。」

「‥‥」

「お嬢?」

「いや‥‥なんか‥‥悠二が泣いてるのとか初めて見たなって思い出して‥‥」

「お嬢!それは!仕方ないでしょう!?本当にお嬢死んじゃうと思ったんだから!嫌だったんだから!!」

「そっか。でも、本当に悠二には大切にしてもらってるなって今思った。へへ。ありがと」

「ん”ん”!!ほんとに、お嬢は‥‥」

雛が悠二のことをまっすぐ見据えて決心したように話し出す



「悠二、昨日さ、悠二は私に『側にいて』って言ったよね。私も昨日の夜よく考えたんだけどさ‥‥」

「はい。」

「私は、『もし帰れないなら』が付くなら私は悠二とはこのまま『妹』的なポジションでいようと思う。」

「はい。」

「悠二の気持ちはすごく嬉しい‥‥し、、お爺ちゃんとの約束のこともわかった。でも、こっちでもっと悠二のことを好きになって、帰れるから今まで通りに戻りましょうなんて私には出来ない。」

「はい。」

「だったら、最初から始めちゃいけない。私は、このまま片想いで終わらせたい。」

「っ‥‥はい。」

「だから、私は‥‥」

「お嬢‥‥」

「う‥‥っぐす‥‥ごめん、こんなタイミングで‥‥」

「‥‥」

「だからっ、私は‥‥」






「悠二を好きでいるのをやめる」









雛が絞り出すように繋いだ言葉を悠二は受け止めるしかなかった。


(そうだよな。俺の覚悟が足りないくせに何が側にいてほしいだよ。親父との約束を破る覚悟ができてから言えって話だよな。あーかっこ悪りぃ。何してんだ俺。これじゃあ、いままでお嬢に言い寄ってきた腰抜けと同じ‥‥いや、それ以下じゃねぇか。あんな保険みたいな言い方して‥‥愛想尽かされて当たり前だ。)

悠二は膝の上の拳をきつく握りしめて自問自答する

「お嬢、混乱させてしまって本当に申し訳ありませんでした。」

「い、いや‥‥私がしつこかったから‥‥。悠二は、何も悪く無い。お爺ちゃんとの約束を守ろうとしてくれただけ。でも、一瞬でも両想いみたいに思えて嬉しかった。これからも、今まで通り、宜しくな」

泣いて目が、鼻の上が赤いそんな顔で精一杯笑顔を作って手を差し出す


この手をとったらもう、後戻りできない。
本当に、終わってしまう気がして手が取れなかった。




コンコン




「雛様、悠二様、そろそろ例の場所に着きます。降りる準備をしておいて下さ‥‥雛様、泣いておられるのですか?」

ノアが窓越しに雛のことを見て一瞬、目を丸くする

「あ、いや、なんでもないですから。大丈夫です。」

気まずそうに雛は涙を拭いて、悠二も気まずいのかノアの方を見ようとしない

「雛様、こっちの馬に乗ってみますか?気分転換になって気持ちいいですよ」

優しく目を細めて雛に提案すると雛は困ったように笑って悠二をちらっと見る

「‥‥じゃぁ、お言葉に甘えてそっちに行ってもいいですか?」

「もちろん!」

まさか承諾してくれるとは思ってなかったノアは少しびっくりしたが満面の笑みを見せ雛に手を伸ばした

馬車の窓から身を乗り出してノアに抱きつく形でノアの馬に飛び乗る
そのままノアの前に跨って座り体制を整える


その様子を悠二はきつく拳を握ったまま何も言わずに見ていた







「わぁ‥‥早い。すごい気持ちいい‥‥」

雛は辺りを見渡したり目を閉じて風を感じたりして楽しんでいるようでノアはホッとする

「ノアさん、ありがとうございます。気を遣わせてしまってすみませんでした。」

「何があったかは分かりませんが‥‥なにかあったという事は分かりましたので。気分転換になって良かったです。」

「ノアさんはとても優しくて素敵な方ですね。」

「‥‥誰にでもというわけでは。」

「ふふ。ありがとうございます。」


馬車の中から悠二が見てる


分かっていても気づいてないふりをした



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